蛍火 3
ほとんどのテーブルが、向かい合ってお食事をするセッティングになっていました。その中でこの席だけが、二人が夕暮れの庭を楽しめる様に隣り合って座るようになっていたのです。田口さんはわたくしの左手にお座りになっていました。
ふたりの周囲の席には他のお客様はいらっしゃいませんでした。月曜日というウィーク・デーの始まりの日だということも、ディナーが始まったばかりの少し早いお時間のせいもあるのでしょう。
「よく憶えてらっしゃいますね。」
半年も前の夜のことを口にされた田口さんに、少し驚いていました。
「今日はきっちり襟元まで隠してらっしゃいますが、あの時、祥子さんの白い背中を見た時は心臓が止まるかと思いましたよ。」
あの夜・・・アメリカンスリーブの、肩から背中・・・そして仄かに膨らみのわかるバストサイドまでがあらわにされたドレスを纏っておりました。今日のように・・・髪もアップにして。
「ふふふ お上手ですこと。」
わたくしは前菜のプレートを前にして、シェフの言葉を軽く躱してみたのです。
「前菜です。草生茄子と芝海老のゼリー寄せ ガスパチョソースでございます。」
サービスの男性が簡単にお料理の説明をしてくださいます。
その瞬間だけ、田口さんの顔がプロとしての表情を取り戻します。仕事への自信を感じさせる威厳に満ちた横顔がとても素敵です。
でも、今夜見せて下さる顔はそれだけではありませんでした。
サービスの男性が一礼をして去ると、1人の男性としての優しさに満ちた表情をわたくしに対して向けてくださるのです。
「いただきましょうか。」
田口さんはカトラリーを手になさいます。
「初夏らしい爽やかなお皿ですわね。」
茄子の歯触りと芝海老の美しい色合いと、ガスパチョの爽快な香りを活かしたソースの仕上がりが、シェフの確かな腕前を感じさせます。
「先ほどのサービスの男性はここのチーフなんです。私のことを知っていますから、きっと後でシェフが挨拶にきますよ。」
「お帰りになったはずの先輩がどうして、って?」
そう・・・あそこでお逢いしなければ、もう20分も前には二人とも帰路についていたはずなのですから。
「ははは、その言葉を今頃キッチンで言ってる頃でしょう。」
田口さんは目の前のシャンパンのグラスに手を伸ばされました。このお料理になら、まだワインよりはマムのすっきりとしたお味が似合います。
わたくしも、お食事というには少し早いペースでお酒を頂戴しておりました。
一皿目が終わる頃、田口さんがぽつりとおっしゃいました。
「逢わせたくないな、祥子さんには。」
「わたくしがご一緒なのはご迷惑でしたか?」
プライベートとはいえ、お仕事関係の後輩にあたるのです。
一度きりお店にうかがっただけのわたくしが、こんな風に親しげにしているのを知られるのはご都合が悪いのかもしれません。
そういえば、田口さんにご家庭があるのかも・・・わたくしはこの方個人的な事情を何も知りませんでした。
「こちらをご用意させていただきました。」
最初のお皿が下げられたところで、先ほどのサービスの男性が赤ワインのボトルを持っていらしたのです。
「いえいえ、迷惑なんかじゃないです。」
用意された赤ワインはオーストラリアのものだそうです。鮮やかにテイスティングをなさると、心配げなわたくしに顔の前で指を振って見せるのです。
「祥子さんは、彼の好みにぴったりだからですよ。祥子さんに逢わせたら、きっと後がうるさくて仕方ないにちがいない。」
あの年末のテーブルで田口さんに対して石塚さんがおっしゃったような言葉を、今度はこの方がおっしゃいます。
「もう、そんなこと。田口さんの後輩さんなのだから、お若いのでしょう。わたくしなんて、眼中にはないと思いますわ。」
こんなレストランのチーフシェフなのです。30代の後半くらいでしょう。
「彼は34だって言ってたかな。いやぁ、この世界は実績なので年齢には疎くて。ははは。」
「いいですわね、腕の世界。」
「その分厳しいですけれどね。」 目の前に田口さんが上げたグラスの中には、ルビー色に光るワインが揺れていました。
「今夜の祥子さんの姿はあの時ほどは刺激的じゃないけれど、首元まできっちり覆った姿も却って想像を掻き立てられるんです。」
蛍火 2
「なかなかシェフのところにお伺い出来なくて申し訳ございません。」またぜひお越し下さい、とあの夜に言われながらもう半年以上が過ぎていたのです。
「ははは、ここでシェフでもないでしょう。田口です。祥子様はもうお忘れになりましたか?」
明るい・お腹の底から出てくるような笑い声も、あの時と同じでした。
「ごめんなさい、田口さん。お名前を忘れていたわけではありませんわ。それでしたらわたくしのことも、今日はあなたのお店のお客様でもないのですから<様>は抜きでお願いします。」
「そうでした。とはいえ、祥子、と呼び捨てにしたら美貴様達に怒られてしまいそうですから、今日は祥子さんと呼ばせていただきます。」
「ふふふ」
この方はそんなことまで憶えていてくださったようです。
たった一度お逢いした方。でも忘れることなんてできない方との久方の再開でした。
わたくしは、ロビーでひとり思案顔をしていた訳を、簡単にお話したのです。
「先ほど知り合いの方の還暦のお祝いが終わったところですの。こちらのお庭の蛍は有名でしょう。せっかくなら見てゆきたいと思って。田口さんはどうしてこちらに?今日はホテルの方はお休みですの?」
「ええ、月曜日なので休みなんです。このホテルのフレンチのシェフが後輩にあたるものですから、夏の繁忙期前にちょっと顔を見に来たんですよ。」
こちらのフレンチダイニングは、安定したお味と繊細なメニューで定評があります。シェフがこの方の後輩さんだとうかがえば、なるほど・・・と頷けます。
「もう御用はお済みになられたの?」
