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Fireworks 13

「ここに、手をついて。祥子さん」
石塚さんはご自身が掴んでいたわたくしの両腕を離すと、目の前のデッキの手すりに彼の手を重ねて導き・・・握らせるのです。
背中に重ねられた石塚さんの身体は、アルコールのせいだけではない熱を発しているようでした。
「ゆるして・・・こんなところで・・・いや」
いまは見えるところに他の船はおりません。
でも、もう少しすれば、この船もそして他の船も移動をはじめます。
どこの誰に・・・こんな恥ずかしい姿を目撃されないとも限らないのです。
「言ったでしょう。僕は誰に見られたっていいし、誰かにみせびらかしたいくらいなんだ。残念ながら、今夜はみんな空の響宴に目を奪われているけれどね。」
わたくしの腰をがっしりとした手で掴むと、後へと引いてゆきます。
金糸が星々のように散る黒レースのガーターベルトとストッキングだけを身に着けただけの・・・白いヒップを突き出させるように・・して。
石塚さんの脚がわたくしのパンプスの間に押し入れられ、左右に・・少しずつ開いてゆくのです。
「今夜はもうあまり時間がありません。僕に祥子さんの蜜を舐めとらせて逝きたいですか?それとも奥まで突き上げられて逝きたいですか?」
なんて・・・破廉恥な選択肢でしょう。
わたくしがどちらも言葉にして選べないことくらいご存知なのに、この方はこんな風におっしゃるのです。
後に立つ石塚さんに、腰を突き出したはしたない姿勢を取らされたまま、彼を見返ってふるふると顔を横に振ることしかわたくしには出来ませんでした。
「いい景色ですね。僕だけのものにできるなら、ここをいつもすべすべにしておいて上げるのに。あの時の祥子さんの花びら餅、とても綺麗でしたよ。」
「いゃぁぁぁ・・・」
シチュエーションに気を取られて、わたくしは漆黒のしげみに囲まれた花びらもヌメ光る真珠も・・姫菊さえも全て石塚さんの視線に晒していることを忘れていたのです。
動揺して落としそうになる腰を、石塚さんは逞しいその腕で支え頽れることを許してはくれないのです。

「選べないのなら、僕が選んであげましょう。 こっちです!」
「ああぁぁっ・・んん・・」
石塚さんのごつごつと太い塊が・・・後からわたくしの花びらにめり込むように・・・押しいってくるのです。
「大丈夫ですよ、声を殺すことはありません。もっと、感じなさい。」
「はぁぁん・・はぁう」
くちょ・くちゅ・くちゃ・・・ わたくしの花びらからの水音も・・・全ての光と音にかき消されてしまうことはなく、圧倒的な空間のほんの僅かな狭間から・・巻貝のような耳を恥辱に満ちて犯してゆくのです。
たとえ花火がどれほど上がろうとも、わたくしのはしたない喘ぎは波音を隔てて・・・長谷川さんのいらっしゃるデッキへと届いてしまうかもしれません。
わたくしを、空想の縄で・・・ワンピースの上から縛めていらしたあの方の耳へも。
「こんなに濡らして、まだこんなに締め付ける。こうして独り占めするのは はじめてだが、なんて いい・んだ。」
躊躇なくわたくしを追い込む石塚さんの抽送は・・・スターマインの数え切れない花火が開く数を克明に数え上げ・・・同じだけ打ち込まれているかのようでした。
「ああぁ・・・ゆるしてぇぇぇ・・・」
「だめだよ まだだ」
花火の、身体を震わせるリズミカルな音が・火薬の匂いが・・・水面を飾る極彩色の造形がわたくしを昂らせてゆくのです。
石塚さんの・・・わたくしの花びらを大きく割り広げる凶暴なまでの塊も・・・
「おねがい・・・ぁあぁああぁぁ・・・いっちゃうぅぅ」
「祥子 逝け!!何度でも そら もっと深く」
「はぁぁぁん・・やぁぁ・・・」
突き上げられる度にくずおれそうになる腰を・・・幾度も・・・石塚さんの腕は掬い上げ・・・わたくしの胎内に彼の形を刻み込もうとするように・・・奥へ奥へと・・突くのです。
「またぁぁ・・・ん・・・んぁぁぁ・・・」
間断なく上がる花火の音は宙に投げ出されたGカップの乳房もその先端までも震わせるのです。石塚さんの塊の送り込む淫欲と呼応して・・・わたくしをこれでもかと追い上げます。
巨大な神の手とわたくしを愛しているという男性に、感じやすい身体を同時に愛撫されつづけているようなものでした。

Fireworks 12

「今夜の祥子さんのフェロモンは濃くて、たまらない。」
耳元に近づいた唇はそのまま敏感な首筋を通って・・・ストラップが中途半端に引っかかる肩先へ・・・落ちかけたブラのカップのせいで半分ほど露になった乳首へと這っていったのです。
「あぁぁん・・・だめ・・ぇ・・」
「さっきまで一緒にいた長谷川氏のせいかな。」
「ちがう・・わ・はぁぁん・・」
どきっといたしました。
長谷川さんとお話した僅かな間、あの方のS性はわたくしの中に潜むものをを刺激しつづけていたからです。
そのせいで・・濃く・・・溢れてしまった・・・のかもしれません。

