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はら・は・ら・・・

満開の桜の下なのに寂しいのはなぜでしょうか
あたたかな陽射しの午後なのに肌寒いのはなぜでしょうか
にぎやかな声に囲まれているはずなのに楽しくないのはなぜでしょうか
ひとりが・・・こんなに切ないと感じるのはなぜでしょうか
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ほの白い染井吉野よりもあえかな赤みのさす桜に
うしろめたさを感じるのはなぜでしょうか
華やかな美しさを疎ましく感じてしまうのはなぜでしょうか
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桜は桜なのに・・・      
わたくしはわたくしなのに・・・
わたくしであることを止める事などできないのに
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桜は桜のまま見つめるだけ
桜は桜のまま愛するだけ 
桜は桜のまま樹下に佇む人を抱きしめるだけ
桜の悲しさは置き去りにして
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はら・は・ら・・・と舞う花びらに 
はら・は・ら・・・とほほ伝うなみだ
独りよりも想う人のいる春のほうが
切ないと知った午後
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この記事の桜の写真はわたくしが撮ったものです
素人写真なのでお恥ずかしいですが・・・・
お花見気分を楽しんでいただければ幸いです

降るがごとくの花の香に

午後からは雨と予報された休日
待ち合わせは酔うほどの薫りがこもった藤の花の下でした。
『遅くはならないと思うから。一つ目の太鼓橋を渡ったところの
                  弁天堂の前でまっていて。』
藤の花でつくられた祭壇のような弁天堂。
普段なら誰も足を止めないこの場所も
今日は俄カメラマンで溢れ返っていました。
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「待たせたかな」                      
山門側を眼で探していたわたくしは
背後からの声にびくっとして振り返ってしまいました。
「なんて顔してるの」                    
「だって こんな方から来るとは思ってなかったんだもの」   
「ちょっと早かったから先にお参りしてた。          
      思ったより時間がかかって、気が気じゃなかった。」
「一緒にお参りできない願い事でもあったのかしら?」     
「いや、想い合う男女が一緒に参ると神様がヤキモチを妬いて別れ
         させると言うからね。それは嫌だなと。はははは」
「わたくしも後でお参りしたいわ。お待たせしちゃうけどいい?」
「神様に見つからないように、こっそりと見守っていて上げるよ」
「こっそりね」                       
わたくしはこっそりと隣に立つ彼の指に小指を絡めました。
そこここでシャッターを押される沢山のカメラに映らないように。
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「この時期は忙しいんでしょう。」                 
「今年は連休もとぎれとぎれだから、いつもほどじゃないよ。」    
小指だけ絡めた指はいまは五指とも・・・
「祥子は今年は大丈夫なの?」                   
去年も一昨年も。わたくしには5月の連休はありませんでした。
去年の今頃は、まだ彼はわたしのいいお友達のひとりでしかなかったのに
うん・・・と眼を見つめて小さくうなづいて・・・
「この薫り、好きなの。お気に入りの日本酒の口に含んだときと一緒。」
問いかけの答えではない言の葉を口にしたのです。
「ははは、藤の精が聞いたら喜ぶな。」               
「どうして喜ぶの?」                       
「藤の花は酒をやると一層色が綺麗になるそうだ。切り花にしたときは 
           日本酒に挿しておくと花の持ちがいいそうだ。」
「ほんとう?」                          
「店に花を生けてくれる先生がそんな話をしていたことがあるんだ。  
聞いたときは冗談だろうと思ったが、
             こうしてここに居るとなるほどと思うよ。」
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「そうね。本当に酔ってしまいそう。」               
「耳たぶが赤く染まっているよ。」                 
花房を見上げたわたくしの耳元に口づけるように彼がそっと・・・
だ・め・・・・   
前後に沢山の人、あちこちに沢山のカメラ。
わたくしは声に出さず唇だけでこれ以上酔わせないで と
                  伝えるしかありませんでした。
「お行儀が悪いと祥子に嫌われるな。いいコにしていよう。」    
「もう・・・」                         
藤棚に沿って巡る回遊路を人に押されるようにそぞろ歩くふたりに、
お行儀の悪いことなど出来る訳もありません。
それなのに・・・してほしい・・・と思う はしたないわたくしも居て・・