「ええ、彼とはランチの後の休憩時間にゆっくり話してきました。そろそろ帰ろうか、たまには蛍でも見ようかと思っていたところで祥子さんのことをお見かけしたんです。」
ちょうど夕方の6時すぎ。
夕暮れの気配がほんの少し忍び寄ったロビーは、真っすぐに帰宅することを躊躇わせるような空気が漂っていたのです。
「1人で蛍も味気ないと思いましたが、祥子さんが一緒なら別です。いかがですか?まず食事でもして、頃合いを見て蛍狩りでもしませんか?」
わたくしもお話をしながら同じことを考えておりました。田口さんをお誘いするのも・・・悪くない、と。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて、ご一緒させていただきます。」
軽く頭を下げるわたくしの白い首筋に、田口さんの視線が注がれていたことに・・・その時は全く気付いてはおりませんでした。
「召し上がりたいものがありますか?今日のパーティではなにを召し上がったのですか?」
レストランの並ぶ方へと田口さんはゆっくりと歩いてゆきます。
「和食でしたの。でも、ガーデン・パーティでしたからとても軽い・・・先付けをオードブルにした感じのお料理でしたの。」
「庭の中の料亭にいらしたんですね。じゃ、ぜひ後輩の仕事を祥子さんの舌で批評してやってください。」
「批評なんて、いやですわ。田口さんたら」
シェフにエスコートされて席に着いたのは、庭に面したフレンチレストランだったのです。
「料理はまかせしていただいてよろしいですか?」
「ええ、好き嫌いはありませんから。」
「それでは、シーズン・ディナーを。それとおすすめの軽めの赤ワインをおねがいします。乾杯はシャンパンがいいな。最初に持ってきて下さい。」
てきぱきと、田口さんがオーダーをなさいます。
きっとつい先刻まで、後輩だというこのレストランのチーフシェフとコースのお料理のこともお話をされていたのでしょう。
どんなメニューか知らずに待つことも、お食事という場では楽しみが増すというものです。
「シャンパンでございます。」
わたくしたちの前に2つの細かい泡が立ち上るフルートグラスが用意されました。
「では、偶然の再会に乾杯。」「乾杯♪」
軽く目線に上げたグラス越しに視線を交わすと、はじける液体を喉へと流し込んだのです。
「おいしいわ。暑い時期にはこの爽快感がすてきね。」
口中にひろがる葡萄の香りはマムのように思えました。
「祥子さんは、黒が似合いますね。肌が白いせいかな。あの夜も黒でしたね。」
田口さんはまるでシャンパンの味を評するように・・・わたくしの今日の装いを何気なく口にされたのです。
贅沢に空間のとられたディナーテーブルの中でも、二人が通されたのは二方をガラス面に囲まれたお席でした。
蛍火 1
はっきりしない梅雨空の月曜日。わたくしは、蛍で有名な都内のホテルに来ていました。
とはいっても、いまは午後4時。夏至を過ぎたばかりのこの時期、まだ蛍火を楽しむことなんて出来ないほど明るい時間です。
今日は、先輩デザイナーの『還暦を祝う会』です。60歳になられたばかりの男性デザイナーは、細身でお年を感じさせない矍鑠とした方でした。数年前に再婚したばかりのわたくしよりも若い奥様を連れて、会場の中央テーブルで幸せそうにお酒を召し上がってらっしゃいます。
緑の起伏のある庭園が美しいこのホテルを指定されたのは、当のデザイナーだそうです。
以前にお話した時も日本3大名園のことを聞かせていただいたことがあります。
そんな庭好きのゲストに相応しく、パーティ会場は、ホテル内のレストランではなく庭園の中に設けられた料亭に設けられていたのです。
今日予定はこのパーティだけでした。
お仕事のアポイントメントがなかったわたくしは、パーティに相応しい少し華やかな装いでこの場に来ておりました。
緑が濃くなったお庭でのパーティとうかがって、黒の肘までの半袖のトップス、黒のレースのたっぷりとしたフレアスカートを選びました。
アクセサリーはピンクパールのロングネックレスでした。
ランジェリーは、ほんの少しだけピンクがかった白のサテンとレースのセットにいたしました。フルカップのブラとTバック。それに揃いのガーターベルトでナチュラルのストッキングを吊りました。
サイドがカットされたハイヒールのパンプス。
背の中程まであるストレートロングの髪を、パールのかんざしでアップにまとめたのです。
同じ業界の友人関係とはいえ、今日の招待客の方達はみなさんわたくしよりもキャリアの長い先輩の方達でした。
一通りご挨拶をし、主賓にお祝いを言いにうかがうころにはそろそろお開きの時間になっておりました。
久しぶりにお逢いしたデザイナーの方によると、今日の主賓はいま少しお風邪を召されているそうです。
「だから、二次会って言われる事はないと思うわ。」というその方の言葉どおり、会は予定時間通りに終わったのです。
幹事の方の〆のご挨拶をうかがって・・・わたくしたちは主賓を見送りに、ホテルのロビーへと向かいました。
久しぶりのお酒で上機嫌の男性デザイナーは、見送りにきたわたくしたちに手を振ると、奥様とタクシーでお帰りになりました。
今日の参加者の方達もそれを汐に三々五々解散なさいます。
わたくしも・・・どうしようかと、暮れはじめたお庭を振り返った時でした。
「祥子様。美貴様とご一緒にいらした祥子様ですよね。」
大柄な髭を蓄えた男性に名前を呼ばれたのです。
そこにいらしたのは、美貴さんと山崎さん・石塚さんの3人で年末の夜を過ごした、タワーホテルのメインダイニングのグランシェフでした。
とても見事なジビエの腕前と・・・それから・・ご自分の職場で・・メインダイニングの開かれた窓際で・・・わたくしを辱めることのできるS性をお持ちの方だったのです。
「お久しぶりですね。今日はこちらに御用だったのですか?」
わたくしの脳裏に、ふいにあの夜のことが思い浮かびました。