「いしづか・・さ・んが・ぁはぁん・・こんなふうに・・なさる・か・ら・・んん」
石塚さんはハーフカップブラを少しづつずらしながら・・・わたくしの感じやすい乳房に口づけをしつづけます。
声が・・・淫らな響きを帯びた声が・・・スターマインの連続する破裂音と遠い岸からのざわめきにかき消されてゆくのです。
「可愛いことを言うね、祥子さんは。」
「あうっ・・・」
かりっと・・・左の乳首を甘噛みするのです。
わたくしははしたなく身を震わせてしまいました。
その瞬間、わたくしのブラは石塚さんの手に引き抜かれ・・・そしてワンピースの上へとふわりと投げられていたのです。
「や・・・見られちゃうわ。」
周囲には、先ほどいたパーティルームの先あたりには何艘かの屋形船が見えました。
でも、この専用デッキからは目につく船はありませんでした。岸からも・・・目視できないほどに離れております。
それでも、漆黒の波と夜空に挟まれた空間に真っ白な肌を・・・黒のガーターベルトと極薄の黒のストッキングだけを身に纏って・・・晒しているのはわたくしを羞恥の茨の上に横たえているのと同じでした。

「僕は、みせびらかしたいけどね。祥子さんのような素敵な女性を独り占めして、こんな風に自由にさせてもらっているところをね。」
向かい合う様にして、乳房をねぶっていたわたくしの身体を・・くるりと海側へと回すのです。
「ぃやぁ・・・」
両腕を後に大きな石塚さんの手でひとまとめにされて、波に合わせてたゆん・・と揺れるGカップの乳房を、さらに突き出す姿勢をとらされてしまったのです。
「こんなに男を狂わす身体と知性。この茂みを奪った夜にもいいましたが、僕は本気で祥子さんが欲しいんですよ。」
さほど長くはない茂みを・・・石塚さんの右手がむしり取るように強く掴むのです。そしてその指を・・・ご自分の鼻先へ・・
「だ・・めぇぇ・・」
わかっておりました。わたくしの身体がすでに茂みの根元を潤すほどに・・・蜜を溢れさせていることを・・・。
あんな風になさったら、石塚さんの指先にはわたくしのぬめる滴がたっぷりとまとわりついてしまったはずです。

「今夜は、ここで紳士的に振る舞って二人きりでロマンティックに花火を楽しもうかと思っていたんです。」
「あぁぁっ」
ぺろっ・・石塚さんの舌がご自身の右手の指先を舐めてゆきます。
「でも、僕の招待したパーティで30分もしないうちに他の男を虜にしている祥子さんを見て気が変わった。」
カチャ・・・
「祥子さんの心だけじゃなくて、身体を確かめて・・・証を残したくなる。」 ジィィィ・・・ぱ・さっ・・・
わたくしの背後から石塚さんのスラックスが立てる・・・小さな・音。花火の騒音の中なのに何故かくっきりと二人の間に響くのです。

Fireworks 11

「おっしゃらないで・・・そんな・・こと」
たった一枚のガラスがなくなっただけで・・・羞恥はわたくしに一層激しく襲いかかるのです。
チチッ・・・
次々と上がる花火の身体の芯を振るわすような大音響の下で、石塚さんはわたくしの耳元でこんなはしたないことを囁かれるのです。
「祥子さんの口から聞かせてほしいな、いまどうなっているか。」
「いやで・す・・・っ・・」
わたくしの長い髪を右手に絡め・後に引いて・・・後ろ向きにあおのけるようにしたわたくしの唇を、石塚さんは再び奪ったのです。

チィィィィ・・・・・
「ん・・んん・・・・」
舌を絡めるような口づけをしながら、石塚さんの左手はワンピースの背中のファスナーを引き下ろしていったのです。
ドォォン・・・ ひと際大きな花火が頭上で花開きます。
「・・ぁ・・ゃぁ・・・っ・・・」
腰の頂きまで全てのファスナーを引き下ろすと、左肩からレースの連なりを剥き下ろすのです。
「・・・ぁ・めぇ・・・ん・くぅっ・・・」
わたくしの髪を右手から左手に持ち替えて、開いた右手でワンピースの右肩を落とします。
肩線でストラップホルダーに止められていたアンダードレスごと、レースのワンピースは自らの重さでわたくしの身体の上をするすると滑り落ちていったのです。
「ああ、今夜にぴったりだね。そのランジェリー。」
墨を流した水面を映したような漆黒のレースは、きらびやかな湾岸の夜景にわたくしの白い肌を一層くっきり浮き立たせていたのです。
ドォォン・・・ 質量のある音が覆うものを奪われた肌を襲いました。