「きれいだよ。ほら、まるで祥子の・・・」            
真珠みたいだ そう動く彼の唇に、真っ赤にほほを染めたわたくしに
    気づいた方がどなたも居ない事を祈るしかありませんでした。
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「あっ・・・」 大粒の雨が落ち始めました。

観光客もそれぞれに傘を広げてカメラをしまいはじめています。
急ぎ足で帰る人の流れに逆らって社務所へと抜け出した二人は
いつのまにかふたりだけ取り残されたようでした。
「予報通りだったね。傘は持ってる?」             
「ええ 折りたたみだけど。」                 
「良かった。まだ今頃の雨だと風邪ひくからね。」        
コートごしにわたくしを抱く腕の暖かさに人目も忘れて・・・
「祥子・・・」                        
ん・・・んぁ・・
重ねられた唇は腕よりも熱く・・・
「だ・め・・・」                       
薄く開いた眼に映った藤の枝に
絡み合う二人の肢体を見せつけられたような気がして
かすかにあらがっていた腕の力を・・・そっと抜いたのです。
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フォト・ストーリー・シリーズ第二弾(どこまで続くかは・・・(笑))
本当に雨が降り出す前のお写真なので空の色が優れないですが
かえって香りが地表にこもって、花の色が濃く見えた様な気がします。
もう白藤は終わりかけていたのが残念でしたが
こんなに見事の藤は久しぶりでした。

あっ、写真の未熟さは・・・ご容赦くださいませね。

重なる指に-1

「お久しぶりですね。お元気でしたか」
そういって差し出されるおしぼりの暖かさにほっとするくらいに涼やかな夜。
「ありがとう。そんなに久しぶり・・・そうだったわね」
「ですよ。今夜は何になさいますか?」
「おすすめのモルトありますか?シェリー樽熟成のものがいいわ。」
「そうですね・・・」

カウンターの壁面一杯に並ぶウイスキーのボトル。
一本・一本のボトルに慈しむように触れながら、ヴィンテージを確かめているバーテンダーのいつの間にか後で一つに結ぶほどに伸びた髪を見て、わたくしは本当にここに来るのが数ヶ月ぶりだったのだと実感しました。
「加納さんは長熟のものがお好きですからね。マッカランはいまいいものが無くて。」
「構わないのよ。たまには別のものもいただかなきゃ。もう、わたくしの好きなマッカランはほとんど手に入らないしね。」
「これなんかどうですか?」
「スプリングバンク?」
「ええ、ちょっと訳ありなボトルなんですが。加納さんになら飲んでもらってもいいって言われてますから。30年もののシェリーが本当に華やかなモルトなんです。」
「いいの? もしかして竹下さんのボトル?」
「よくお分かりで。随分加納さんがお越しにならないので、皆様寂しがってらっしゃいましたよ。」
「マスターもお上手ね。じゃ、竹下さんに甘えてそれいただこうかしら。」
「いつも通りで?」
「ええ お願いするわ。」

牡丹2

ターミナル駅から3つ目の駅の住宅街の中にある隠れ家のようなバー。
モルトウイスキーが売り物で、モルト好きが集まる・・ここはそんな店でした。
本店は、ターミナル駅にある彼が何年も前から懇意にしている店でした。
何度か彼に誘われて本店に伺った後で、よろしければ私は来月からこちらに移りますから・・・と目の前にいるマスターから名刺を差し出されたのが、この2号店に来る契機でした。