羞恥にまみれたあの夜の記憶にほんの少し頬を染めてしまったことを、気付かれないかと気が気ではありませんでした。
「ああ よかったです。憶えていてくださったんですね。」
夏らしいコットンのベージュのスーツが堂々とした体躯のシェフには良くお似合いでした。
白いシャツの胸元は第二釦まですっきりと開けられています。あの時も・・・コックコート姿と同じくらいスーツ姿もダンディだったことを・・・思い出しました。
祥子の日常/朝 2
サーバーにペーパーフィルターをセットして挽きたての豆をふんわりと入れて、細口のケトルからゆっくりとお湯を注いでキリマンジャロを淹れてゆきます。ふふふ、今朝は上手に出来たようです。
それでもいつもお邪魔する珈琲専門店の方達が創る味にはとうてい敵いませんけれど。
夏の間は、暖めたフロレンティーンターコイズのマグカップで朝の珈琲は頂きます。秋から春は、大好きな陶あん窯のマグカップで。サイドボードには、わたくし用の4つのマグが普段はお行儀よく並んでいます。
1杯目の珈琲は、この姿のままでいつものソファーでいただきます。
今朝はメゾンカイザーのクロワッサンとアメリカンチェリーが一緒です。
フルーツだけのこともありますし、珈琲だけということもあります。
ニュースは新聞に軽く眼を通すのと、バスルームのラジオから流れる耳からの情報が中心です。
テレビは、朝の情報バラエティをたまに見るくらいですね。
それよりも、窓の外を流れる雲や、開きはじめた芙蓉の花を見つめている事の方が多いかもしれません。
簡単な朝食を済ませるとテーブルの上を片付けて、着替えにまいります。
よほど突発的なものでもない限り、その日の予定は前日にはフィックスされています。
どこに行って、どなたに逢うか。お逢いする方に好感を持っていただく事は、ビジネス上でも重要なことです。ですから、その日の装いは、いきおいお逢いする方の好みに合わせることになります。
フェミニンなスタイルがお好きな方もいらっしゃれば、キャリアテイストのスーツスタイルがお好きな方もおいでになります。ただ、どの方も共通しているのは<スカートスタイル>が一番顧客好感度が高いということでしょうね。
今日は、一日クライアントのオフィスでデスクワークになるものですからイッセイ・ミヤケのベージュのプリーツプリーズのノースリーブワンピースに、ショートカーディガンを組み合わせました。
足許はベージュのバックストラップパンプスです。
ふふふ、今日もランジェリーまでお話しなくてはなりませんの?もう。
ベージュのワンピースはどうしてもランジェリーが透けてしまいますから、ライトベージュのロングスリップに、同じサテン素材のブラとハイレグのパンティ。それにやはりサテンで作られたシンプルなガーターベルトを選びました。今日のストッキングはちょっとだけ遊び心をプラスして細かなベージュのメッシュにしましたの。
いかがですか?
バスルームへ戻って、鏡の前で髪型を整えます。
この暑さだと、アップスタイルのほうが爽やかかもしれませんね。
髪専用の美容液を付け、手早くラフなシニヨンにまとめます。今日はパピヨンのクリップ1つで結い上げました。
一度手を洗って、夏用の化粧水と美容液、そして日焼け止めを塗るとわたくしの朝のお手入れは終了です。
朝起きてから、ここまでは眼鏡をかけておりません。
一人暮らしの自宅の中ですもの、あまり見えてないわたくしでもなんとか過ごせるものです。
昨晩、帰宅して軽くシャワーを浴びた時に外した眼鏡を掛けると、お仕事モードがONになります。
今日のお洋服に合わせたベージュのバッグを手にソファーに戻って、2杯目の珈琲を頂きながらお出かけ前の最後のメールをチェックします。
今日のスケジュールを変えてしまうような連絡はなさそうです。
PCをシャットダウンしてPCカードを抜き、バッグに仕舞います。
マグカップをキッチンで洗って片付けると、そろそろお出かけの時間です。
玄関でルームシューズからパンプスに履き替えます。
それでは・・・いってまいります♪
祥子の日常/朝 1
おはようございます。少し季節外れでしたが、爛漫と咲き乱れる桜の下での淫戯<桜陰 hanakaga>いかがでしたでしょうか。
皆様のアンケートで、先に<ジューン・ブライド>をお届けした関係でお届けが遅れてしまいましたが、あのなんとも言えない幽玄の時を思い起こしていただければ幸いです。
さて、次作<蛍火>をお届けする前に、肖像 Profile of Syouko をお送りいたします。
こちらでは殿方のどなたかとお逢いしている時のことばかりお話しておりますので、男性とお逢いしない時のわたくしのことを少しお届けしようと思いました。
本当は簡単に一日を・・・と思ったのですが、ふふふ 簡単にはゆかなくて。あっ、もちろんわたくし1人ですから、セクシャルなお話はありませんわ。ふふふ。
本日2話に分けて<朝>のお話をお届けしようと思います。
<ビジネスタイム>と<夜>のお話はまた改めて・・・。
それでは、本当は秘密のわたくしの朝の一時をご一緒にお過ごしください。
桜陰 25
「子宮に種付けされたいんだな!!逝くぞ!祥子」高梨さんはリードでわたくしの上体を引き上げ、両肩のストラップを引き下げたのです。
「ぁぁぁ・・ごしゅじん・・さまぁぁ・・・くださぁぁぃぃ・・」
快感と羞恥に縋る様に柵を掴んでいたわたくしの左右の手を引きはがすと、高梨さんは後向きに引くのです。
わたくしの身体は高梨さんの塊の一点だけに支えられ、その一点に酷く責め立てられていたのです。
「どうだ!!祥子!!いいか!!」
露になった乳房は高梨さんの突きに合わせてベランダの柵に触れんばかりに前後に激しく揺れ・・・猛々しい塊だけに身を任せたわたくしは・・・声をだせないほどの快感に侵されていたのです。
