夢のかよひ路 2
美貴さん・山崎さん・石塚さんの3人の男性に招かれた雪の別荘での滞在は、予定よりも1日延びてしまいました。
それは、31日の夜から2日の明け方まで続いた淫らな戯れのせいでした。
4人、いいえ5人の男性からかわるがわるに趣向を凝らして求められる行為は、わたくしの身体を想像以上に消耗させていたからです。
1月2日の一日。
わたくしは望月さんの腕の中で、午後のお茶の時間になるまで微睡み続けておりました。
目覚めてからは暖炉の前で、望月さんのいれてくださった香り高い紅茶を前に、3人の男性ととセクシャルな香りのない、互いを知るための大人の会話を楽しみました。簡単な自己紹介やお仕事のことなど・・・わたくしはこの日の夕餉までの短い時間に、はじめて聞かせていただいたのです。
翌日の朝。
ご一緒に朝食をとった皆さんから、わたくし1人だけが望月さんの運転するセルシオで帰途につくことになったと聞かされたのです。
「祥子さんと一緒に車の中なんていう密室で寄り添っていたら、また我慢できなくなりそうだからね。ははは・・・」
そう言って笑われたのは、石塚さんでした。
「皆さんはどうされるのですか?」
1台の車を1人で占領してしまうことに気が咎めていたのです。
わたくしの表情に気付いてくださったのでしょう。山崎さんが、そっと教えてくださいました。
「結城くんが車を持ってきてくれます。あのレンジローバーで4人ならゆったりと帰れますからね。」
そう、レンジローバーの助手席とリアシートにお二人なら、窮屈な想いをすることなくお帰りになれるでしょう。
往路で・・・カーテンに閉ざされたリアシートの空間でわたくしの事をお二人で責め続けられた時よりも・・・ずっと。
「この二人が随分なことをあの車でしたと、望月から聞いています。同じ車で初対面の結城さんと二人きりで帰るのは気詰まりでしょう。」
美貴さんは、わたくしが別荘に着いたばかりの時の様子をご覧になってなどいないはずなのに、<結城さん>という名前を耳にして戸惑う気持ちをそのまま代弁してくださったのです。
「本当は、僕は一緒に帰りたかったんです。でもね、この二人に阻止されてしまったんですよ。」
「あら、構いませんのに。」
「ゆうべのあみだくじで負けちゃいましてね。」
ははははは・・・果たしてどこまでが本当で、どこまでが冗談なのでしょうか。
確かに、美貴さんだって二人きりでいてずっと紳士でいてくださるとは限りません。
彼らに求められるままに激しい行為に応えて、少し窶れたわたくしを気遣っての、帰路の車の割り振りでした。
今朝、目覚めた時。
ベッドルームには太番手のシルクで柔らかく編まれた黒のニットワンピースと、裏地に鮮やかなオペラピンクのタフタが使われたヌートリアのショートコートが用意されておりました。
黒のリバーレースをオペラピンクでトリミングしたスカラップが美しいランジェリーのセットが一緒に置かれてありました。
胸のラインがくっきりと浮かんでしまうワンピースのためのフルカップのブラとTバックとスリップ・・・そしてお揃いのガーターとシルクのストッキング。
たぶん美貴さんか山崎さんのご趣味なのでしょう。
上質でシンプルで美しい、わたくしも好きな装いでした。
お部屋に付いている温泉が引かれた岩風呂にゆったりと浸かり、身を清めてから身支度をしたのです。
ランジェリーはやわらかく起伏に満ちた肌に添い・・・身動きするたびにキシキシと甘縒りのシルク特有の糸音を響かせるワンピースは、さらっと滑らかな肌触りでわたくしを包んでくれたのです。
夢のかよひ路 1
ゲストハウスを出て国道へ向かう駐車場に、ブラックボディのセルシオはひっそりと停まっておりました。その車と運転手を見た時にはじめてわかったのです。
今夜、あの石塚さんがわたくしのランジェリーを丁寧に扱ってくださったことや、最後の絶頂をわたくしの中で逝かれなかったことの理由が。
「祥子様、お迎えに上がりました。」
そういって、微笑んだのはいつもよりもずっとカジュアルなジャケット姿の望月さんでした。
「ありがとうございます。」
あらっ・・いいわね・・・ 黒塗りのセダンへ向かうわたくしに、周囲の羨望の眼差しと囁き声が投げかけられたのはわかっておりました。
その眼差しが高級車にではなく、後部座席のドアを開けた若くて素敵な男性の存在のせいであることも充分に理解しておりました。
こんな風に注目した方達の口から『でも、あの方パーティの間お見かけしなかったわね。』・・・なんていう意地悪な言葉が出る前にと、わたくしはまるで当然のことのように、心地良く冷やされた空気が流れ出る革のシートに身を沈めたのです。
バァゥッ・・・ リアドアを閉めると、望月さんは右の運転席のドアへと向かいます。
フロントガラスを横切る彼の姿さえ、ついわたくしは眼で追ってしまいます。
「お久しぶりです。お送りいたします。」
シートベルトを閉めると、望月さんはルームミラーごしにわたくしに声をかけてくださいました。
いつものように、ビジネスライクなほどに最低限の丁寧な言葉遣いで。
「わたくしの方こそ、ご無沙汰してしまって。お元気でしたか?」
「はい、おかげさまで。お気遣いありがとうございます。」