石塚さんは、わたくしの身体の前面を特別室から漏れる明かりに晒すように、手すりに沿ってダンスのようなステップでくるりと身体を回したのです。
足許に落ちたレースのドレスを踏まない様に・・・リードされているようでした。
優雅な楕円を描くレースをさっと取り上げ、少し離れたデッキチェアの上へと放り投げます。
「だめです、こんなこと。誰かに見られてしまうわ。」
石塚さんはその場でわたくしを抱きしめたまま、その腕の輪をするすると腰から肩まで上げてゆきました。
「大丈夫だよ。皆花火しか見てないよ。この専用デッキはこの船の他のデッキとは逆を向いているからね。祥子さんが大きな声を上げなければ誰も来ない。」
石塚さんの言葉を証明するように、スターマインに切り替わった花火は引っ切りなしに破裂音と煌めく明かりを夜空に広げては消えてゆきます。
東京湾のただ中に晒された艶かしい白い肌は、空を映す様に次々とあやかに色を変え、黒のレースのランジェリーがくっきりと浮び上がるのです。
わたくしは両腕で我が身を抱く様にして・・・露になった身体を隠そうといたしました。
ハーフカップのブラが押し上げる、白い乳房に注がれる石塚さんの視線さえ・・・わたくしをさらに羞恥で熱くしてゆくのです。

「祥子さんが教えてくれないからいけないんですよ。」
「あっ・・」
プチっ・・・ ハーフカップブラの背中のホックが外されてしまいます。
Gカップに押し込められた乳房の重みで自然と落ちそうになるブラを、わたくしは咄嗟に両手で支えたのです。
「ふぅぅん」
「あっ・・・あぁぁっ・・だめですぅぅ・・」
わたくしのガードがなくなったハイレグパンティは、石塚さんの手で太ももの中ほどまで・・そして足下まで・・・引き下ろされてしまったのです。
薄く脚を覆う黒のストッキングを愛でるかの様にわたくしの太ももをかき抱くようにして・・・腰を下ろした石塚さんは正面のわたくしの茂みを見据えたのです。
真っすぐに見つめていたのは・・・10秒にも満たなかったと思います。
すぐに立ち上がると無言のままに与えられた恥辱に、石塚さんの視線から顔を逸らせたわたくしの耳元に唇を寄せて囁くのです。
「元通りのしなやかな茂みが綺麗ですよ。」と・・・。
その声は決して大きくはなかったのですが、花火の音の中でやけにはっきりと・・・わたくしの中に響いたのです。
そして・・・

Fireworks 10

パーティバッグを室内に置いて、シャンパングラスを手にシーリングされたドアを開けました。
そこは小さなデッキに・・・いくつかのデッキチェアとテーブルがありました。
ここはこのお部屋からしか出ることができない場所・・・専用デッキのようでした。
ドォン・・・ドォン・・・ 
「まぁ、綺麗。ね、石塚さん。」
「そうだね」
手すりにつかまるわたくしの右隣に、ジャケットを脱いだ石塚さんが立たれました。
空には煙火店の職人さん達が技術の粋を尽くしたアーティスティックな尺玉が大きな花を広げています。音も・光も・色も・形も・・・伝統的な技法だけでなく新作も用意されているようです。
「ここは、専用デッキなんですの?」
「そうだよ。祥子さんと二人きりで貸し切り。」
「贅沢ですわね。」
「前にも言ったでしょう。祥子さんと過ごす時間に贅沢すぎるものなんてないんですよ。」
もう、この方は相変わらずなのです。
冬の別荘をわたくしと過ごす為だけに改装したり、AV車を新車で1台お求めになったり、京都まで陶器をご注文なさったり・・・。
「会社の会なのでしょう。こんなに綺麗なら他の方も上がっていらっしゃるんじゃないんですか?」
飲み干したシャンパングラスをわたくしの手から取り上げて、石塚さんはデッキのテーブルにご自身のグラスと並べて置きます。
「いや、この特別室は僕が個人的に借りたものだからね。だれも来ないし、誰も通しちゃいけないとこの船のクルーに言ってある。僕が上がってきた後はスタッフ以外立ち入り禁止の札が階段に掛かっているはずだよ。」
「そんなことなさって・・・お父様とお兄様に叱られてもしりませんよ。」
「大丈夫だよ。二人とも祥子さんのことは気に入ったみたいだからね。」
わたくしの心配を、答えとも言えない言葉ではぐらかしてしまわれるのです。
この方がこう仰りはじめたら、もうどううかがっても本当のことはおっしゃらないことでしょう。
いえ多分言葉通り、わたくしを招待するためだけに、このお部屋をご用意くださったかもしれません。

