2ntブログ

iPhoneでも♪

以前にご案内をしたのですが
ようやくわたくしの電子書籍を
iPhoneやiPadで読んでいただけるようになりました

Macユーザーの皆様大変お待たせ致しました
お気に入りの配信先を覗いて
<加納祥子>で検索をしてみてください♪

宜しくお願いします

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蜜の悲鳴

彼女に早朝に起こされた
麻のジャケットに袖を通した私たちをのせたタクシーは
見慣れぬ場所を走りはじめる

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「勧修寺さん綺麗でしょう」
目の前の女性の声はいつもの滑らかさはない
ピアノのどこかのキーだけが抜けた様に
柔らかな声のどこか一音が微妙に消えている

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「ああ、早起きをしたかいがあったね」
八重の蓮の花と同じ色の鞭の痕が
白いサマードレスの背中に隠れているはずだ
何度も悲鳴を上げる彼女を縛り上げた縄は
内側から赤みを増した白い肌に容赦なく食い込んでいた

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まるで何年も会えなかった恋人を貪るように
心が飢えていた・・・彼女を求めて
花芯の奥の奥まで何度探っても
蜜にどれだけまみれても
眠りについたのが夜空が明るくなりはじめた時刻でも
まだ私は満足していなかった

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「この後の予定は?」
私の心の中はもう二人きりの場所と麻縄に向かっている
まだ一時間と経っていないのに
「ちょっと遠いですが、貴船で川床料理でもいかがですか?
七夕のおまいりもできますし」
ゆっくりと池を巡りながら
彼女のキーの抜けた声がそれでも蝉時雨をくぐって私に届く
木立に囲まれたこの場所で
背中に残っているはずの痕をあばきたくなる

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「それは粋だな。ゆっくりと川床で過ごすとするか」
「ね、よろしいでしょう♪」
私の気持ちを知ってか知らずか
彼女は日傘の影になった白い頬をゆるめた
眼の下に浮かぶ薄い隈が私の与えたものだと思うと
ほんの少しだけ気持ちが落ち着く

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時間はゆっくりある
少しお酒を飲んで・午睡をむさぼり
あの宿へと帰ろう
行灯に浮かぶ彼女の白い肌を
今夜もこころゆくまで苛むために
彼女の蜜のような悲鳴に
まみれるために

とうとう外伝配信開始です

お待たせしました♪
と、待っていてくださる方がいらっしゃるといいのですが・・・
第6巻<蝉時雨の庭外伝>の配信がスタートしました。

いままでのお話と違って、男性言葉・男性視点で書かせていただいた1冊です。
こちらのブログでストーリーをアップしていないはじめてのシリーズですので、お気に召していただけるかとても心配しています。
こちらのコメントでも、ツイッターでも、ぜひ皆様のご意見をお聞かせいただけたらと思っております。

配信先はこちらになります♪
ケータイ恋愛小説pink
ケータイノベルズ
TOP BOOKS
いまよむ for Android
Mobi-book
BOOKSMART Powered by Booker's
BOYS倶楽部
どこでも読書
エルパカBOOKS

うるさい程に蝉時雨が響く夜に、祥子と長谷川が出会ったのは偶然ではなかった。ジャズライブの会場であるホテルの支配人のたくらみだった。地元から都内の閑静なホテルに単身赴任して一年足らずの支配人は、友人が主催するジャズライブに訪れた祥子に恋をした。しかし、小柄で一見がさつな中年男にしか見えない自分を知っている彼は、自ら祥子を口説くことはしなかった。祥子の好みのタイプである長谷川をけしかけ、彼に抱かせる場に立ち会うことで自らが満足する<寝取られ>の欲望を満たそうとしたのだ。切ない男の歪んだ恋を描いた蝉時雨の庭 外伝。(支配人 日比野治彦)
誰にも見られていないはずだった、蝉時雨の夜の祥子と長谷川の行為をただ一人見ていた男がいた、参議院議員高野篤秀。なによりも口戯に執着を持つ彼は、行為のあとの長谷川のものを躊躇わずに口で清めた祥子に興味を持つ。「彼女が欲しい」と手を尽くす高野に、支配人と長谷川はこう答えた。「先生が彼女に対してきちんと名刺を差し出して、乞われたらいかがですか?彼女に対してフェアに接すれば、限りなく先生の欲望に応えてくれるでしょう。不思議ですが、彼女はそういう女性なのです」と。その高野に祥子が与えた答えは・・・。ファンタジーを追い求める男達と祥子を描いた蝉時雨の庭 外伝第二弾。(国会議員 高野篤秀)
第1巻 オペラピンクのランジェリーに掲載された第二話蝉時雨の庭のスピンオフストーリー。祥子の虜になった男達を描いた初の外伝。