望月さんのアクセルワークはいつものとおりです。
滑るように車を発進させ、ブレーキも的確に、乗っているわたくしが些細なGを感じることさえないように細心の注意を払ってくださるのです。
たとえ、今夜のようにリアシートにわたくし1人だけだったとしても。
「今日は美貴さんはどうなさったの?」
「いまはNYに行っております。」
「そうなの。あちらもサマーバケーションのシーズンですのに、お忙しいのね。でも、ご一緒に行かれてないなら望月さんは夏休みの最中ではなかったんですか?」
「いえ、1週間ほど前に石塚様からご連絡があってお迎えに上がる様に指示されてました。お迎えに上がるのが祥子様なら、喜んでいつでもうかがいます。」
「ごめんなさいね。せっかくのお休みでしたのに。」
「祥子様は、美貴がいない車に私の運転で乗るのは、お嫌ですか?」
「ふふふ、何を言うの。」
わたくしは、花火帰りの群衆で渋滞を始めた通りを窓越しに見つめたのです。
「望月さんが迎えにきてくださって嬉しいわ。こうして二人きりでドライブなんて、お正月の時以来ね。」
「憶えていてくださいましたか、祥子様。」
「ええ、忘れる訳はないわ。だからあなたも思い出して。」
「何をでしょう。」
車はストップ&ゴーを繰り返しながら、ゆっくりと進んでゆきます。
こういった状況が、運転手として最も気を使わなくてはならない時だということは、わたくしにもわかっておりました。
だから、焦らさないで答えを教えてあげることにしたのです。
「あのとき約束したでしょう。二人きりの時は<様>なんて使わないでって。」
祥子の日常/ひとりの夜
おはようございます。祥子です。石塚さんの粋な夜のプレゼント<Fireworks>いかがでしたでしょうか。
花火が始まって・終わるまでの限られた時間での逢瀬の物語でした。
全15話という<淑やかな彩>では比較的短い物語に、物足りない想いをされた方もいらっしゃったみたいですね。
一瞬ですが花火と共に激しく責め立てられてしまった一夜は、これから望月さんにバトンタッチされるようです。ぜひ、お楽しみになさってください。
さて、今回は以前にもお伝えしておりました<祥子の日常>の夜をお届けします。
どなたともご一緒しない一人きりの夜をわたくしがどう過ごしているか・・・こっそりご覧になってくださいませ。
Fireworks 15
コン・コン・・・「石塚様。下のパーティルームで皆様がお呼びです。」
ドアの外から先ほどのパーサーの声がいたします。そろそろ会もお開きの時間なのでしょう。
「わかりました。すぐに下ります。ありがとう。」
そのお返事は、石塚専務のお声でした。
「支度はできましたか?」
「はい。」
振り返ったわたくしの視線の先には、扉に向かったままに立たれた石塚さんの背中が見えたのです。
わたくしのお願いを聞いて、ずっと振り向かずにいてくださった・・大きな背中が。
「お待たせしました。」
わたくしはその背中に縋る様に寄り添ってお声をおかけしたのです。
「ありがとう、祥子さん。素敵だったよ。もっとずっと独り占めしたいが、もう岸につくらしい。また、逢ってくれるね。」
「ふふふ、わたくしでよろしければ。」
「ありがとう。じゃ、行こうか。」
「どうぞ、先に戻ってくださいな。わたくしは少し遅れてまいります。」
いや、構わない、一緒に・・・石塚さんの表情はそうおっしゃっておりました。
でも、わたくしがなぜそう言うのかを一番ご存知なのも・・石塚さんでした。
「わかった。」
一言のもと頷かれると、竹上建設 石塚専務の表情で特別室の扉を開かれたのです。
祥子からの手紙ー15
わたくしが1階のパーティ会場に戻った時、石塚さんは段上でスポットライトを浴びてらっしゃいました。
「それでは、皆様のご発展を祈念いたしまして一本締めをさせていただきます。よぉーっ。」
パァン!! 会場全体に全員の手締めの音が響きました。
”日の出桟橋に着岸いたしました。スロープの用意ができるまで、いましばらくこの会場でお待ちください。“
女声のアナウンスが流れます。
弦楽四重奏が低く奏でられるなか、石塚さんとお父様・お兄様の三人はパーサーに先導されてお見送りのために先に会場を出られました。
”それでは、出口に近い方から順にお進みください。”
80人近いお客様が、ゆっくりと花火とフレンチディナーに彩られたパーティ会場を惜しむように下船してゆかれます。
スロープにさしかかったところで、偶然にもわたくしのとなりに長谷川さんがいらっしゃいました。
黙って、隣を歩かれて・・・別れ際にわたくしの方を見ることもなく一言だけおっしゃったのです。
「必ず連絡する。待っていてください。」
そのまま、3人の部下の方達と先に進まれてゆきました。
わたくしは、人の流れに逆らわずにゆっくりとスロープを下りたのです。
一番下には、迎えて下さった時と同じ様に竹上建設のトップ3が並んでらっしゃいました。
「ありがとうございました。とても楽しかったです。」
そうご挨拶をして失礼しようとしたわたくしに、握手を求める形で石塚さんが思わぬ言葉を囁かれたのです。
「送れなくて申し訳ないが、祥子さんのための車を用意してあります。それで、帰ってください。」と。
わたくしのための車?