石塚さんの手がわたくしの髪を愛でています。
はじめてお逢いしたときから、この方はわたくしの髪がお好きでした。
「いつもすべすべで細くて気持ちのいい髪だね。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
ドォン・・・ 重い音の塊が身体を直撃いたします。
胸の頂きまで伸びた髪は絹糸の様に細く、毛先までなめらかでした。
フリーになって、クライアントの男性から受けがいいからと髪を伸ばしはじめた時わたくしが決めたことがあります。そ
れは、髪が傷ついたら短くするということです。どれほど長くても、枝毛の目立つ傷んだ髪は、わたくしのライフスタイルがチープであるかと表しているかのように思えて・・・許せなかったからです。
ヘアケアはスタイリングではなく、全ては美しい・正しい髪を保つためのものでした。
さらさらと流れるストレートのロングヘアは、花火を照り返して複雑に色を変え、微かに吹く潮風に嬲られておりました。
「少し正月のころよりも長くなったかな?」
「そうですわね。」
「アンダーヘアも元通りに伸びたかな?」
「や・・・っ」
わたくしは、思わず石塚さんの方へ振り向いてしまいました。
お正月に雪の別荘でこの方の手で剃毛された・・・わたくしの茂み。
いまは、ほんの少しだけ短めに整えられた状態で、すっかり元に戻っておりました。
「なにをおっしゃるの」
「ずっと気になってたんだ。祥子さんがあれからどうしてるかって。ちくちくするからって2度と元通りに伸ばせなくなる女性もいるからね。」
チッ・・・
「だから祥子さんがどうしているか、あの時に撮った2枚の写真を見比べながらいつも考えていたんだよ。」
石塚さんはついと手を伸ばすと、わたくしの眼鏡を取り上げたのです。

Fireworks 9

「ああ、今日は本体の取引先のための慰安会だからね。主役は父と兄なんだよ。」
「もう、石塚さんも専務さんなんでしょう。」
「いやいや、僕は外の会社の人間だからね。まぁ、最初と最後の挨拶の時に二人の後に控えてれば、後はさほどしなくちゃいけないことがあるわけじゃないんだ。」
本体とは竹上建設のことでしょうか。
石塚さんはディベロッパーの竹上開発の社長をしているのだと、長谷川さんが教えてくださいました。そして、お身体の弱いお兄様を補佐するために竹上建設の専務を兼務されていることも。
石塚さんは、謙遜されてらっしゃるのです。
実力が上と世間に噂されてもそんなそぶりは少しも感じさせず、人目に立つ場所ではお兄様を立ててらっしゃることは、多くのお客様に話しかけられていても常にお二人の後に立ってらっしゃることで充分に解りました。

「わたくしは1人でも充分に楽しんでおりましたのに。気を遣わせてしまってごめんなさい。」
「一緒に居たのは、たしか黒部設計のチーフだよね。」
「長谷川さんのこと?」
先ほどグラスを上げて合図をした時、同じテーブルに居た彼のことに気付いていたのでしょうか。
「わたくしは良く存じませんの。設計をされている方だっていうことは先ほど伺いましたけれど、黒部設計の方だったんですか。」
黒部設計事務所といえば、わたくしさえ名前を知っている有名な設計家の方の事務所です。
そういえば、ジャズライブの行なわれるホテルは、黒部設計のオフィスから歩いていらっしゃれるほどの距離にありました。
「ああ、大先生はいまは大型プロジェクトとか美術館のような文化施設しか手がけなくなっているからね。彼は商業施設の設計にとてもいいセンスを持っていてね、うちも随分世話になっている。実力のある、脂ののった設計家だよ。黒部設計の稼ぎ頭だね。」
石塚さんと長谷川さんは、直接の面識はないようでしたがお互いのことをよくご存知でした。
わたくしが親しくさせていただいている別の男性のことを、ご一緒している方から詳しく聞かされるなんて、なんだか複雑なものでした。
それでも、ご一緒の男性の口から語られる内容が素晴らしいものであれば、あぁわたくしの眼は間違ってなかったのね・・・と嬉しくもなるものです。
「ふふふ 石塚さんがそんなに褒めるなんて、あの方はお仕事の出来る素敵な方だったんですね。」
「女性の趣味も極めて良いみたいだしね。」
石塚さんの右手の人差し指がわたくしの肩から流れ落ちる髪を絡めとります。
「そうですの?」
「妬けるよ。」
ガタっ・・・ 腰を浮かした石塚さんの唇がわたくしに重ねられます。

シャンパンの香りのキスは、長く続きました。
「もう、お行儀がわるいのね。」
そう、この方はこういう方でした。
何時間も隣でお酒をご一緒しても、わたくしが許さなければ手を重ねることしかしない山崎さんとは・・・違うのです。
ふいに唇を奪って、でも憎めない可愛い方なのです。
「祥子さんのキスは甘いな。今日はワインの良い香りがする。」
「ふふふ、もう・・・いけない人」
ドォン・・・ 窓から重い音が響ききらびやかな光の乱舞が見えました。
「はじまったね。お腹すいてる?祥子さん。」
「いいえ、わたくしは。さきほど下でもいろいろいただきましたし。」
「それじゃ、せっかくだから外で観よう。東京湾大華火大会の特別席だよ。」

閑話休題(インターミッション) 10-2

こんばんわ。めっきりと涼しくなった夜、皆様はいかがお過ごしですか?
<Fireworks>連載中ですが、先日の閑話休題9-2のあと、期間限定で実施させていただいた緊急アンケートの結果発表をさせていただこうと思います。

題して・・・
<緊急アンケート>美貴さんのどこがお好き?
結果発表♪


投票期間はたったの5日間という短い期間でしたが、なんと投票数は20票と、前回美貴さんに票を入れてくださった方の90%近くの方が参加して下さった計算になります。
根強い美貴さんファンの存在を、わたくし改めて実感させていただいた次第です。
これより結果発表をさせていただくのですが・・・今回はコメンテーターに美貴さんファンクラブ初代会長(わたくしが勝手に任命させていただきました)のさやか様をお招きしております。コメントの中の『~』は、さやか様から頂戴したものです。
わたくしの拙いコメントと共に、ぜひ・・・頷きながらお読み下さい♪