「見せつけてやれ。祥子の逝き顔を、淫乱なその身体を!」
「・・い・・くぅぅ・・・いきますぅぅぅ」
「逝くんだ!!祥子!」
「・・・いっくっぅぅぅぅ・・」
蜜壷に高梨さんを飲み込んだまま、限界まで反り返らせられた上体の淫らな乳房を握りつぶされながら・・・わたくしは真っ白な精液を子宮に直接・・・注ぎ込まれたのです。
「よかったよ、祥子。」
抱きしめた腕の力を弱めると、高梨さんはわたくしの中からまだ硬度を失わない塊を引き出して・・耳元にそう囁いたのです。
「シャワーを浴びておいで、それですこし休むと良い。」
そう言って、桜色の首輪も外してくださったのです。
「明日は休みだろう。泊まって行っても構わないからね。」
高梨さんに促されて・・・けだるい仕草でスリップの肩ひもを直すと、わたくしはよろめく足取りで室内に戻ったのです。
バスルームにはバスローブとスリッパが用意されておりました。
スリップを脱ぎ落とし・・・ガーターベルトの留め具を外そうと脚下を見たのです。
ストッキングの内側は・・・足首ちかくまで・・・したたった蜜ではしたなく色を変えていたのです。
シャワーを浴びて、用意されていたバスローブを纏うと、彼の寝室に向かいました。
あのときと同じシンプルにオフホワイトでまとめられたベッドの上には、今日高梨さんがランジェリーショップで買ってくださった、桜色のナイトウェアのセットが並べられていました。
そして、窓辺近くの床に置かれた李朝のものらしい大壷には、咲き誇る桜の枝が天井にとどかんばかりに活けられていたのです。
桜を見ながら・・・そう仰った高梨さんのなによりの心づくしを感じて、素肌の上にナイトウェアを纏うとリビングでタバコをくゆらせてらっしゃる高梨さんにお声を掛けたのです。
「こちらにいらして」と。
祥子からの手紙ー11
いまは、いつもの珈琲専門店で
閉店間際にお願いしてキリマンジャロを入れていただいたところです。
あのあと、高梨さんはナイトウェア姿のわたくしをベッドルームの桜の前に立たせると「祥子は薔薇かと思っていたが、桜も似合うな。」と満足そうにおっしゃいました。
そして、繊細なガウンだけを脱がせてくださると
ご自身はネルのシャツとチノパンのままで
わたくしを抱きしめてつかの間の眠りに落ちていったのです。
2時間後、わたくしが目覚めた時にはもう外は暗くなっておりました。
ぐっすりと熟睡されている高梨さんをお起こしするのはしのびなくて
わたくしは身繕いをすませると、
お手紙を書いて16階の高梨さんのお部屋を後にしてきたのです。
今回は首輪も鞭も・・・
部屋を後にする時にはわたくしの身体には
痕跡は何一つ残されていませんでした。
それをうれしいと思う気持ちと、少し寂しいと思うわたくし・・・
どちらが本当のわたくしなのでしょうか。
珈琲をいただいたら、アンティークローズの飾られた部屋に戻ります。
高梨さんの部屋に置いて来た
桜色のナイティの肌触りが恋しくなったとき
今度はわたくしからメールをしてしまうかもしれません。
桜陰 24
「祥子、このままお散歩だ。僕のものを抜いたら、今度こそ、そのスリップを脱がせて気を失うほど鞭で打ち据えてやる。」ベランダでガーターストッキングにバックストラップパンプス・・・それに桜色の首輪だけの姿にされてしまうなんて。
「さぁ こっちだ。」
高梨さんはリードと腰の動きで、淫楽に蕩けかけたわたくしを誘導するのです。
「はぁぁ・・あん」
骨盤の奥深くまでささった塊を閉め出さないように・・・腰を密着させたままで・・テーブルにすがって2・3歩移動します。
「ああぁ・・ゃあ・・」
歩を進める度にわたくしの締め付ける場所は捩れ・・・高梨さんの塊がいままで味わったこともない蜜壷の部位を刺激するのです。わたくしは突然の快感に思わず立ち止まってしまったのです。
「休んでいいとはいってないぞ。」
高梨さんは動きを止めると・・ずん・・と強く突き上げます。
「ああっ・・・いぃぃ・・」
わたくしは、はしたない声を上げてしまいました。
「ほら、こんどは柵ぞいに歩くぞ。」
前屈みなわたくしの上体を・・ガーデンテーブルからガーデンチェアの背をとおって・・・ベランダの柵のほうへと・・誘導するのです。
「あぁぁ・・・だめ・・いぃぃ・・・」
「祥子 そんなに締め付けたら抜けるぞ。もっと奥に飲み込むんだ。」
ぐぃ・・・まるで子宮口に捩じ込まんばかりに・・・あぁ・・塊がまた・・いちだんと・・おおきく・・・。
「・んぁあ・・ぁぁぁぁ・・だめ・・・いっちゃうぅ・・」
「だめだ、祥子。ベランダの真ん中でいき顔を展望台の男共に晒しながらしか逝かせないからな。その前に勝手に逝ったら、今度こそピアスをしてやる。」
思わぬ言葉に・・・わたくしの蜜壷はまたきゅぅぅぅっと・・締め付けを強めたのです。
「あぁぁ・・ゆる・・し・・てぇぇ」
言葉責めの間にも、一歩・また一歩とベランダの中央に柵づたいに歩くことを強要します。
高梨さんは言葉とはうらはらに、わたくしの中から抜け落ちない様に細心の注意を払ってくださっているようでした。鞭打たれひりつく白い腰に、ざらざらと茂みを擦り付けるほどに密着させた腰で、わたくしの歩みを誘導していたのです。
中からの快感・・・外の視姦・・・耳元に送り込まれるサディスティックな責め語。
勝手に上り詰めるなといわれても・・わたくしは・・一歩事に確実に追い込まれていました。
「よし、ここでいい。」
喘ぎに肩を振るわせるわたくしを、ベランダの柵の中央に・・・後から貫いたまま立たせたのです。
「ほら、あそこに首輪をつけてあげた桜の庭園がみえるだろ。」
まるで普通に景色を眺めているように耳元に囁くのです。
高梨さんはわたくしを柵にまっすぐに向かせ・・・クライマックスに向けて一段と強く・早い抽送をはじめたのです。
「あっ・・ああ・あぁぁ・・だ・・め・・・」