不思議に思いながら、ゲストハウスを出たわたくしはその意味をすぐに理解したのです。
そこには、セルシオと望月さんが待っていらっしゃったのですから。
Fireworks 14
最後のプログラムが迫っているのでしょうか。一段と激しく華々しく上がる花火は、わたくしの理性を振り切って溺れさせる官能の深さを示しているかのようでした。
「はぁぁん・・いいのぉぉ・・・いしづかさぁぁん・・・あぁ・・しょうこ・・おかしくなるぅぅぅ」
「ああ 一緒におかしくなるんだ!祥子!!」
わたくしのむき出しの背中に石塚さんのワイシャツが被いかぶさり、両手が送り込まれ続けた淫楽に疼くGカップの二つの乳房を握りつぶすのです。
「逝くんだ!!祥子!」
グイ・・・引き上げられた上体は、石塚さんの塊をそのまま花びらの狭間を深く・いっそう奥まで飲み込ませ・・・責め立てるのです。
「やあぁぁぁ・・・・」
追い上げられ、あおのけたわたくしの前に広がる夜空には、マグネシウムが創るプラチナの光の花が幾重にも乱れ開いてゆきます。
「あぁぁぁ・・い・・いっくぅぅぅ・・・」
耐えきれない快感に思わず瞑った瞼の中で・・・煌めく花火はその残像をわたくしの脳裏に焼き付けてゆくのです。
「んっ いくっ」
絶頂に硬直して締め上げ・つま先立つわたくしの蜜壷から塊を抜くと・・・石塚さんは白いヒップの丸みへと熱い・・粘液を迸らせたのです。
「祥子さん」
膝を付きそうになるわたくしを支えると、抱きしめるようにして特別室の中へと連れて行ってくださったのです。
花火の終わりに合わせる様に、この船は日の出埠頭へと動きはじめておりました。
まだ、上り詰めた余韻から抜け出せないわたくしは、半分脚をもつれさせるようにしてエアコンの効いた室内へと戻ったのです。
「これを使いなさい。」
わたくしに冷やされたおしぼりを数本渡すと、石塚さんは専用デッキに置いたままの二人の衣服を取りに行って下さいました。
おしぼりで・・・淫らな行為の後始末なんてできませんた。
持ってきたバッグからティッシュを出して、石塚さんの精液とまだ溢れているわたくしのはしたない蜜を丹念に拭ったのです。白く濁る愛液は・・・わたくしの太ももをガーターストッキングを濡らすほどに滴っておりました。
冷たいおしぼりで、首筋と胸元を拭ったところで石塚さんが戻ってらっしゃいました。
「これで全部かな。」
長谷川さんへの嫉妬から激情に駆られた様に、わたくしのワンピースをランジェリーを剥ぎ取ってゆかれたのです。デッキチェアに放り投げるようにして折り重なっていた衣服はそれでも全てが揃っておりました。
「はい。これで全部です。あの・・・」
「なんだい。祥子さん」
石塚さんは・・・塊を拭おうとしたわたくしの手を拒否して、わたくしを見つめました。
「身支度しますから、こちらをごらんにならないでくださいな。」
時間はもう・・たぶんほとんど残されてなかったでしょう。
石塚さんのためにも、素早く身支度をしなくてはなりません。
「わかってるよ。安心しなさい。」
そうおっしゃる石塚さんにこくん・・と一つ頷くと、遮るもののない特別室の中で、わたくしは彼に背を向けてハイレグのパンティに脚を通したのです。
船窓をレインボウブリッジが通り過ぎてゆきます。
もう桟橋に到着するまでいくらも時間がありません。わたくしは手早くブラを身に付け、ワンピースを纏ってからパーティバッグの中の手鏡を覗いたのです。
ほんの少しだけ、激しい淫戯にやつれた風情が目元に残っておりました。
ドレスとともに渡された眼鏡をかけてカムフラージュして・・・どなたにも気付かれないことを祈るばかりです。
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