1位 性癖・テクニック 7票/35.0%
実はアンケート開始当初、あまり票を集めてなかったので美貴さんファンの方にはあまり彼の<アナル好き>は関係ないのかと思いきや・・・締め切り寸前にぐぅんと票を伸ばしてトップに躍り出てしまいました。
わたくしも、美貴さんにアナルバージンを奪われたのですが、わたくしの身体を傷つけない様にと丹念に可愛がってくださるテクニックは特筆すべきものがございます。
安全に、なおかつはじめての女性を快感に溺れさせながら・・・ですから、きっとなかなか普通の方にはお出来にならないことかもしれません。
美貴さんのテクニックは、第1作オペラピンクのランジェリー 第6作唐紅をご参照くださいませ。

2位 会話のセンス 6票/30.0%
会話には、その方の知性や心持ちが顕われますね。はじめて、この方達とお逢いしたときから会話のセンスとリズムはとても心地良いものがありました。
なによりも、博学なんですね。後で、お三方がみなさん違う業界の方だとわかって、豊富な話題にも頷けました。
それともう一つ・・・大切なことをさやか様が教えて下さいました。
『第二は彼の敬語です。美貴さんはしっかりSですから結構ひどい事もしてるんですがずーっと祥子さんに丁寧な言葉遣いをくずしません。
敬語を使うSさんがさやかは好きなのだ。』
まさに! そんな美貴さんは第6作唐紅でお楽しみください。

3位 望月さんが部下だから 3票/15.0%
アンケートの回答を作るとき、まさか・・・と思いながら書き出した項目でした。
第3位までに票を集めるとは思ってもおりませんでした。
さやか様曰く・・・
『まず第一に女性は「主従物が好き」だから。
残念ながら、1位は従者の望月さんに奪われてしまいましたが祥子さんに愛されてるからしょうがありません。』なのですが、
わたくしとしては、望月さんのような優れた部下に慕われ・尊敬されるだけの何かを持ってらっしゃる男性の証を見るような気持ちでおります。
二人の息もぴったりの第6作唐紅、望月さんの上司としての威厳がほのみえる第10作初雪もご参照になってください。

4位 リーダーシップ 1票/5.0%
   威厳がある 1票/5.0%
   ファッションセンス 1票/5.0%
   その他 1票/5.0%

4位には4つの項目がそれぞれ1票づつを獲得いたしました。

まず最初のリーダーシップ。
いちばん最初にこの3人の紳士にお逢いしたとき、全てを段取っていたのは・・・美貴さんでした。後でプロフィールを見て、お年のせいじゃないのもわかってびっくりしたものです。
そう言えば、先日望月さんが・・・「美貴は高校生の時生徒会長をしてたんですよ。」ってこっそり教えてくださったんです。さもありなん・・・ですよね。

二つ目の威厳がある。
前回の人気投票の時に美貴さんを紹介する文章として上げさせて頂いた、「僭越だぞ、望月。」という一言が代表的かもしれません。わたくしと居るときの、ちょい悪でお茶目で優しい美貴さんじゃない・・・ビジネスマンとしての彼を彷彿とさせる一面が、魅力の1つなのかもしれません。

三つ目のファッションセンス。
もうこれは・・・言うまでもありませんね。
はじめての夜にわたくしのオペラピンクのランジェリーをお持ち帰りになった代償に、美貴さんは新しいランジェリーとわたくしのための衣装をプレゼントしてくださったのです。
第6作唐紅でご用意してくださった紅葉柄の友禅の着物も、第10作初雪で大晦日のディナーのためにご用意くださったダナキャランのドレスも素敵でした。

4つ目のその他。
これは・・・初代会長のさやか様に語っていただきましょう。
『最後は彼の持っている雰囲気かな。
決して叔父様ではなくちゃんと若々しさを感じさせて保護者ではなく恋人にしたいです。
祥子さんのお相手は素晴らしい方ばかりですがなんだかみなさんできすぎのおじさまばかり。
時には少年のようにわがままを言う美貴さんは決して完璧じゃないからなおさら、いいんじゃないでしょうか。』


以上、緊急アンケートの結果発表でした。

P.S.
前回のアンケート結果に対する皆様からのコメントを見て思ったのですが、<淑やか>で人気の高いキャラクターに共通するキーワードは【少年ぽさ】のようです。
新しい発見をさせていただき、ありがとうございました♪

Fireworks 8

「4階のエロイカになります。」
「はい、難しくなければ1人で行くわ。この階段を上がればいいのかしら?」
パーティルームのドアを出た向かいの通路に、上階へ上がるための細い階段がありました。
「恐れ入ります。こちらを上がって頂いて、正面が特別室になります。お部屋は一つですのですぐにわかっていただけると思います。」
「ありがとう。それなら大丈夫です。」
パーサーは、80名以上のお客様のサービスを取り仕切られているのです。スタッフにご迷惑を掛ける訳にはいきません。
わたくしは1人でゆっくりと客船らしいコンパクトなその階段を上っていったのです。