     第6巻表紙

次の7巻の準備が整っていなくて、少々焦り気味ですが・・・
そちらもがんばります♪
暑い夏、ぜひこの1冊で涼んでください。

対談-3 masterblue様

<ムーンナイト・アフェア>を電子書籍としてお届けしているところですので、ここで日々の妄想を形にして(SM小説)のmasterblue様との対談をお届けしたいと思います♪実は、masterblue様はこのFC2ブログでムーンナイト・アフェアを連載していた時期にお越しいただいたお一人で、今も応援してくださる心強い殿方です。

それでは、masterblue様お気に入りの珈琲専門店のテーブルでストレート珈琲をいただきながら、ひっそりとはじまった<対談>をどうぞお楽しみください♪




祥子:masterblueさんはちょうどFC2のムーンナイト・アフェアのアップを始めた頃からのお客様だと記憶していますが、どんなきっかけで<淑やかな彩>にお越しいただいたのでしょうか?

masterblue:確か「日々の妄想を形にして」のメールフォームから、相互リンクのお誘いを受けたような気がしますが、確かではありません。
ただ、はっきり覚えているのはコーラスをやっているので<淑やかな彩>のカテゴリーに「第九 合唱付き」があったので飛びつきました。でも、まだFC2には掲載前だったようで、他のストーリーを読ませて頂いたことから始まったと思います。
しかし、それ以前に別のブログで掲載されていたものだとは知らなかったので、たくさんのコメントが入っていて、びっくりしました。

 
祥子:<淑やかな彩>はMSNからshinobiへ、そしてFC2へと掲載の場所を移していましたから。まだインターネット上のいろいろな規制がスタートしたばかりでしたので、大人のストーリーはいつ削除されるかとおびえる毎日でした。
masterblueさんはわたくしよりも格段にハードなSM小説をお書きになっていらっしゃいますね。<淑やかな彩>のSMシーンをご覧になってどのような感想をお持ちですか?

masterblue:私自身がハードSMを書いているので、ある意味では、女性の描くSMシーン、それも女性目線からのSMとして、勉強させて頂きました。
故団鬼六氏が語っていたことですが、一人一人に好きなシーンがあり、好きな責めがあると。SMとはこうでなくてはならないということではないと思っています。祥子さんのような描き方、使い方があっても、これはこれで立派なSMシーンだと思います。
私のようにSMシーンを書くために、物語を書くのではなく、あくまでも物語があって、そこの味付けとしてSMシーンが入っている、だからSMなしでも成り立っている物語もあったと思います。
そういうことで<淑やかな彩>を味わい深くしている、材料の一つと感じました。


祥子:確かに、必ずなければならないという訳ではなかったかもしれませんね。ただ、一人の女性として自分の中にある欲求をつきつめて行った時に避けることのできないモチーフの一つだと思ったのです。

masterblue:もしよろしければ、こちらからお尋ねさせてもらいたいのですが。
<淑やかな彩>を書き始めた動機、きっかけ、衝動何でもいいのですが、なんだったのでしょうか。 <淑やかな彩>のプロフィールにある、あるいはインターミッションで告白していた略歴からはとても考えられないのですが。