わたくしはもう・・・眼下の景色など眼にはいっていなませんでした。
「どうした、祥子。勝手に逝くのはゆるさないぞ。」
高梨さんは、わたくしの胎内の反応に・・・もう達するのは・・時間の問題であることくらいわかってらっしゃるはずなのです。
なのに・・・後から突き上げる腰の動きを一段と早めるのです。
「ああ・・あはぁ・・・」
「ちゃんと許しを乞うんだ。牝猫のように勝手に自分だけいくんじゃない。」
わたくしはもやは限界でした。
白く蕩け爛れてゆく淫楽に膝を崩して・・・堕ちてゆきたかったのです。
「ごしゅじん・・さまぁぁ・・・しょうこ・・を・いか・・せてく・・だぁさぁぁいぃぃ」
「それだけか、祥子。」
「ごしゅじ・・んっさぁまあのぉぉせいえき・・を・・しょう・・こに・・くださ・・いぃぃぃ」
「どこにほしいんんだ、祥子」
「しょうこ・・のぉ・・・なぁ・・かをぉまっし・・ろに・・してぇぇっっっっっ」
「どこだ、どこに欲しい、祥子。ちゃんと言うんだ。」
「あぁぁ・・・いゃぁぁ・・・」
「言えないなら、スリップを取り上げてベランダに夜まで放置だな。」
「やぁぁぁ・・・しょうこ・・の・・しきゅぅぅに・・ごしゅじんさぁまのぉ・・・ぉせぃぇきぃぃ・・くだ・・さぁぁ・・いい」
桜陰 23
「リードをテーブルの脚に留めなくても、祥子はもうできるね。」「はい・・・ごしゅじんさま」
わたくしは今度は素直に、テーブルを清めていたときと同じ姿勢をもう一度取りました。
「そうだ。もっと脚を広げるんだ。そう」
その言葉も終わらぬうちに・・・先ほどまで唇に含んでいた塊が花びらに押し当てられて・・・ぐぃと送り込まれたのです。
「あぁっ・・・」
もう声を抑えることなどできません。思わず漏れた声に・・・唇を噛み締めるだけしかできませんでした。
「祥子の中はまるで温泉だね。いくらでも熱い愛液が湧きだす。」
ぐちゅぅぅ・・・ ご自分の言葉を証明するように奥まで押しこんだ塊を・・・抜け出す寸前まで引き抜いてゆくのです。
高梨さんの大きく張り出したかりに集められたわたくしの蜜が、たらら・・と太ももに向かって流れ出してゆきます。
「はぁぁ・・ゆるし・・て・・」
「いつから濡らしてる、祥子。何時間濡らし続けたら満足するんだ?」
高梨さんも、もう限界だったのでしょうか。いつもと変わらぬ抽送がはじまりました。
「あん・・わかり・・ま・・せぇぇ・・んん」
何度問われても・・・わたくしにはどうしようもないのです。
初めての挿入なのに・・花びらの奥はまるでもう何回も抽送を繰り返された後のように、はしたない収縮を示しておりました。
「僕のいない間、誰にこの身体を可愛がってもらってたんだ。前よりも数段良くなっているよ、祥子。」
高梨さんは腰を使いながら・・・リードを・・・わたくしが顔をあげざるを得ないほどに大きく引かれるのです。
「やぁぁ・・・ぁぁあああ・・」
「僕に連絡もしてこないで、身体をこんなに熟れさせるまで何人の男に抱かれた。」
「ちが・・ぁ・・ぅ・ぅっぁああ」
年末にお別れしたあと・・・4人の方と雪の別荘で過ごし・・そして・・・
「淫乱牝猫は逢う度ごとにどんどん身体が良くなる。そんなに数の子天井を擦り付けてくるんじゃない。」
「はぁう・・ぅぅ・・ぁあぁぁぁ」
責めの声はベッドの上と変わらないほどになっていました。
隣室に誰か居れば・・・わたくしの身体が高梨さんの塊を締め付ける様子は、全て知られてしまったことでしょう。
いつ彼の声とわたくしのはしたない喘ぎ声に誘われて、隣室の方がベランダに出ていらっしゃるかもしれませんでした。
高梨さんに突かれる度に揺れるGカップの乳房の動きを・・・抜き差しする度に淫らな水音を立てる腰を、間近に見られてしまうかもしれないのです。
「あそこで食いつく様に望遠鏡をみている男達も、牝猫祥子の身体を味わいたくて堪らなくなっているな。」
「あぁぁ・・だ・・っめぇぇ・・」
ベランダの正面にある美術館のビルからの望遠鏡ごしの視線・・・いつ現れるかもしれない隣室の視線・・。
高梨さんの塊から送り込まれる淫楽だけでなく、いくつもの視線の可能性がわたくしの蜜壷の奥を・・中ほどを・・・きゅぅぅと収縮させるのです。
「こんな蜜壷 うっ」
腰の動きを一旦・・・高梨さんは止めたのです。そして改めて一度緩めたリードを引きます。
「いいさ。祥子のこのフェロモンを嗅がされて立たないなんぞ男じゃない。鞭の悲鳴さえ淫心を疼かせるんだ。我慢できなくて、祥子を自分のものにしたがる男がいても不思議はない。」
ずぅんっ・・・骨盤に・子宮に響くほどに強く一度だけ塊を打ち付けるのです。
「あぅっ・・」
「美味しくなった祥子を味わうのは僕だからな。ただし、どんな男にも発情する牝猫には躾が必要だね。」
そんなんじゃありません・・・だれにでも・・・発情なんて・・・ひどい。
「あ・・はぁん・・だめ・・あぁぁ・・ゆるして・・」
動きを止めたと言っても・・・奥まで押し入れたままで腰を回す様にしてわたくしが一番感じやすい最奥をぐりぐりと・・・捏ねることは止めてはくださらないのです。
桜陰 22
その鞭は、以前長谷川さんがわたくしに使われたものとは全く違うものでした。大きさは・・・どちらかといえば小振りなものでした。
象牙のハンドルにオフホワイトの良く鞣された細身の革が10本ほど。瀟酒とも禍々しいとも見える細身のハンドルは、高梨さんの手に収まってしまいそうなほどに細く・小さく、ねじくれた複雑な彫刻が施されておりました。
「牝猫・祥子のしっぽにぴったりだと思ってね。ピガールで買ったものだよ。」
自らの身体を打ちのめしたものに眼を奪われているわたくしの側に立つと、さきほどまでしたたかに打ち据えたヒップの丸みを、改めてスリップの裾をたくしあげ・・・揉みしだくのです。
「・・・や・・っ・・」