エロイカと印された部屋は、先ほどのパーティルームに比べればほんとうに小振りでしたが・・・まるで邸宅の応接間を彷彿とさせる重厚感のあるお部屋でした。
お部屋の中央のテーブルには、シャンパンとそれから下のパーティルームに用意されていたのと同じようなオードブルが二人分ほど用意されていたのです。
このお部屋からは、テーブルと椅子の並ぶデッキにそのまま出ることができました。
デッキに向いた窓の外はすっかり陽も落ちて、東京湾の夜景が見事なパノラマを展開していたのです。

「待たせて申し訳ない。親父たちが放してくれなくてね。」
バフッ・・カチャッ・・・ ドアの開く音と共に、太くしっかりした石塚さんの声がいたしました。
わたくしは見とれていた窓外の景色から目を離し、ゆっくりと声のする方へ振り返ったのです。
「今日はお仕事なのでしょう。わたくしのことなら宜しいのに。」
「だめだめ。祥子さんを1人にしては置けないよ。早速イケメンと二人で話し込んでいたじゃないか。」
「ふふふ、そんなんじゃありません。」
「ははははは 大丈夫だと思っているのは祥子さんだけさ。」
半年ぶりに聞く石塚さんの笑い声は、変わらずこの方らしく陽気でした。

石塚さんは椅子を引きわたくしを座らせると、テーブルの上の2つのグラスにシャンパンを注いで一つをわたくしに差し出してくださったのです。
チン・・・グラスを軽く合わせます。
「半年ぶりだね。山崎からも聞いていたけどお変わりないみたいだね、祥子さん。」
「恐れ入ります。相変わらずお世辞が上手ね。」
「お世辞なんかじゃないさ。」
そば粉のブリニに乗せたキャビアをわたくしの口元に差し出すのです。
「ありがとうごさいます。」
わたくしは微笑んで、ひな鳥が親鳥から餌を与えられる様にして・・・贅沢なオードブルを口にしたのです。
ストイックなまでのそば粉の香りと口の中ではじけるベルーガの濃厚な味を、辛口のシャンパンが洗い流してゆきます。
石塚さんも、同じものを・・・そして生ハムを召し上がられます。
パーティがはじまってからずっと、来客の皆様にご挨拶にまわられていたのでしょうか。
乾杯の時に形ばかり口にしたシャンパン以外はほとんどなにも召し上がらず、お腹が空かれていたようです。
この時間も、下のパーティルームではイベントやご挨拶など・・・本来でしたらこなさなければならないお仕事が続いているはずです。
「抜けてらして大丈夫でしたの?」
2杯目のシャンパンを注いでいただいたところで、あらためて問いかけたのです。

Fireworks 7

「ただの飲み友達じゃないんだろう?」
「ふふふ、ご想像にお任せします。」
「ははは これだから男達は祥子さんに惑わされるんだな。」
そして耳元に囁くのです、今夜の君も素敵だよ・・・と。
「ずっとご連絡も下さらなかったから、わたくしのことなんてお忘れになったかとおもっていましたわ。最近はライブにもお越しになってないんでしょう。」
わたくしは、目の前で嫉妬心を少しだけ露にしてくださった長谷川さんに、少しだけ拗ねてみせたのです。
全ての愛奴と別れるから僕のものになれ、とおっしゃったまま2度と連絡をくださらなかったこの方に。
「ああ、忙しかったからね。竹上の仕事はさっきの会長の言葉じゃないが、なかなかハードなんだ。」
「そう。でもご活躍なのね、よかったわ。無理をしてお身体壊したりなさらないでくださいね。」
「ありがとう。」
長谷川さんのグラスはもう空いていました。クルーに手を上げて、新しいワインを求められます。

「彼にもこの身体を括らせてるのか?」
「ふふふ、知りません。」
ワイングラスを下げたクルーがこちらに背を向けたとたんに、長谷川さんはどきっとするような質問を囁かれたのです。
わたくしは、恍けることにいたしました。
全くなんのしがらみもないお二人ならともかく、お仕事で利害関係のある方達です。個人の性癖に関わることをうかつに口にすることなんて・・・できなかったからです。
「別に、そういう意味で聞いたわけじゃない。」
長谷川さんには、わたくしの答えの意味が通じたようです。
「僕だってとても他人には聞かせられない『趣味』の持ち主だからな。」
そうなのです。この方はわたくしが存じ上げている方達の中でも最もハードなS性を持った方だったからです。

都心から少し外れた離ればかりが立ち並ぶ宿で、一晩中わたくしを縛り・吊り・鞭打ち・責めた方でした。
夕方に待ち合わせにいらした車の中から、明け方外が白みはじめるまで、ずっと・・・わたくしはこの方の手で<行為>の持つ意味を教え込まれたようなものでした。