「いかがですか?」
「わたくしの知っているスプリングバンクとは随分違うわね。香りと舌の上に乗った時のまろやかさが・・・格別だわ。」
「そう言っていただくと竹下さんも喜びます。このボトルを持って来たとき、加納さんが来ないかなと随分お待ちになっていましたから。」
「そうだったの。申し訳ないことをしたわ。」
また一口。華やかなシェリーの香りの余韻に浸っていると・・・
「いらっしゃいませ。」
わたくしにそっと微笑んで、マスターは新しくお越しになったお客様へと小粋なお髭の顔を向けたのです。

今日はここで彼と待ち合わせでした。
とは言っても、時間はなんとも言えないよ、という注釈付きの約束でした。
わたくしが忙しい日々を送っていたように、彼も多忙な毎日を繰り返していたのです。
日々、手元に届くメールで互いの存在を確かめながら、決して触れる事のできない・・・そんなひと月にふたりで焦れて交した約束でした。

わたくしのことも、彼のことも知っていて・・・でも二人の本当の関係は知らない、ここもそういう店の一つです。
時間を決める事の出来ない約束の時、彼は必ずそういう店を待ち合わせ場所に選んでくれました。
わたくしの居心地が悪くないように。
お店に来て出来るだけ早くふたりきりになれるように。

牡丹1

「いらっしゃいませ。」
「悪い、遅くなった。」
隣のスツールに滑り込むように腰を下ろした彼は、まだ仕事が心のどこかにひっかかっているようなそんな顔をしていました。
「いいのよ。今夜は面白いお酒をいただいているから。」
「それは?」
「ノアズミル。バーボンなんだけど、美味しいわ。とっても。」

「今夜は珍しい人が来ると思っていたら、お待ち合わせでしたか。」
先ほどわたくしにしてくださったようにマスターは暖かなおしぼりを彼に差し出します。
「悪いね、なかなか足を運べなくて。」
「今夜は何になさいますか?」
「それ、美味しい?」
質問を投げかけたマスターにではなく、わたくしの方に振り向くとさりげなくそう聞くのです。
「舐めてみれば?」
わたくしは彼の目の前に、本当にこの瞬間まで口元にあったグラスを差し出したのです。
彼はグラスの中の芳香を楽しみ、まるで当たり前のようにわたくしがいただいていたのとおなじグラスの縁に唇をつけると、ほんの少しバーボンを口にします。
「いいね。俺もこれにしよう。」
「承知しました。」

他のお客様にするように、マスターは彼に飲み方を確認する事はありません。
美味しいウイスキーを彼がストレート以外で楽しむことなどないことを、マスターは熟知しているからでしょう。
磨き上げられたテイスティンググラスにワンショット分のバーボンを注ぐと、カウンターを滑らせるように彼の前に置きます。
「普通のバーボンでしたらショットグラスの方が気分ですが、ノアズミルはぜひこのグラスでお召し上がりください。」
「ありがとう。」
カットグラスにミネラルウォーターを注ぐと、マスターはカウンターの反対の端に座るお客様の相手に行ってしまいました。

牡丹3

「おつかれさまでした。」
「おつかれさま。」
わたくしの眼を見つめたまま、バーボンのグラスを傾けます。
眼をそらす事もできず・・・酔いではなく頬が染まるのを感じます。
「旨いな、このバーボン。それにこういう場所にいる祥子はとっても魅力的に見える。」
「もう お世辞じゃごまかされません。」
甘くにらむ視線も絡んだままでした。
「ごまかすなんてさせないよ。今夜は」

カウンターの上の二人はマスターやこの店の常連さんがご存知の、友人としての彼とわたくしの距離を保っていました。
でもカウンターの下のわたくしのストッキングに包まれた脚には彼のウールのスラックスの感触がしっかりと寄り添っていたのです。

