黒衣の情人 2
祝祭日の前日は、午前中から打ち合わせがいくつか続いた忙しい日でした。第一釦だけを開けた黒のシャツ姿は、肩を流れる黒のロングヘアと共にストイックな印象をお逢いしたクライアントの皆様に与えることに成功したようです。
時折、スカートのスリットの向こうにちらっと見える真紅の色に眼を止める方がいらしても、次の瞬間には次のプレゼンテーションのための難しい議論に一瞬垣間見えたその景色も打ち消されてしまったことでしょう。
予定よりも1つ増えた打ち合わせに、わたくしがジャズ・ライブの会場であるいつものホテルに伺えたのは、Firstセッションの2曲目がもう終わろうとしているころでした。
都内のホテルの庭は、まだ紅葉には少し早いようでした。
とはいえ、夏の盛りとはわずかにちがうくすんだ緑が、ライトアップされた築山の景色を落ち着いてみせていました。春先には花を楽しませてくれた桜や、もう少しすると真っ赤に彩られる紅葉よりも先に、銀杏が黄色い彩りを玉砂利の上にちらしていたのです。
外の景色に眼が行くほどに、ライブの会場はしん・・・と紡ぎ出されるバラードの音の中に埋もれておりました。
沢山のお客様がいらっしゃるにもかかわらず、厚みのあるピアノの音色とシルクのようなサックスの響きが人の気配を圧しておりました。
いつも・・・わたくしが女友達と共に座る席の二つ隣に、長谷川さんは軽く眼を閉じて座っていらっしゃいました。
支配人が、眼顔でその隣の席を勧めてくださいます。
わたくしはゆっくりと彼に近づいて、15cmほど離れている手前の椅子にそっと腰を下ろしたのです。
枯葉・・・
丁度1年前に、長谷川さんからのメッセージ付きのランジェリーを支配人から渡された夜にも、同じデュオで演奏されていた曲でした。
あのときは、そのふた月まえの夜のこともあって、わたくしはとても動揺したままであの夜の演奏を心からゆっくりと楽しむこともできなかったのです。
それでも、耳の底に残っている音色とは・・・今夜の音は何かが違っておりました。
ピアノの方のテクニックでしょうか。
支配人がわたくしに注いでくれた、アウスレーゼが生まれた国の石畳を思い出させるような・・・今夜はそんなアレンジだったのです。
眼を閉じた彼にグラスを掲げて、わたくしはゆっくりと宝石のような白ワインを喉へと落としていったのです。
「来たね。」
枯葉のラスト・・・サックスの音が消えた瞬間に、会場内の拍手と一緒に長谷川さんの声がいたしました。
「ご挨拶もしないでごめんなさい。ワインいただいているわ。」
手の中のワイングラスを彼の視線の先に差し上げたのです。
わたくしの胸元のシャツ釦は、お仕事の時よりも1つだけ余計に空けてありました。
「ああ。もちろんだよ。」
長谷川さんは、はじめてここでお逢いした時の様に席を立とうとはなさりませんでした。
ゆったりと椅子に身を沈めたまま、今夜はライブはライブとして楽しまれることになさったようです。
彼のその様子にわたくしもリラックスをして、次の音楽を・・・リリカルな音でつむがれたエミリー・・・を受け入れることにしたのです。
1枚仕立てのムートンのコートは大きな椅子の背に掛けてありました。
わたくしは革のジャケットの釦を外して、ジョージ・ナカシマの椅子にふかく腰掛けたのです。
Aラインのスカートの裾が自らの重みでわたくしの左の太ももとその間の真紅のスリップを露にしたのです。それは、今夜のストッキングがガーターベルトで吊られたものだと、他の方の眼にはわからないぎりぎりの位置だったのです。
わたくしの右には長谷川さんがいらっしゃるだけで、左にはどなたもいらっしゃいませんでした。それでも、ホテルのサービスの方や主宰者の沢田さんや演奏者の方から見えないとも限りません。わたくしは脚を揃えると、左の裾を自然な感じに整えました。
メロディアスな曲の間、長谷川さんはずっと静かに聞き入ってらっしゃいました。
その次のSeptember in the rain・・・まで。