長谷川さんが赤ワインを浸した指で・・・わたくしの二の腕を横にふた筋・・・辿ってゆきます。それはわたくしを高手小手に縛った時に、赤い縄が肌の上に残す痕と同じ場所だったのです。
「もう、こんなところで・・・だめ。」
声に媚びが混じらない様に、ざわめきに包まれたパーティ会場の他の方に聞こえない様に・・・わたくしは背の高い彼の耳元に唇を寄せると、長谷川さんをそっと嗜めたのです。
「わかってるよ。祥子さんに逢ったら、抑えていた気持ちが我慢出来なくなりかけてる。これから、ここで・・・」

「失礼します、加納様でらっしゃいますか?」
「はい。」
わたくしに声を掛けていらしたのは、パーサーの男性でした。
「特別室にお連れする様にと、申し遣っているのですがよろしいでしょうか。」
ご一緒にいる長谷川さんのことを気になさっているようでした。
こんな風にわたくしを呼び出すのは・・・石塚さんしかありません。
そのことは、長谷川さんも察してくださったようでした。
「ごめんなさい。いいかしら、失礼させていただいて。」
わたくしは真っすぐに長谷川さんを見つめたのです。
「ああ、今夜は逢えてうれしかったよ。また連絡してもいいかな。」
「はい。携帯もメールも変わってはおりませんわ。」
「わかった。」
失礼致します。片手を上げて見送ってくれた長谷川さんに、パーサーは一礼して、わたくしをパーティールームから連れ出したのです。

Fireworks 6

「そうか、まだ一度も祥子さんに僕の仕事のことを話したことはなかったね。」
「ええ。」
二人の前に、新しいワインのグラスをトレイを持ったクルーが届けてくださいました。
ありがとう・・・目顔でお礼をしてお話を続けます。
「支配人からも聞いてないか・・・そうだな話したりしないな。僕はね、設計事務所に勤めているんだ。」
「設計家の先生?一級建築士さんなんですか?」
「ははは 一級建築士だが、先生じゃないな。ある設計家の個人事務所の一スタッフだよ。」
「そうでしたの。」
スタッフとおっしゃっても、相応の実力をお持ちなのでしょう。
センスの良い装いをされた3人の若手を、部下だといってお連れになっているのです。この方のご様子なら、チーフ格以上、いえ設計事務所の主宰者の次席クラスであることは間違いないでしょう。
「去年から今年にかけて、竹上が手がけた商業施設の設計をウチの事務所で扱ってね。それで招待されたんだよ。」
「そうでしたか。」
「ところで、祥子さんは誰に招待されたのかな。たしかこの業界の人じゃなかったよね。教えてくれないか?差し支えなければでいいけど。」
招待されたのだと言っておきながら、たった1人で周囲のどなたに気を遣うことも無く、長谷川さんだけに向き合っているわたくしのことが流石に気になられたようです。
それでもダイレクトに質問なさらない長谷川さんに、彼なりの思いやりや男としての慎みも感じたのです。

隠す必要はないでしょう。
いえ、たとえ隠してみたところで知られてしまうのは時間の問題です。
「あの方なの。」
まるでただの知り合いなのというように、わたくしは視線の先をゆく竹上建設のトップ3のうちのお1人を示したのです。
「竹上の次男坊か。」
「ご存知なの?」
「ああ。竹上建設の専務で、竹上開発の社長をしている切れ者だよ。さっき挨拶した社長より、やり手かもしれない。」
「そう、そんなに凄い方なの。」
わたくしが存じ上げているのは石塚さんの、プライベートのほんの一面だけでした。お仕事に関しては・・・そう、年末に一度だけディベロッパーなんだよ・・・と教えていただいただけでした。
建築業界でディベロッパーといわれる企業は大小含めいろいろございます。まさか、これほど大きな企業のトップをなさっている方だとは、あの時想像もしなかったのです。
わたくしとご一緒の時の石塚さんは1人のとても魅力的な男性でした。
趣味の良さやフランクな態度の中に潜む優しい心遣いや・・・知識や行動力に優れたものお持ちになった希有な男性のお1人でした。
特に、社会的な立場を持ち出してわたくしの関心を引くことをただの一度としてなさらない方でしたから、わたくしも1人の大人としてあえて質問することもしなかったのです。

長谷川さんは一瞬・・・優秀な設計士としての顔を捨て、牡の表情を浮かべたのです。
「祥子さん。この業界じゃあたりまえのようなことも知らないってことは、石塚専務とどんな関係なんだい?」
「ん~、そうね飲み友達かしら。」
会場の一番端のテーブルから、石塚さんがワイングラスを掲げて・・・忘れてないよ・・とわたくしに合図をしてくださいます。
わたくしも同じ様に遠くの石塚さんに向かってグラスをあげてみせたのです。

Fireworks 5

長谷川さんだけでなく、ほんの少しだけしか言葉を交わしたことのないお連れの方達までわたくしのことを憶えていてくださったなんて光栄です。
微笑んで、3人の方に向かって軽くワイングラスを掲げました。
「こんな風にお逢いしてあなたのこと困らせてしまったかしら?」
「いや、誤解するならさせておけばいい。僕が祥子さんに逢いたがっていたのは本当のことだからね。」
「お上手ね、最近はライブにもお越しにならなかったのに。」
そうなのです。ライブどころか・・・昨年の秋・・・わたくしの背中に鞭痕を付けた夜以来ずっと梨の礫だったのですから。
また連絡するよと、おっしゃっていたのに。
あれほど熱心にわたくしを口説かれたのも、所詮は行為の上での睦言の類いだったのだと、わたくしは自分自身を納得させていたのです。
それでも・・・ふふふ、ご連絡の無かったことで長谷川さんをこれ以上責めてみても、野暮なだけです。