「どうです、お好みよりも甘くはなかったですか?」
「いや、自分で選ぶと同じ様なものしか飲まないからな。こういうのは新鮮でいいよ。」
ゆっくりと1杯のグラスのバーボンを楽しむ間、わたくしたちは彼の仕事がらみのさまざまなことを・・・誰に聞かれても当たり障りのないような会話を・・・続けていました。
グラスの中身が空になったところで彼は、マスターにチェックの合図を送ったのです。
「これからどちらかへ?」
「2つ先の駅のイタリアンを予約してあるんだ」
「そうですか。では満腹なさったらまたお越しください」
「ははは 加納さんに酔わされなければそうするよ」
「お待ちしてます。おふたりとも」
「ごちそうさま」
「いってらっしゃいませ」

イタリアンなんて・・・予約していませんでした。
二つとなりの駅に行く為の改札とは逆の方へ、わたくしたちは何かに追われるように歩き、急いでタクシーをひろったのです。

重なる指に-2

二人きりになれる場所に着くまでわたくしたちは、一言も交しませんでした。
指先をからめることも、腕を組むことも、ましてや先ほどまでカウンターで触れていた脚さえ見知らぬ他人のように離していたのです。
ほんの少しでも互いに触れたら・・・堰を切るように溢れて止まらなくなってしまう事を恐れるように。

牡丹4


「ん・・ふっ・・」
部屋へ向かうエレベーターで交したキスが始まりでした。
エレベーターが開いて廊下に誰もいないことを確認した一瞬以外、貪る様なキスを止める事は出来ませんでした。

「しょう・・こ・・」
「ぁ・・ん・・」
かすれた声でわたくしを呼んだのと、部屋のドアが閉まったのは同時でした。
扉の内側に互いのバッグを落とすように置くと、彼はわたくしのジャケットの釦を、わたくしは彼のネクタイを外しはじめたのです。
「だ・め・・・んん・・・」
ジャケットを落としてあらわになったノースリーブの肩を彼の唇が襲い・・・カットソーの中のブラのホックをはずそうとするのです。
「いい・・香りだ」
「ゆるし・・はぁぁ・・ん・・」
今度はネクタイを緩め、シャツの貝釦に指を掛けるわたくしの首筋から耳へと・・・
「はぁ・・ぁん だめ・・・あぁぁ・・・」
両手首を掴まれて引き上げられ・・・腋窩を舐め上げられた瞬間、カットソーは引き抜かれ、スカートのファスナーは引き下ろされてしまったのです。

「さっきのバーボンより祥子のフェロモンが香るな。」
「あん・・・・いじわ・る・・言わないで・・・・」
「どうした?」
「おねが・・い・・」
「もう立っていられないのか」
「ん・・・・ゃぁ」
彼のジャケットすら脱がす事ができなかったわたくしは、ランジェリーだけの姿でベッドの上に放り出されたのです。

牡丹5


「そんなに感じてるのか?」
「やっ・・・だめ・・」
横たわったわたくしは、いつもと違い部屋の中が明るいままであることにはじめて気づきました。
「なにが駄目なんだ」
自らジャケットを脱ぎ、ネクタイを引き抜きながらベッドの足元に乗る彼は引き寄せたわたくしの両膝を割ろうとするのです。
「だめっ・・あかる・ぃ・・ぃやぁぁ・・・」
明るすぎる間接照明を遮るように腕を上げた途端、彼の手で寄せ合わせたストッキングの膝は割り開かれてガーターストッキングの奥のはしたなく濡れそぼったショーツまでも、明かりの下に晒されてしまったのです。
「綺麗なパウダーピンクのランジェリーなのに祥子が濡らすからそこだけ濃いピンクに見える。」
「や・・っ・・・」
開いた脚の間に身体を割り込ませた彼は、スリップの裾を引き下ろそうとするわたくしの手を左手一本でやすやすと封じてしまいます。
「いつから濡らしてた? こんな状態だってことは、俺が来る前からか? マスターに欲情してたのか?」
「あぅっ・・・っちが・・うぅっ・・」
「ブラの上からでも祥子の乳首が堅く立ってるのがわかる。」
彼は右手をランジェリーをつけたままの乳房を指先がめり込むほどに揉みしだき・・・左手はシルクのスリップの裾をわたくしの手ごとガーターベルトのレースが丸見えになるほどに引き上げたまま、視線ははしたないショーツの上と、羞恥にまみれるわたくしの顔を交互にさまよわせるのです。