高梨さんの中指が、まだこの方には犯された事の無い姫菊に触れたことで、そのお道具の持つ意味がはじめてわかったのです。
使われている素材を見ても・・・細工をとっても決して安物ではないのでしょう。なのにそれを・・・。
「ソファーに座る僕の足元に、戯れつく牝猫に今度は付けてあげよう。」
わたくしの花びらに新たに湧きだした潤みをのせて、中指が姫菊を襲います。
「・・っだめぇ・・・・」
身を捩らせるわたくしを、高梨さんの欲望を滲ませた瞳が見つめるのです。この方はこの上・・・まだ・・・。
「ふふっ 鞭はどうかと思ったが、祥子の身体は気に入ったようだね。こんなに濡らして、乳首も立てて。もっと打ってあげた方がよかったかな。」
「おねがい・・・ゆるして・・・」
「ああ 今日はもうしないよ。さぁ、僕のを舐めるんだ」
鞭に対するわたくしの反応にご満足なさったように、長身の高梨さんはわたくしの頭に手をやると、ご自分の腰の位置にまでリードとともに引き下げていったのです。
チィィィッ・・・・ わたくしは自らの手でファスナーを開け、ボクサーパンツの前から既に昂りを示している高梨さんの塊を引き出しました。
くちゅぷ・・・ちゅぱぁぁ・・ぺちょぉ・・・ わたくしは先ほどのテーブルとは比べ物にならない熱心さで、高梨さんのより猛々しくなってゆく塊に舌を這わせたのです。
「ううむぅ あいかわらず、うまいな。祥子は。」
肌を撫でる風は、春の夕刻近くなり次第に冷たくなってゆきます。なのに、高梨さんのものは・・・熱を・・脈動を・・増してゆくのです。
はじめてお逢いしたときにさせて頂いたような丁寧な口戯は、いまの・・・ベランダでいずこからとも知れぬ視線に晒されているわたくしにはできませんでした。
高梨さんにはしたないランジェリー姿でベランダに連れ出されただけでは終わりませんでした。
リードで首輪をつながれ・・・自慰での絶頂を2度も強要され、そのうえ高くむき出しにした白い腰を突き出したまま鞭打たれる・・・という淫媚極まりないショーを、16階のベランダで演じ続けさせられた後なのです。
羞恥のブレーカーはヒートアップして、意識を飛ばそうとするのに・・・高梨さんはまだ許してはくださらないのです。
わたくしの身体は、冷たい風の中でも白い肌を桜色に染め、あらぬ熱で火照らせつづけておりました。
ちゅく・・ぅ・・・ちゅぷ・ちゅ・・・ぷぅくぅぅ・・・ わたくしの口唇はもう一つの蜜壷と化しておりました。
口内に溜めた唾液は高梨さんが漏らされる粘液と混じり合い、細く白いしたたりとなって・・・わたくしの唇の端から・・つつっ・・・と垂れていたのです。
ぐぅぅぷぉ・・ちゅぅ・・くぷぅ・・・ 喉奥まで・・えずきかねないほど奥まで・・・熱く敏感な高梨さんの先端を飲み込み・・その場所の狭さと舌の付け根でしごき立てるのです。
時折吹く風が冷たく感じる時には・・・わたくしはしっかりと高梨さんの脚にこの身を寄せておりました。
ひくっ・・・口腔の塊がまた一段太さを増します。
「もういいよ、祥子。立ちなさい。これ以上されたら、祥子を可愛がる前に逝かされてしまいそうだ。」
苦笑ともつかぬ淫らな笑みを浮かべて・・・高梨さんはわたくしのリードを立ち上がるようにと引いたのです。
「さあ ショーのクライマックスだ。そのテーブルにもう一度手をつくんだ。」
わたくしをテーブルに向き直らせて、そう仰いました。
桜陰 21
ほんの少しの酸味と・・塩気のある・・・淫らな香りがわたくしの口腔に広がります。同じものでも・・・男性の塊で犯されたあとをお清めするのとは違いました。液体の純度が高いだけ・・・この行為は強くわたくしの心を貶めていったのです。
ちゅるぅ・・・ わたくしの舌と唇がテーブルの表面を這うのを見届けた高梨さんはリードを手にしたままで、わたくしの背後に回られたのです。
ベランダの柵側ではなく、室内へと開け放ったドア側に立たれるとわたくしのスリップをヒップの頂きが丸見えになるほどに、捲り上げられたのです。
「いゃぁ・・」
「綺麗にするまで休むんじゃない、祥子。」
その声に、わたくしは抗議の声を押さえ込まれてしまったのです。
わたくしがいま晒している姿がどれほどあの美術館のビルから淫らに見えるのか・・・と、戸惑いを隠せないまま・・・。
ちゅく・・・
「ぁん・・」
わたくしのむき出しのヒップに・・・高梨さんの手のひらではない・・感触が這っていったのです。
「止めるんじゃない。そのまま続けているんだ。」
ヒュッ・・パシィ・・・
「ひぃっ・・・」
わたくしのヒップを這っていたあの感触は・・・革の房鞭だったのです。予告もない鞭打ちの痛みに、わたくしは背を反らせ・・・軽く悲鳴を上げてしまったのです。
「止めるなと言っているのが聞こえないのか、祥子。これは先ほど5分で逝けなかった分のお仕置きだよ。祥子が僕の命令に逆らって余計に快楽を貪っていたのと同じ時間だけ、鞭の痛みを与えてあげよう。3分間だ。」
そう口にする間も、房鞭の革の感触が白くて薄いヒップのラインを撫でてゆきます。
年末に共に過ごした時には・・・鞭の類いはこの部屋にありませんでした。
もしかしたらこの鞭も・・・いまのわたくしの視界では見えませんが・・今回の海外からのお土産の一つなのかもしれません。
「ちがう・・わ」
余計に・・・貪っていたなんて・・・ひどい。
「口答えをするのか」
ヒュッ・・・パシィ・・・ 今度は予告もなく打ち下ろされました。そして、その革は肌を打ち据えたまま・・・わたくしの腰を撫で続けているのです。
「まだ綺麗になってないだろ」
ヒュッ・・パシィ・・・パシッ・・ 立て続けの打擲は、わたくしの腰の頂を桜の花びらよりも赤く染めているに違いありません。そう確信させるだけの痛みをわたくしに与えていました。
高梨さんは、また気まぐれのように革による愛撫をはじめるのです。
「ひぃ・・ぃたぁぁ・・ぃ・・」