時折動く長谷川さんの指先が、瞳を閉じたままの彼が寝ている訳ではないことを教えてくれていました。
黒衣の情人 1
「必ず連絡する。待っていてください。」夏の夜にそう言って立ち去った黒い麻のジャケット姿のあの方からメールをいただいたのは、11月も半ばを過ぎたころでした。
22日のジャズ・ライブで逢いましょう。
その翌日は、予定を空けておいてください。
祥子さんを独り占めさせてくれるね。
楽しみにしている。
あのホテルのロビーで
ジャズとワインを楽しみながら待ってるよ。
P.S.都合が悪いようなら早めに連絡をください。
長谷川
22日。
ライブの主宰者の沢田さんからも、是非に・・・とご連絡をいただいておりました。
この数ヶ月、突然に増えた仕事と私事にとりまぎれて、わたくしも2度ほどライブにお邪魔できないでおりました。
月に1度の楽しい時間すらゆっくり過ごすことができないなんて・・・もうメールを下さった方をなじることができなくなりそうでした。
長谷川さん・・・あの黒衣の紳士と二人きりの時を過ごすのは、1年ぶりくらいになるのでしょうか。
お見掛けしほんの少し言葉を交わしたのだって8月12日の夜が最後。
なかなかお逢いすることすらないのに、なぜかわたくしの心には彼の存在が深く刻まれておりました。それは、真性のSだという彼がわたくしに与える狂ったような一時のせいなのかもしれません。
22日。
わたくしは手帳を開いて、その日の夜から翌日の23日までの予定をすべて空けたのです。
沢田さんが教えてくださった22日のジャズ・ライブのプレーヤーは、久しぶりのデュオでした。
熱い演奏をするピアニストが最近めきめきと腕を上げたサックスプレーヤーとコラボレーションをすることになっていたのです。
澄んだ空気を創り出すサックスの音色に絡むあのピアノの音を想像するだけで、わたくしは手首にはじめてその男性に掛けられたハンカチの縛めのきしみと、降るような蝉時雨の音を・・・蘇らせてしまっていたのです。
著名な建築事務所の一翼を担う一級建築士。
でも、わたくしにとっては心まで縛る1人の男性でしかありませんでした。
あの方なら、きっとまた黒い出で立ちでお越しになることでしょう。
隣で、アウスレーゼをご一緒しながらジャズを楽しませていただくために、わたくしもその日は黒の装いを選んだのです。
シャツはメンズ仕立ての超長綿の黒に致しました。細番手の綿100%ならではの深い光沢が、この色を引き立ててくれました。
膝丈のAラインのスカートを選びました。左脚の前にだけ膝上15センチほどまですっきりとスリットが入っています。ウール・ベネシャンの素材はしなやかにほんの少し揺れる裾に上品な光をのせてくれます。
ジャケットは、もしかしたら長谷川さんも同じ素材をお召しになるかもと・・・
悩みました。それでもこの組み合わせには、革のテーラードジャケットしか考えられません。冷え込む夜の移動を考えてブラックのムートンのコートを選びました。
最後にあの方にお逢いした夏の夜は、わたくしはレースのワンピース姿でした。
数ヶ月の時間は、季節も気温も・・・なにもかも二人のまわりを変えていたのです。
ランジェリーは、お洋服とは反対に全く光沢感のないものを選びました。
胸の谷間をいっそう悩ましく創り上げるハーフカップのブラ。Tバックのショーツ。バックシームのストッキング。それを吊るガーターベルト。
夜の闇が凝ってわたくしの肌にまとわりついているような・・・深い黒のレースづかいのものばかりです。足元は、黒のミドルヒールのパンプスです。
真っ黒な装いの中で・・・ただひとつだけ色味が違ったのは真紅のサテンスリップです。
ハーフカップブラぎりぎりまで胸元のラインがカットされ、スカートのスリットと同じ位置にスリットの入った美しいローズレッドの1枚を、わたくしはアクセサリー代わりに身に纏うことにしたのです。
ティー・ローズの香水と共に。
閑話休題(インターミッション) 16-3