「やぁぁ・・・ゆる・し・て・・・明かりを・・・」
「久しぶりに逢う恋人に、祥子のきれいな花びらさえ見せてくれないつもりかい?」
シュルッ・・・ シュッ・・・
「いやぁぁぁ・・・」
乳房から離れた手はあっという間にショーツのサイドのリボンを解き・・・明かりの下に晒してしまったのです。
「ヘアをカットしたんだね。祥子のつややかなヘアの感触も好きだったが、この景色も格別だね。まだ触れてもいないのにいつも慎ましやかなピンクの花びらがこんなに濃く色づいてる。」
「はぁぁ・・・ん・・」
彼の指先が、濡れそぼる真珠の上をはいて花びらからしたたる蜜を掬うのです。
「きれいだ。何度見ても・・・こんなに」
「おねがい・・ゆるして・・・もう・・ ね あな・た・・・ぁ・・」

牡丹6


哀願するわたくしに唇を重ねると、彼は腕を伸ばして部屋の明かりを落としました。
「しょう・こ・・・」
「あふぅぅ・・ぁん」
スリップとブラのストラップを乱暴に引き下ろし彼の手に揉みしだかれて堅く立ち上がった乳首をねぶりながら、わたくしがほとんどの釦を外していたシャツを脱ぎ去ります。
「いいのか?」
唇も耳朶も首筋も乳房も・・・全てに唇を這わせながら、柔らかな感触のウールのスラックスとソックスを荒々しく脱ぎ捨て、わたくしの手を彼のものに導くのです。
「はぁぁ・・・あぁ・・おっ・きぃぃ・・・あぅっ」
彼はいつものボクサーパンツを・・身につけていませんでした。
いつからそんな風になっていたのか、いままでにないほどに猛々しく雄々しく立ち上がり、わたくしの指にはぬめる彼の体液さえ感じられたのです。
「ほしいか?祥子。これが欲しいか?」
「は・・ぃ・・・ほしぃ・で・すぅ・・・はぁうっ」
「じゃぁ 咥えてくれ」

力強い腕で体勢を入れ替えられたわたくしは、ガーターストッキングだけの姿にされ、仰向けの身体の中心にそそりたつ彼に唇を重ねたのです。
少しずつ口内の粘膜の比率を高めるように・・・唇の触れた場所に舌先を這わせるように・・・
「ああ・・・そこだ 気持ちいいな 祥子のフェラは 本当にいい」
彼の茂みに鼻先を埋めるほどに深く・・喉奥で先端を愛撫し・・・
左右の皺袋をひとつづつ含み・・・
鼻先で袋の根本を刺激しながら舌先で彼のアナルを舐め・・・
「うぅ いいっ」
同時に彼に添わせた指に新たなあたたかな粘液がしたたり落ちるのがわかります。
指先を皺袋に移し・・・わたくしは改めて口腔に彼を迎え入れたのです。

「最高だ 祥子 これ以上されたら逝ってしまいそうだ」
長い髪に指を絡めるようにしてわたくしの頭を引きはがすと、彼はわたくしの身体をそのまま昂りの上へと引き上げたのです。
「祥子を味あわせてもらうよ」
「あぁうっ・・・」
騎上位に彼を跨がらせたわたくしの花びらを貫くように、昂りを突き上げ・・・わたくしの腰をぐいと引き下ろした彼は、挿入するなり最初の絶頂に達したわたくしを容赦なく責め立てはじめました。