祥子:わたしがブログを始めたきっかけは、「物語を書けるか試す為」でした。
これは、柏木さんとの対談でもお話させていただきましたけれど(笑)。仕事上、いやと言うほど企画書を書いておりまして、文章は綴るものの物語にする力があるのかを見極めたかったからです。
淑やかな彩は、たまたま官能小説でしたがあの当時は別のペンネームで4本くらいブログを書いていましたね。
淑やかな彩がなぜ官能小説になったかと言えば、離婚してフリーになった自分の中の<女>と向かい合いたかったからです。
あのお話しが妄想か欲望かリアルかは申し上げるわけには参りませんが、どんな形であれわたくしの中に存在した<女の部分>を凝縮したお話しであると言えるでしょう。

masterblueさんはどのような動機でブログをはじめられたのですか?

masterblue:妄想と欲望の塊で、文章が書けるかどうかなんて気にもせず、書き流した私の「日々の妄想を形にして」とは、全く違うはずです。<淑やかな彩>の洗練されたそれこそ「淑やか」な文体の根源がわかりました。
 
私の執筆の動機は、いたって単純。
千草忠夫というSM作家がいました。1955年1月12日没、享年64歳。
苦痛系の責めでなく、羞恥系の責めを書いていました。
この人の作品が好きで、その上何回読み返しても燃えました。惜しむらく、若くして亡くなってしまい、その後は手持ちのものでしのいでいました。それも事情によりほとんど処分せざるをえず(笑)。
日々悶々とする中で、いっそのこと、その悶々とするものを自分で、文字で具体化してみようと始めたのが最初です。幸いその頃ブログと言う扱いやすいツールが出来たため、何もわからずに第1話をアップし、その後かってネットのSM作品を探すのにお世話になったポータルサイトに、逆に紹介のお願いをしていたら、徐々にお客様が増えてきて、今日に至っています。
今でも時としてそうなのですが、特に最初の頃は、書いているとどんどん話が進み、その話で自分が興奮して、濡れてきてしまっていることもありました。そんな調子なので、最初の文章は、お客様に読んでいただくためには、冷静なって何回かの推敲を重ねてからアップしなければならないというひどい文章なのです。
ここの所、更新が遅くなっていますが、まだ終わったわけではなく、似たり寄ったりの物語が続きます。時には新境地を切り開こうかと思うのですが、書く目的が邪道ですので、うまくゆかないですね。


祥子:そんなことはありません。
はっきりと目標にされている方がおありになるし、男性ならではなのかもしれませんが嗜好も明確でいらっしゃるからあれだけの作を続けられているのですね。
男性と女性の性に対する向き合い方の違いとか、お考えがあればお聞かせ願えますか?

masterblue:女性のことは祥子さんにうかがうとして(笑)。
男は、視覚で興奮し逝くものです。さらに、女性にこうあってほしいという願望と想像でも興奮するもので、AVがいい例です。
私のブログに「奥の院」があるのはご存知ですか?


祥子:はい。サイドバーにご案内がございますね。なかなかハードなコンテンツの集積ですが。

masterblue:実は、「奥の院」の方は女性に全く受け入れてもらえません。
無修正の画像や動画と言ったって、女性が無修正を今更見てもしょうがないですね。なんたって、生まれた時からいやというほど見ていますから(笑)。男の無修正の裸体を女性が見てどう感じるのかわかりませんが、不特定の女性にそれを晒せば、大体は嫌悪され、猥褻物とされてしまいます。
ところが男の方は、見たくてしょうがない。見せてくれるなら、歓んでじっくり見させてもらいます。
男性を性的に興奮させるためには、勃起を促すことがまず第一でしょう。これは、男性の気持ちの中に性的な興奮を引き起こすと、自動的に勃起してくる場合と、ある程度指先などで刺激を与えると勃起してくる場合がありますが、いずれにせよその気にさせることが第一です。たとえばAVを見るとか、プロ作家のSM小説を読むとかは、男性にとっては最後の射精、もちろんオナニーですが、を求めてしている行為になるわけです。
そう言う意味では、<淑やかな彩>は、それ自体、素晴らしい小説で、大人のファンタジーとしては充分読み応えのあるものだし、どこに出しても耐えうるものだと思っています。
が、全ての男性にとって性的な刺激を与えいるかというと、そうは限らないかもしれないですね。