ヒュッ・・パシィ・・・ 次の打擲は太ももでした。何度も打たれた腰と違って、新たな鋭い痛みがわたくしの身体の芯に響いたのです。
これでしたら、立て続けてリズミカルに打たれるほうが余程痛みに慣れる分よかったかもしれません。それに力が分散する房鞭とはいっても・・・1本1本の与える痛みが・・・鋭いのです。細くて・強く・しなやかな革なのでしょう。
「まだ、綺麗にできないのか、祥子。」
ヒュッ・・パシィ・パシィ・・パシッ・・・ 腰の頂きを撫でさすっていた鞭は、今度はスリップに覆われた背に打ち下ろされたのです。
「ひぃぃ・・ぃぃぃ・・・」
ほとんど・・わたくしがはしたなく濡らした蜜は、清め終わっておりました。でも、テーブルから手を離すことができませんでした。
立て続けに襲う鞭の痛みに・・ガーデンテーブルに縋る様にして耐えるしかなかったからです。
「答えはどうした、祥子」
ヒュッ・・パシッ・・パシィ・・パシッ・・・
「おわり・・まし・・たぁ・・」
ヒュッ・・パシッ・・
「ごしゅじん・・さ・まぁぁぁ・・・」
ヒュッ・・パシィ・・・
「これで3分だな。綺麗になったか、祥子」
高梨さんは左手にリードを、右手に鞭を持ったままわたくしの前に回られたのです。
「きれいになったみたいだな。自分の愛液を舐めた気分はどうだ?」
くぃ 上体をガーデンテーブルに伏せたまま、痛みに腰を落としていたわたくしの首輪のリードを引きます。
「ひぃっ・・」
ュッ・・パシ・・ 立ち上がったわたくしの乳房に一閃、手にした鞭を走らせたのです。
「腰を落としていいとは言ってないぞ。姿勢を崩したお仕置きだ。」
カタっ・・・ そう仰ると、手にされていた鞭をフォレストグリーンのガーデンテーブルに置かれたのです。
桜陰 20
「8分だね、祥子。」高梨さんはテーブルに身を預けぐったりとしているわたくしに背後から近寄ると、肩越しにスリップのストラップを元通りになおすのです。と、同時に深い声が冷酷にわたくしが逝くまでの時間を告げたのです。
「・・・は・・ぁ・・ぁぁ・」
身体からはまだ快感の余韻は引かず・・・わたくしの意識は戻り切ってはおりませんでした。
「5分の約束だろう。お仕置きをしないとな。」
まだ、スリップの下で昂ったままの左の乳首を捏ね回しながら、右手は先ほどはだけてしまったスリップの裾を治しているのです。
遠くからいまの光景だけをご覧になった方からは、わたくしのはしたない行ないを嗜める優しい恋人のように映っていることでしょう。
この耳元の言葉が届かないのですから・・・
「いやぁっ・・・」
オーガンジー越しにGカップの中央で堅くしこった先端に爪を立てられて、わたくしは高梨さんの言葉の意味を思い出したのです。
・・・お仕置き。いま、彼が嬲っている場所に付けられてしまうピアス。
「そうだ、お仕置きだ」
高梨さんの腕と手には・・恐怖に堅くなったわたくしの身体が感じられたのでしょう。
自分自身の欲情した身体の状態を言葉にすることすら拒んだわたくしが・・・誰に見られているかも解らない場所で、昼日中から自慰行為を・・・それも2度も達するまでし続けたのです。
どれだけ、怯えているのかはお解りだったはずです。
「おねがい・・ゆるして・・・」
高梨さんを振り返るわたくしの睫毛には、淫楽と恐怖に浮かんだ涙が光っておりました。
「そんなにピアスがいやなのか?祥子は」
わたくしは、こくん・・と一つ頷きました。
「ピアス以外のことなら、どんなお仕置きでも従うか?」
Gカップの乳房をいらい続ける高梨さんの左手にキスを一つすると・・・また一つ頷いたのです。
「おねがい・・・ゆるして・・・ください」
繰り返されるわたくしの哀願に、鷹揚に頷き返すと高梨さんは首輪からリードを外し柵から革の持ち手を取られたのです。
そして・・・改めて首輪の留め具にリードを繋ぐと・・・こう仰ったのです。
「祥子。まさかそのテーブルを汚したりはしてないだろうね。」
「やぁ・・っ・・・」
1人で立ったままでは居られなくて、腰を浅く預けていたガーデンテーブルの事など考えもしなかったのです。
「立ちなさい。」
リードを強く引かれ、わたくしは預けていた腰を上げざるをえませんでした。
「ああ こんなにして。」
高梨さんの声で振り返ったわたくしは・・・はしたなさに思わずガーデンテーブルから視線を反らしてしまったのです。
腰を下ろしていた場所には・・・わたくしの太ももと腰の内側のラインの形にくっきりと・・・淫らな潤みが残っていたからです。
「ゆったりと煙草と夜景を楽しむためのテーブルに、祥子のフェロモンをこんなに塗り付けて。」
顔を反らせるんじゃない・・・という代わりにリードを引くのです。
「1人になった僕を苦しめるつもりなのか?」
「ちがい・・ます・・」
「祥子、言葉遣いがなってないね。どうなんだ、そのつもりなのか?」
「いい・え・・ちがいます・・ごしゅじんさま」
わたくしはその一言で・・・また高梨さんの声の呪縛に囚われてしまったのです。この方は、いつもこうしてわたくしを理性のレベルでも・・・従わせるのです。
「そうか。仕方がない、これは自分で綺麗にするんだな。」
「・・・はい。バッグを・・取りに行かせてください。」
高梨さんの仰るとおりです。わたくしは桜のバッグの中の自分のハンカチを取りに行こうと思ったのです。
「どうしてバッグがいるんだい?」
「あの・・・わたくしのハンカチできれいに」
「何を言っているんだ。祥子がその口で舐めて綺麗にするに決まっているだろう。」
「・・・ゃぁ・・なにを・・」
わたくしが流した蜜を・・・わたくしの口唇で舐め・・拭うなんて・・・なんてことをさせるおつもりでしょう。
「祥子は僕の言う事を聞くと言ったね。さぁ、言う通りにするんだ。」
三度リードを引くとわたくしの顔を・・上半身をテーブルの上に伏せさせようといたします。
「腰を落とすんじゃない!」