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「はぁぁ・・ん・・いい・・いぃのぉぉぉ・・・あなたぁぁ・・・」
「っ締まる 祥子のはなんて」
わたくしを上にして責めに応じてたゆんと揺れる乳房をいらっていたのは、十分にもならなかったように思えます。
突然動きを止めると、彼は今度は正上位でわたくしを責め立てたのです。
「いぃぃ・・・あな・た・・・す・きぃ・・・」
「好きだよ 祥子」
「だめ・・・そこ・・・また・い・っちゃ・うぅぅ・・」
「何度でも逝ったらいい。祥子が逝くのを見るのが俺は好きなんだ。」
「あぁぁ・・・いっちゃう・・ぅ」
「逝ってるな 解るよ 祥子の身体は嘘がつけない」
「やぁ・・・そんな・・あぁぁ・・・いやぁぁぁ」
「もっと もっとだ」

逝き続けたままの身体をうつぶせにされ、ヒップだけを引き上げられて今度は後ろから深々と・・・
「あぁ・・・ゆるしてぇ・・また・・いぃぃ」
「ほらっ」
パシィ! 白く張りつめた尻たぼに平手のスパンキングが飛びます。
「ひぃっ・・・」
「いいのか? 祥子」
パシッ! パチッ! 立て続く刺激にわたくしは身体全体をひくつかせてたくましい彼を体奥でより一層感じてしまうのです。
「祥子に逢うまでバックがこんなにいいとは思わなかった」
「あうっ・・・」
「わかっているか祥子。スパンキングの度に祥子は酷く締め付ける。」
「あぁぁ・・・いぃぃ・・・いぃのぉぉ・・・・」
「動かずにいても中が動いて俺のを扱く。奥を突けば吸い込むようだ。こんな身体は祥子しかしらない。」

再び乱暴にわたくしを引きはがすと仰向けにして・・・正上位で・・・・彼は絶頂へ向けて・・・身体を重ねたのです。
「はぁぅ・・ん・・」
「祥子 逝くぞ!」
「はぁ・・・いぃぃぃ・・・」
「一緒だ いいな」
「くださ・いぃぃ・・・ あなたの精液で・・祥子を・・まっしろ・に・し・てぇぇぇ・・・」
「ああっ 逝くっ」
ヘッドボードに突き当たったわたくしの頭を一層押し付けるように3度大きく突き上げると、彼は熱い精液をわたくしの中に迸らせたのです。

牡丹8


「あ・ん・・・ ごめんなさい」
シャワーを浴びた彼に頬を撫でられて、あられもない姿のままでいることにはじめて気づきました。
彼に逝かされたまま気を失ったようになっていたわたくしの身体には、パウダーピンクのスリップだけが掛けられていたのです。
「そろそろ時間だ。シャワーを浴びて来られるかな?」
「はい。 あっ・・・いゃ・・・はずかしいわ」
身体を起こしただけで・・・太ももに暖かなものが垂れ落ちてくるのです。
「さっき拭いたつもりだったけど、今夜は沢山出したからな」
「もう・・・」
ベッドサイドのティッシュを慌てて押し当てて、彼がベッドの上にあつめて置いてくれたランジェリーを胸元に抱えたのです。
「シャワーを浴びてきます。」
「逝ったままで気を失っている祥子もきれいだったよ。あと少し若ければもう一戦挑んじゃいそうだ。」
「いじわる・・・・」
「普段の乱れない祥子を知っているからだろうな。俺にだけ見せる姿だと思うとたまらない。うれしかったよ。」

「・・・すぐに・・支度しますわ」
先ほどとは違う熱に染めた頬を隠すように、わたくしはバスルームに逃げ込みました。

牡丹9


「ありがとう 遅くなっちゃったね。」
「ううん」
二人きりの部屋を出たエレベーターの中で名残の口づけを交しながら、わたくしは彼に腕をからめたのです。
「いつものように凛とした祥子も好きだよ。」
「ふふふ・・・」