祥子:率直なご意見ありがとうございます。そうですね、女性によっても違うかもしれませんが例えば男性自身のお写真を並べられてそれで性感が刺激されるかと言われれば、わたくしはそうではないですね。
同じ様に、女性の局部のお写真も理解できないものの一つです。女性からすれば「そこだけ見てもわたくしだって判らないじゃない」と思いますが、男性は欲しがりますよね。なぜか(笑)。
そのお気持ちが今少しわかったような気がします。

masterblue様には<シフォンな手触り>という素敵なストーリーを書いていただきましたね。もう一人のわたくしを主役にして。<シフォンな手触り>の祥子さんと<淑やかな彩>の祥子の違いはどんなところを意識して書かれましたか?

masterblue:シフォンの祥子との書き分けは全く考えていませんでした。単に名と表面的なプロフィールを借りただけです。シフォンは、祥子さんと私の掛け合いの中で生まれたストーリーだったのですが、「日々の妄想を形にして」とは違った小説を書けないものかと思って、習作的に、色々なスタイルで書いてみたものです。
とくに短編という制約の中で、起承転結のしっかりした形で、設定した世界を描き切れるか・・・どうだったでしょうね。<淑やかな彩>はフィクションですと、断り書きがあるように、あくまでも創作であると思っています。

これは、初めて告白するのですが、<淑やかな彩>を読みながら、いつもその裏に加納祥子という作者を意識していました。


祥子:ん?どういうことでしょうか。

masterblue:私も書いている者の一人として、どうしても作り手、あるいは作り方に目が行ってしまうのですね。
小説のようなものを書いていると、三種類に自分を感じます。ただ、私の場合は三人称で書きますので、二種類になりますが。
祥子さんの場合は、<淑やかな彩>のヒロインである祥子さん、書いているペンネームの加納祥子さん、そして実際に書かれている生身の女性。
 
突然話が変わり、また例によって少々回りくどく長くなりますが、お許しください。
若いころ、文楽に夢中になっていた時期があります。ご存知だと思いますが、文楽は人形、浄瑠璃そして三味線で成り立ちますが、ここでは、人形について少し話をさせてください。
私の大好きな人形遣いに「吉田蓑助」という方がいます。当時は四十台に入ったかどうかの若手ですが、立派な主遣いでした。その方が使った、「お夏狂乱」の、お夏が梯子の上から振り返る場面が今でも目に焼き付いています。それほどに強烈な印象を与える所作でした。
舞台で演じているのは、頭と衣装だけの人形、使っているのは主遣いを中心とした三人の人形遣いです。しかし、そこで生きているのは、人形遣いではなく、人形です。
そして、蓑助自体、舞台が終われば、また別の顔を持つただのおじさんです。
文楽の話を持ち出したのは、人形遣いと人形が一体となり、人形遣いが人形に乗り移ったような感じを受けるからです。
それと同じように、加納祥子と言う作者が、あえて同名にした<淑やかな彩>の「祥子」に乗り移っているかのように感じます。
当然のことながら、私小説だなんて思っていません。告白だとも思っていません。舞台の上の蓑助のように、小説という舞台に乗って加納祥子が「祥子」に演技させているものだと思っています。
<淑やかな彩>の中で、一番惹かれるのはやはり「祥子」です。<淑やかな彩>の中で生き生きとして、女のサガを、業を晒し出しています。
しかし、その「祥子」を<淑やかな彩>の中で操っているのは、作者である祥子さんです。 
だから私は作者の加納祥子さんに惹かれているのでしょうね。


祥子:恐れ入ります。なんと申しましょうか・・・まるで恋文のような大胆な告白をいただいてしまいました。
お気に入りのキャラクターは当然・・・

masterblue:私にとっては、登場人物の誰に魅力を感じるか、どの場面がよかったかと言うことは全く問題ではなく、<淑やかな彩>のシリーズ全てが魅力的でした。その結果、キャラクターをあげれば祥子さんになってしまうのです。
まるでラブレターのようになってしまいましたが、確かに<淑やかな彩>の祥子さんに恋しているのかもしれませんね。
<淑やかな彩>の「祥子」か、作者の祥子さんか・・・
前にも引き合いに出した文楽人形、これと全く同じですね。加納祥子という作家が操る<淑やかな彩>の祥子、どちらがどちらとは言えないほど、巧みに作家がヒロインを操り、命を与え、官能の悦びを与え、ともに愉悦に浸っている、もう溺れていると言ってもいいでしょう。
<淑やかな彩>の祥子は生きていますね。作家の加納祥子さんは、全く見えなくなっているようです。ブログでのコメントでも、<淑やかな川柳>でも、そこで話している相手は、作中の祥子であり、同時に作者の祥子さんでもあったと、今になってつくづく思っています。