本日は、本編とは別に2006年にスタートした2つのカテゴリについてご紹介いたします。この2つカテゴリは閑話休題(インターミッション)のように本編をサポートする役割のつもりで創らせていただいたものでした。
本編を支えるアナザーサイドの物語・・・をお伝えしたかったのです。
ところがいつの間にか、このカテゴリも独特の内容を持ちはじめて<淑やかな彩>の中で欠かす事のできない存在になりつつあります。
それでは2つのカテゴリをご紹介いたします。
<肖像 Profile of Syouko>
わたくし・・加納祥子・・のことをお伝えしたいと思って、作ったカテゴリです。物語の中には顕われない、日常のわたくしを少しでも知っていただけたら嬉しいです。
オペラピンクのランジェリー/前夜
わたくしが、オペラピンクのランジェリーを身に着けて初めてのバーにお酒を戴きに行く・・・<淑やかな彩>第一作の前の出来事を描いたものです。
離婚をしたあと愛する方との出逢い・・・そして別れ・・・そのあとの落胆の日々と、そこから抜け出してゆくまでの、哀しい日々。
その日々の間にわたくしはいままでの女としての凝り固まった生き方に、お別れできたのだと思います。
まだ、こちらにいらっしゃる素敵な方達のどなたとも出逢う前のわたくしを知っていただけたらうれしいです。
このカテゴリを作るきっかけとなった作品です。
<淑やかな彩>10万アクセス記念作でもあります。<サファイアの夜>が50万アクセス記念になったのも・・・きっとこの物語ゆえだったかもしれません。ちなみに<サファイアの夜>はこの時期にあった出来事の1つです。
祥子の日常/朝(全2話)
祥子の日常/ビジネスタイム(全5話)
祥子の日常/ひとりの夜
わたくしが、男性の方達とお逢いしていない時、どんな風にわたくしが過ごしているかをお伝えしたストーリーです。
朝の過ごし方。
フリーデザイナーとしてのわたくしのビジネスタイム。
ひとりで過ごす夜。
1人で過ごすことの寂しさも、1人ならではの充実した時間を過ごせるから、他の方とご一緒したときにより楽しい時間が過ごせるのだと今は思っております。
時折お逢いする男性の皆様は、様々なお仕事をしてらっしゃいます。
本を読んだり、おいしいお酒をいただいたり、すてきな映画を見る度に・・・このことをあの方にお話したら、喜んでいただけるかな・・・と考えることも多くなりました。
いつも、ご一緒してくださる男性の方達がとてもラグジュアリーな時間を楽しませてくださるので、いつも同じような時間を過ごしているのですか?
というご質問を、皆様から沢山いただいておりましたがその答えになっておりましたでしょうか。
<淑やかな彩/外伝>
<淑やかな彩>実は既に外伝がありました。
それは<S>FunClubという別のブログでお届けしている(いまはお休み中です)物語です。ですが、この外伝はわたくしへの想いを抱きながら、わたくしを愛することが叶わなかった男性や、2度とわたくしと逢う事ができない男性の物語をお届けするブログだったのです。
<初雪>のスピンアウト・ストーリーをお届けするにあたって、一番書きたかったのは一番皆様からご要望の多かった女性運転手・結城さんのお話でした。まさか、結城さんをそういった男性の中に交えるわけにはいかず・・・FC2の中に外伝を設けることにしたのです。
外伝1/女性運転手 結城(全7話)
梅雨の時期、突然の夕立に降り込められたわたくしは近くにあったあの地下のバーで雨宿りをすることにしたのです。
こちらにわたくしが伺えば、美貴さん・山崎さん・石塚さんのうちのどなたかがお出でになるかもしれないとは思っていました。
その夜、お越しになったのは山崎さんお1人だったのです。
少しお疲れの感じの山崎さんと並んでお酒をいただきながら、わたくしは年の初めに半日御一緒したきり気にかかっていた女性運転手・結城さんのことをお尋ねしたのです。
山崎さんが語ってくれたのは、ピュアで一本気で努力家な結城さんの姿でした。