夜の空気は、ふたりにはとても心地よいものでした。
火照る身体を冷やす為にも・・・腕を組んで街を歩くためにも・・・・

日曜の憂鬱

まだ空気の澄んでいた梅雨前の日曜日。
新しいデザイナーとの打合せにわたくしははじめての住宅街に足を踏み入れていました。
おもたせで用意した焼きたてのペストリーでブランチを取りながらの打合せは順調な盛り上がりと共に終了し、わたくしは予定外の時間を持て余していました。
仕事に戻るには遅過ぎ、このままいつもの仕事終わりのくつろぎのひとときを過ごすにはあまりに早すぎる午後・・・
土地勘のない住宅街で、ふと鼻先を流れた香りに心惹かれたのです。

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それはわたくしがただ1つだけ持っている香水と同じティーローズ系の香りでした。
競うように手入れをされた建て売り住宅の壁を這うつるばらの香りは、カーテンに映る人影の楽しげな様子とともに『わたしたちは幸せなのよ』と声高に主張をしているようにさえ感じられたのです。
透き通るような涼やかな空気をとりいれようとわずかに開いた窓からこぼれる笑い声とイージーリスニング。
その曲が、彼の好きなジャズと同じだと気づいたとき、わたくしの背中を冷たいものが流れたのです。

そういえば・・・この街は彼が住む街でした。
最愛のお嬢様と奥様との幸せな家庭のある街。
公休日にはたとえ前日にどれほど家庭で不愉快なことがあっても、必ず自宅で家族と休日を過ごす彼の家。
きっと・・・独りでいるわたくしのことなど、玄関のドアを開けた途端に記憶から綺麗になくなってしまうであろう・・・彼と家族のプライベートな空間。
今日も・・・きっと・・・。

わたくしの中で、最も忌避すべき感情が、周囲の情景となんの関わりもなく湧き上がってくるのを止める事ができなくなりそうでした。

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彼の・・・わたくしと居られない時の彼のことは、出来るだけ知らないようにと努めてきました。
もちろん、二人の関係を知らない彼のスタッフや共通の友人たちから聞かされる様々な情報をシャットダウンすることはできませんでしたが、極力詳細からは逃げていたのです。
彼の幸せの源が家庭にあるなら、家庭ごと彼を愛そう。
彼との関係を決めた時わたくし自身に誓ったことでした。

知らないことは、ありえないこと。
いたづらに知ってもそこには<嫉妬>という醜い感情しか存在しえないからです。

ただ、わたくしが知っていたのは彼の自宅の最寄り駅の名前だけでした。
つる薔薇の絡まる家が彼の家である可能性なんて何万分の1でしかないのです。
仮にあの家が彼の家だと知ったところで、何が変わるの??

足早に駅を目指したわたくしは、横浜の中心から少し離れた緑あふれる場所にある外人墓地へ向かう事に決めたのです。

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そこは、日本や極東で戦死した英国人のための墓地です。
広々とした芝生に、定形の墓碑が並び、その墓碑と墓碑の間には葬られた魂たちが故国を懐かしめるようにと様々な薔薇が植えられていたのです。

「あと1時間で閉めるけどいいかい?」
「はい、少しだけ散歩させてください。」
墓地の管理人をされているシルバーグレーのご夫婦は、もう何年も年をとるのを忘れていらっしゃるように、数年前に訪れた時と同じ笑顔でわたくしを迎えてくださいました。
「ちゃんと綺麗な時期を外さないで足を運んでくれてうれしいよ。いってらっしゃい。」
おばあさまの優しい声に送られてわたくしは芝生へと一歩踏み出したのです。

日々丹精された薔薇は美しく花を咲かせていました。

なまめかしく花びらを広げた薔薇は・・・彼とのはじめての口づけの夜を思い出させました。
「祥子はキスが上手だね」
欲情にかすれた声で彼が告げたひとことに 溺れちゃだめよ・・・と返したのは、わたくしでした。