 
祥子:ありがとうございます。それでは<淑やかな彩>がいいと思うところはどこですか?

masterblue:全体を貫く明るさでしょうか。
物語を書かれた祥子さんは、意外と思われるかもしれませんが、<淑やかな彩>の祥子は、何人もの男性との性関係をあっけらかんと楽しんでいます。
男性側から見ると、まるで天使のよう。
誰か一人に惹かれて、他の男性との間の関係で苦悶することはなかったようです。ただ、最後の方で、運転手さんに心を寄せていきつつありましたね。
そして、前にも書いたけど、大人向けのファンタジックな所。
<淑やかな彩>の祥子もそれを取り巻く男性群も、極端なばかりの理想的さ。そんなところが、<淑やかな彩>のサイトを賑やかにし、私などが遊ばせて頂いた理由かもしれませんね。


祥子:最後になりますが、これから読んでみたいキャラとかお話とか・・・おありになりましたら教えてください。

masterblue:中断してしまった後、歳月が流れて、そして<淑やかな彩>の頃を思い起こし、祥子の回想と、その時点の祥子とを綾を成すように重ね合わせて、書いていただければと思います。
もちろん、そこには、また歳を重ねた女性の、さらに深まる性への情念を込めて。


祥子:ありがとうございます。まだ、先の話になるのですが電子書籍では未完の「Snow White」をお届けした後、ある物語を経て、いまショートショートでお届けしている皆様方とのストーリーを再開する予定でいます。そこへたどり着くまで、出版が続きますよう祈ってくださいませ。

本当に今日はありがとうございました。

masterblue:ありがとう。あっ、せっかくの珈琲が冷めてしまいましたね。おかわりしませんか

祥子:はい♪

梅雨の季節に

「桔梗って秋の七草だとおもったが」
隣に立つ大柄な男性は不思議そうに首をかしげる

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「そうですよね わたくしもそう思って何度も空振りをしました」
秋はともかく、夏の蓮のころにはまだ綺麗に違いない
そう思って刺すような日差しの中
照り返しに目眩をおぼえながら妙心寺にうかがったこともあった
二ヶ月近く早いこの時期
桔梗の紫は瑞々しく美しい

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「意外と、そんな風に勝手に思い込んでいることが多いのかもな」
昨夜、珍しくわたくしを祇園のお茶屋に伴った
石塚さんがぽつりとつぶやく
彼の贔屓の芸妓さんのお召し物も紗の桔梗柄だった

「お兄はんが女づれとはめずらしおすな」
笑い声とからかう口調だったけれど
彼女の眼は真剣に見えた

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「ふふふ 宜しくおねがいします」
お座敷でその挑発に乗るような野暮はなし
お店だしをしたばかりだという舞妓さんに
お酌をしていただきながら楽しいひとときを過ごした

白砂が流水の様に配されたこの庭は
かつて紫式部が源氏物語を書いた館だという
光源氏のようにあでやかな女性に囲まれた石塚さんは
それなのにちょっと居心地が悪そうに見えた

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「祥子さんと二人きりの方が何倍もいいな」
「罰当たりなこと言わはったらあきまへんえ」
付け焼き刃の京言葉にどきっとしているのがわかる

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祇園のあと、まっすぐに戻った町家の奥の間で
ふたりきりの時間を石塚さんのおもうがまま過ごしたせいで
腰もお胸も重くだるい
「あんなにしはったのに・・・いけず」
どなたもいらっしゃらないことを確認して
わたくしの腰をきつく掴む

今夜もきっと 眠らせて もらえない