結城さんをわたくしたちの戯れの中に入れてください・・・というご要望が多い中、どうしても彼女をそんな風に描く事が出来なかった理由を解っていただけたと思います。
また、このお話も語り手がわたくし・山崎さん・結城さんと移り変わり、語っている時間も今と過去を往復する、新しいスタイルをお届け出来たと思います。
ラストの・・・哀しい片思いのシーンに、多くの方からコメントを頂戴したのもいまでは懐かしい思い出です。
外伝2/レンジローバーの帰り道(全15話)
<初雪>の最後のスピンアウト・ストーリーです。
雪の別荘からわたくしと望月さんが帰ったあと、美貴さんと山崎さんと石塚さんが結城さんの運転するレンジローバーで都内に戻ることになりました。
その帰り道の3人の男性と、山崎さんに恋しているのに元旦から3日の朝まで1人でホテルで過ごさなくてはならなかった結城さんの気持ちを描いた物語です。
なんということはない、帰り道の物語です。が、<夢のかよひ路>でわたくしと望月さんのお話を描いた後にどうしてもお届けしたくなったお話でした。
また<外伝1/女性運転手 結城>で触れる事のできなかったあのお正月の出来事もお伝えしたかったという理由もありました。
これからもまだ様々な形で魅力的なバイプレイヤーが登場するたびに、わたくしはこの外伝でその方の物語をお伝えすることになるでしょう。
閑話休題(インターミッション) 16-2
遅くなって申し訳ございません。2006年作品レビューの中編です。
Fireworks
お盆休みの数日をどう過ごそうかと思っていた矢先に、わたくしに届いたのは『TAKEGAMI DREAM NIGHT in Symphony』 とだけ書かれたカードでした。差出人のサインは石塚胤人。
わたくしに心当たりがあるとすれば、それはあの石塚さん以外おりません。
その日、カードに書かれた通りにうかがった場所には、竹上建設の会長・社長を父・兄と呼ぶ石塚さんと、その竹上建設が主催する夏のパーティ会場となった客船シンフォニーがありました。
あまりにオフィシャルなパーティ。
専務と呼ばれる石塚さんに、きっとプライベートな時間をご一緒することはできはしないと考えて、わたくしは一人パーティを楽しむつもりになっておりました。
会場でワインをいただきに上がったカウンターで再会したのは、アッシュグレイの髪が魅力的なあの長谷川さんでした。再会を喜び、連れの方達から離れて会話を楽しまれていた長谷川さんの眼の前から、わたくしを引き離したのは・・・石塚さんだったのです。
案内された特別室は、石塚さんがわたくしと二人だけで過ごす為に用意されたお部屋でした。
前夜の天候の関係でパーティの夜に開催された花火大会。
その間、わたくしは特別室の専用デッキで天空の花火の彩りを、露にされてゆく素肌に映す事になってしまったのです。
客船の最上階にあたるオープンデッキで、仕事関係のパーティが開催されているのと同じ時間に主宰者の一人である石塚さんにドレスを剥がれバックから犯されたのです。
東京湾のただなか、どこからみられているかわからない・・・そんな不安の中でわたくしはスターマインのように上り詰めさせられてしまいました。
お正月にお逢いした時に、あの3紳士と望月さんの簡単な素性は聞かされておりました。
でも石塚さんがあの大手建設会社の1つ竹上建設のオーナー一族の1人である事を知ったのは、この時が初めてでした。石塚さんにご紹介いただいた、お父様もお兄様も皆様面影が似ていらしていい親子関係であることも一目でわかりました。
また、パーティ会場で偶然再会した長谷川さんが、黒部設計の設計士であることを聞かされたのもこの時でした。
『縁は異なもの』と申しますが、このときわたくしを挟んで互いを意識したお二人は、やがて長谷川さんの転職で新たなビジネスの場での信頼関係を築いてゆくようになるのです。
この物語も<初雪>からのスピンオフ・ストーリーの1つです。
夢のかよひ路
わたくしをパーティに誘って下さった石塚さんは、パーティから帰宅するわたくしのためにセルシオと望月さんを用意していてくださいました。