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「しっとりと吸い付く様な肌を夢に見たよ」
家族と週末を過ごした彼が、わたくしを抱いて星の様にキスマークを残した夜・・・わたくしは咲き誇り・咲き乱れるほどに色濃く薫り高くなるイングリッシュローズのようにはしたなく乱れたのです。
彼の溢れるほどの精を浴びて、気を失いそうになりながら。

「もう妻は抱けないんだ。抱いても祥子を思い出すとあまりの違いに萎える。その度に俺は自分の中の男に自信を亡くす。」
素肌のままのわたくしを腕のなかにかき抱いて、黒髪を指先で解きながら彼はそう言ったのではなかったか。
「だから、祥子を抱くときはいつも少し怖い。もしかして抱けなかったらどうしようと・・・思う。」
「でも、そんなことは一度もないでしょう? 今夜もさっき二人で逝ったとは思えないほどもうこんなに元気なのに。」
「ははは そうだな。だから祥子を抱くと俺は男に戻れるんだ。自分に自信が取り戻せる。」
「もう♪ なにも心配なんていらないのに。」
「そうだな・・」
抱きしめた身体毎裏返されて、まだ彼の精をとどめたままの蜜壷を愛されたのは・・・いつのことだったかしら。

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「こんな隠れ家みたいなライブ、俺は好きだよ。」
雨の中、彼の傘にふたりで入って駆け込んだ麻布十番のジャズライブ。
わたくしの知り合いが多いその会場では、指を絡める事さえしなかったけど・・・同じ音に感じ、おなじアレンジに微笑み合い、宝石のような瞬間を共有したのは他の誰でもないわたくしではなかったろうか。

「好きな音楽が一緒だとこんなに楽しめるね。」
「そうね。」
「祥子と好みが一緒なのは、音楽だろう、酒だろう、日本画もそうだったよな。花もだよな。それと・・・コーヒーも、あと・・・」
「数え上げてたら、セカンドステージが始まっちゃうわ。」
「ははは そうだな」
わたくしの前のワイングラスにつと手を伸ばし、こくりと一口味わった彼は瞳を閉じて濃いボルドーを味わうとそのまま呟いたのです。
「祥子と一緒だから好きになっていくのかもしれないな。」

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ほとんど誰も訪れる人の居ない外人墓地を薔薇を愛でながら歩きながら、彼と出逢う事で知る事ができた花束のような言葉と想いを・・・思い出していたのです。
彼と出逢うことをしなければ、味わうことのなかった<嫉妬>。
彼と出逢わなければ、知る事のなかった優しい<想い>。
どちらも知らずにいる人生と、どちらもを知ってしまう人生。
そのどちらもを知った今のわたくしに、過去を遡って彼に出逢った事を後悔する?と聞いたら・・・答えはNO!でした。

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「ゆっくりさせてあげられなくて申し訳ないね。」
「いえ、わたしこそ遅い時間にお邪魔して。ありがとうございました。」
シンプルな錬鉄のゲートを閉めようとするおじいさまは優しい声でわたくしを送り出してくださったのです。
「またお邪魔させてください。失礼します。」
「あっ 待って。よかったらこれ持って行って。」
おばあさまが差し出してくださったのは、紫の薔薇を英字新聞にくるんだシンプルな花束でした。
「いいんですか?」
「花好きでしょう。ここでもまだ2株しかないけど今日剪定したから。」
「その花はいま世界で一番安定した青薔薇なんだそうだ。奇跡が起きるという花言葉だそうだよ。」
「ありがとうございます。いい香り いただきます。」
やさしくうなずく二人に見送られ、憂鬱だった日曜日がすっかりいつものわたくしの時間に戻っていることを確認できたのです。
「奇跡が起きたら、ご報告に来ますね。」
「また元気で顔を見せておくれ。」
「ありがとうございます。」

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ベッドサイドには、いまあの紫の薔薇が微笑むように開いています。
わたくしにとっての奇跡とはいったい何なのでしょうか・・・。

今夜は、独りの優しい夜を取り戻せた奇跡に感謝して眠りにつこうと思います。
おやすみなさい。