テーブルの前に跪こうとしたわたくしの腰をしたたかに叩くのです。
「・・ぁぁ・・・」
高梨さんの手で後から腰を引き立てられ、両脚はバックストラップパンプスの隙間に押し入れられた彼の足で、肩幅ほどに左右に割り開かれたのです。
このベランダで最初に高梨さんに要求された姿を・・・とうとう取らせられてしまいました。それも・・・自らの手で2度も逝き果てた・・・淫らな花びらをベランダの外に向かって晒す羞恥とともに。
「さぁ、きれいにするんだ、祥子。君の白濁した愛液に濡れたテーブルをね。綺麗になるまで許さないよ。このままの、はしたない姿を向こうから覗いている男達に晒しつづけるんだな。」
両手を着いた間に、わたくしの頭を逃れないように押さえつけてそう仰るのです。
「・・・はい」 わたくしは舌を伸ばし・・・テーブルの表面を光らせている粘液を掬い取ったのです。
桜陰 19
「左手の恥ずかしい愛液を、祥子の大きなバストに塗り付けてごらん。そう、その乳首には特にたっぷりと。ふふ こんなに風が強くても祥子のフェロモンがここまで匂うぞ。」「ゃあ・・・」
高梨さんの指示にわたくしの身体は逆らう事など思いつかないとでもいうかのように・・・従順に動いてゆきます。
左手は蜂蜜でコーティングしたかのようにぬめりを纏わせて、真っ白なGカップの乳房に蜜壷から溢れ出た愛液を・・・塗りたくるのです。
その動きに右のスリップの肩紐も・・はらり・・と落ちたのです。
「ああ、そんなに大きな胸を曝け出して。見せつけたいのかい、僕以外の男たちに。どうなんだ・・祥子。」
「ち・・がぁぃま・・ぁすぅぅ」
「そんなに露出が好きなら、下の通りでオナニーさせてやればよかったな。」
「やぁぁ・・・だめぇぇぇ・・・」
「ほら もう時間がくるよ。」
5分・・・というつい先ほど宣告されたばかりのタイムリミットさえ、わたくしの意識から飛んでいました。
「そこの柵に左脚を掛けろ。もっと脚を開いて、右手で祥子の淫乱な性器をぱっくりと開いて、望遠鏡の向こうで勃起させている男どもに見せつけてやれ。」
なんという・・・恥ずかしい・・指示でしょう。
「や・・っ・・・ぁぁ・・」
「逆らうのか、祥子。僕の命令だぞ。」
高梨さんの声は堅く・・厳しく、そして・・・ここで従わなければ、きっと与えられるのはピアスのお仕置きなのです。
「みない・・で・・」
わたくしは左脚をリードの繋がれている柵へと伸ばしたのです。そろり・・・と、バックストラップパンプスのつま先を掛けました。
「だめだ、あと2つ左だ。」
柵のあと2つ左の隙間に・・・あと20センチ近く・・・もっと脚を開けとおっしゃるのです。
「ぁぁ・・ゆるして・・・」
口に上る言葉とはうらはらに・・・わたくしはつま先を2つ先の柵へと移しました。
「そうだ。さあ、開いてみせなさい。」
右手を茂みの丘に添えると・・・躊躇いがちに開いていったのです。
「あぁぁ・・・やぁ・・・」
そこだけ熱を溜めたような潤みが・・吹きすさぶ風に一瞬で冷たくなってゆきます。それでも、花びらや真珠に込められた熱だけは・・ひいていかないのです。
「はしたないね、祥子。展望台の男達はもっと望遠にならないか焦れているところだろう。そのまま、逝ってみせるんだ。」
斜め前からわたくしを見る高梨さん以上に・・・向かいのビルの展望台の方のほうが・・この姿をくっきりとご覧になってしまわれる・・・たしかに・・そうなのです。
わたくしは開いた脚の膝だけでも、咄嗟に引き寄せようとしたのです。
「だめだ!祥子。さぁ逝ってみせろ」
「あぁ・・だ・・めぇ・・・・」
閉じかけていた膝を元の位置に戻しながら、わたくしはまた指を冷たく濡れた真珠に這わるしかなかったのです。
「はぁぁ・・・ぁうん・・・」
くちゅ・・くちょ・・・ 一度上り詰めた身体は、遠くから不特定多数の方に視姦されているという高梨さんの責めの言葉に、新たな蜜をとめどなく湧き立たせてしまいました。
「だめ・・・ぁぁ・・・・・」
ちゅくぅ・・ちゅぅ・・・ 中指が真珠を撫で下ろし・・・慎ましやかな花びらを撫でる時には・・後を追う人差し指が疼きを溜めた真珠の側面を指先で辿るのです。
「あっ・・・ぁはぁぁ・・ん・・・」
ちゅぷぅ・・くちゅぅ・・ 中指と人差し指が共に花びらを嬲ると・・そのまままた真珠へと戻されて・・
その動きを憑かれた様に繰り返すのです。
「祥子はそんな風にしてオナニーをするのか。恥ずかしいね。ああ 手のひらまでぐっちょり濡れさせて。」
「あぁ・・いわない・・で・・ぇ・・」
高梨さんの羞恥を煽る言葉が・・・わたくしをいたたまれなくさせます。動いていた指を引いてしまいそうになるほどに。
「だめだ。もっと激しくしてみせろ。女として一番恥ずかしい、誰にも見せることのないオナニー姿を何人もの男の視線に晒して、逝くんだ!祥子。」
吹き付ける風は、先ほどより弱くなっていることも確かでした。
でも、風に乾いてゆこうとする太ももの湿り以上に・・新たな熱い潤みが・・淫らさを忘れる事など許さないと言わんがばかりに、溢れ出してくるのも事実だったのです。
「ゆる・・してぇ・・・あぁ・・やぁぁぁ」
茂みごしに丘を押さえている右手は、溢れ出る蜜に滑り・・・ぬめり・・もう開きつづけることも難しくなっておりました。
「はぁぁ・・・ぁ・だめぇぇ・・・」
滑る右手を、わたくしは無意識のうちにそのまま右の乳房へと・・敏感な先端へと這わせていったのです。
「そうか。その巨乳を弄らないといけないのか、祥子は。なんて淫乱な身体をしてるんだ。もっとはげしく!! 逝け!!祥子。」
「ああぁぁぁぁあ・・・っ・・・」
ガチャ・・ガチャン・・・ わたくしは高梨さんと彼方の展望台からの視線に犯されながら・・・逝ってしまったのです。
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