花火大会のあとのつかの間の渋滞は、わたくしにはじめて望月さんとふたりきりでドライブした雪の別荘の帰り道・・・望月さんの自宅へ招かれ二人きりで過ごした午後への記憶へと誘います。
帰り道のSAで、ゴールデンレトリバーと戯れる望月さんの無邪気な優しさそのままのお誘いを受けて、わたくしは2つの条件と引き換えに望月さんと二人きりの時を過ごすことに決めたのです。
その条件とは「助手席に乗せてくれる事、<様>をつけて呼ばない事」。
望月さんの部屋へ向かったわたくしを待っていたのは、秋の箱根でとうとうわたくしが纏う事がなかった着物と、望月さんの甘い抱擁だったのです。
雪の別荘にご招待いただいている間中、常に複数の男性に嬲られ続けたわたくしにとって、望月さんとふたりきりの時間は・・・あまりに甘美でした。茂みを摘み取られたままの恥ずかしい身体を彼が承知していてくれることもあって、身体の芯から蕩けるような時を過ごしたのです。
石塚さんに責め立てられ達した後の淫らな気配をまとったわたくしは、車中で望月さんとの時間を思い出しますます濃密な気配を纏い付かせておりました。
そのわたくしに微かな嫉妬をにじませながら望月さんは今夜のドライブへとわたくしを誘うのです。
望月さんのご自宅で、綿の一重に着替えさせられたわたくしは彼のRX-7でどちらとも知れない場所へドライブへ出るのです。
パーティでいただいたシャンパンの酔い・石塚さんに責め立てられた快感のもたらした緊張についわたくしは望月さんの隣で眠りに落ちてしまいました。
西湘バイパスのPAで最初のお仕置きを課すのです。
お仕置きは、望月さんだとは思えないほどにわたくしの意識を遠のかせるほど淫楽に満ちて厳しく・・・目的地まで続くのです。
望月さんがかつてと優しくなってくださったのは、わたくしが彼の車に乗ったときからふたりのことしか考えていなかったと・・・お伝えしてからでした。
わたくし自身でも想像できなかったほどに、長編になり・・・そしてあまあまになったこの物語も<初雪>のスピンアウト・ストーリーの1つです。
2006年のはじめにみなさんにお約束した、望月さんとの帰り道の出来事をようやくお届けできました。
サファイアの夜
わたくしが、このブログの第一作<オペラピンクのランジェリー>でお届けしたよりももっと前の出来事です。
とても愛して手ひどく裏切られて別れた方・・・<銀幕の向こう側>で映画館で奥様と御一緒のところをお見かけしてしまった方とお別れして間もなくのことです。
その夜は、お別れした方のバースデーでした。
わたくしは、その日、どんなに哀しいお別れをした後でもその方へお祝いのメールか電話をしたいという衝動を押さえることができなくなっていたのです。
どれほど仕事で疲れても我慢出来なくなってしまいそうなその想いを殺す為に、向かったのは自宅から車で15分ほどのシティホテルのバーでした。
お酒をいただいて、しばらくして気がついたのは隣の方の<指>、そしてじっとみつめるわたくしを咎めた男性の<声>が・・・別れた方とそっくりだったのです。
「無作法だね。」と厳しくおっしゃる男性に「申し訳ありません。お許しください。」と両手を揃えてハイスツールに腰掛けたまま頭を下げるわたくしに・・・「お仕置きが必要だね。」とおっしゃるのです。
かつて愛した方を忘れる為に、わたくしはこの男性のお泊まりになったお部屋に御一緒したのです。
わたくしが愛した方と同じに・・・この男性もSでらっしゃいました。
羞恥に目を瞑り、責めを受ける間わたくしは哀しい幻のような錯覚に溺れていたのです。が、それをこの男性は許してはくださいませんでした。
わたくしにお別れした方を忘れさせる為に、信じられない荒療治に出られたのです。
この物語は、<淑やかな彩>50万アクセス記念作品として書かせていただいた物語でした。そして、いままでお届けした中でもっとも時代的に古い時期のお話です。
のちほどご紹介させていただく・・・<肖像 Profile of Syouko :オペラピンクのランジェリー/前夜>よりも前の出来事になるのです。
まだ、素晴らしい方達とお逢いする前の・・・わたくしをお楽しみいただけましたでしょうか。
EVE
クリスマス・イヴ・イヴの夜。女のお友達と過ごしたパーティの後、訪れたのは美貴さんがオーナーの地下のバーを訪れたのです。
そこには、美貴さんがお1人でぽつり・・・・と。
理由を伺うと、望月さんがサンタさんの姿をして御一緒にお仕事関係のお客様のホームパーティをはしごしていたとのこと。全てを終えてふたりでゆっくり飲むために、一度自宅に帰った望月さんを待ってらしたということでした。
美貴さんと、そしてあとからいらした望月さんから、石塚さんや山崎さんの近況を伺ったのです。
石塚さんと山崎さんのお二人は、それぞれの理由で海外にいらしておりました。
「国際電話をして悔しがらせるのは・・・いいな。」
そうおっしゃる美貴さんを押しとどめるために、わたくしはクリスマス・イヴ・イヴの夜を御一緒に過ごすことを約束するしかなかったのです。
いつものタワーホテルのリザーブを確認するために美貴さんが席を外した時に、わたくしは背後にいらした望月さんにキスをして、翌日迎えに来ていただいた後のイヴの一日を彼と過ごすお約束をしたのです。
望月さんに見送られ、美貴さんと二人でタクシーでホテルに向かうところでこのお話は終わります。
ですが、その後に開催させていただいたアンケートで美貴さん・望月さんそれぞれと過ごした夜をいつか物語としてお届けする事になりました。
3人の紳士と望月さんとの、<初雪>を超えた新しい関係が始まるのです。
第九 in the MOVIE
例年なら誕生日に第九のコンサートを楽しんでいたわたくしは、今年とうとうチケットを取りそびれておりました。
どうしようかと悩むわたくしが見つけたのは『敬愛するベートーベン』という単館ロードショーの映画でした。
バースデーの夕刻、日比谷の映画館に向かったわたくしは、上映を待つロビーで仲畑さんと出逢ったのです。
この日がわたくしの誕生日だとお知りになった仲畑さんは、映画の後のディナーにわたくしを誘ってくださいました。そして、まだ、恋人がいないと知ると・・・そのままベッドにも・・・。
そしてわたくしがいままでどなたにもお見せしたことのない、恥辱の姿をお見せすることになってしまったのでした。
まだ皆様の記憶に新しい<第九 in the MOVIE>。
仲畑さんは、わたくしを救って・こだわりから解放してくださる男性のようです。そして最後に「いつでも話を聞くよ。」と名刺をプレゼントしてくださったのです。
本編で2006年にFC2でアップさせていただいた作品はここまでです。
が、実は物語はこれでは終わらないのです。
2006年、わたくしは<FC2淑やかな彩>に、新たなカテゴリを加えました。
明日は2つの新たなカテゴリでお届けした物語について、ご紹介いたします。
閑話休題(インターミッション) 16
お正月三が日。皆様はどうお過ごしですか?
年末から続いてお届けしていた<第九 in the MOVIE>いかがでしたでしょうか?
第九のパワフルな合唱に包まれて迎えた新年に<閑話休題(インターミッション)16>をお届けいたします。
実は、このFC2にお引っ越しをしてきたのが、昨年の1月19日。
お引っ越し前までにmsn淑やかな彩でアップさせていただいた作品は、<閑話休題(インターミッション)1>でご紹介させていただきました。
その後、様々な形で閑話休題のカテゴリで作品紹介をさせて頂いたのですが、2006年にアップした作品をまだトータルでご紹介する場を設けてはおりませんでした。
2007年をスタートさせていただくにあたって、いちど総括をしたいと思います。
2006年にお届けした17の物語を順にご紹介させていただきます。どうぞお楽しみくださいませ。
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