「とにかく元気そうで良かった。」
「ありがとうございます。」
わたくしが含み笑いをして取り上げたグラスを見て、長谷川さんもご自分の白ワインに手を伸ばされました。
チン・・・ 二人は軽くグラスを交わして、長い間の彼の不在に和解をしたのです。

出航の時間が迫ってきたようでした。
長谷川さんとお話している間に、先ほどブリッジの下でご挨拶をしてくださった、石塚さんとお父様・お兄様の3人が会場に入ってらっしゃいました。
クルーの方達が、窓辺のカーテンを一斉に閉めてゆきます。
ふっと管弦楽の調べが止まったと同時にパーティルームの明かりが落とされました。
正面のステージにスポットが当たります。
そこには、石塚さんのお父様がいらっしゃいました。

”出航に先立ちまして、竹上建設会長・石塚重孝よりご挨拶さしあげます。“
今夜の司会者の方でしょうか、女性の声でアナウンスがありました。
「こんばんは、TAKEGAMI DREAM NIGHT にようこそお越しくださいました。お盆休暇のこの時期、最近では工期に押されなかなか思うような休暇がとれないことも多いのですが、」
ははは・・・会場のあちこちで笑いが起こります。この気軽さが、ここにいらしている方達の陰の団結力の強さを感じさせました。
会場のそこここで、クルーの方達がお客様にシャンパンを満たしたグラスを届けてらっしゃいました。わたくしたちの前にも、二つ。
「せっかく都内にいらっしゃるならと、3回目のディナークルージングを開催することにいたしました。今年のお客様は日頃の行ないがさぞや宜しいのでしょう、今夜は偶然東京湾大華火大会とぶつかりました。航路が例年とは少し変わる様ですが特等席で花火をお楽しみいただけます。私共、竹上建設にご協力いただいている皆様へのささやかなお礼です。約3時間のディナークルーズをどうぞお楽しみください。」
パチパチパチパチ・・・・。
会場にはすでに80名近いお客様がいらっしゃいました。全ての方からの握手を受けて、お見かけしていた厳格な雰囲気よりもユーモアのある石塚さんのお父様のご挨拶が終わりました。

”それでは、乾杯に音頭を竹上建設社長・石塚雅人が取らせていただきます。“
「こんばんは、石塚でございます。今夜はお盆時期の東京にも関わらず、たくさんのお客様にお越しいただき誠にありがとうございます。竹上を代表しましての挨拶はさきほど会長がさせていただいております。これ以上の長いスピーチは野暮というものでしょう。どうか皆さん、心行くまで東京湾の夜を満喫なさってください。乾杯!」
乾杯! 乾杯!
いっせいに上がった声とともに、シャンパングラスが掲げられます。
カーテンが閉まったときと同様に一斉に引き開けられ、照明が輝き、管弦楽の演奏が再開されました。
窓の外は、夕焼け空に変わっていました。

「長谷川さんは、竹上建設の方なんですの?」
このパーティが竹上建設のお取引先様をご招待してのものだと、先ほどのお二人のご挨拶でわかりました。
その会場にいらっしゃるなら、長谷川さんもきっとその関係者なのでしょう。

Fireworks 4

わたくしを招待してくださった石塚さんは・・・石塚専務は・・・今日のおもてなしの中心人物のおひとりのようでした。
きっとわたくしだけにかまけていることなど出来ないのでしょう。お呼びしたお仕事関係の方達とお話しするのが、あの方の今夜のお仕事の一環なのですから。

人のざわめきや、語り交わす方達を見ているのは、それだけでも充分に楽しめました。
ましてや、わたくしにはお仕事上まったく関係のない業界の方達なのです。
どなたにも気を使う必要がないのなら・・・はじめて知る建築業界の方達のパーティを、わたくしなりの好奇心で気ままに楽しむつもりになっていたのです。
花火と客船での夜景の綺麗な東京湾クルージンング。
石塚さんとご一緒に居ることができなくても、シチュエーションだけで充分に優雅な一時に、わたくしはシャンパンの一口目からほんのり酔いはじめていたのです。

「祥子さん?祥子さんですよね。」
「えっ・・」
赤ワインのグラスに手を伸ばしかけたサービステーブルで、わたくしは思わぬ方に声を掛けられました。
昨年の夏、蝉時雨の降る庭で催されたジャズライブでお逢いした・・・長谷川さんでした。
今夜も記憶にある彼の姿と同じイメージの黒のお召し物で、さらさらしたアッシュグレイの髪も記憶に残っているままで・・・わたくしの隣に立ってらしたのです。
「お久しぶりです。思わぬところでお逢いしますわね。」
「どうして、こんなところにいるんですか?」
極めて限定された業界の、招待客しかいない場所に、わたくしが居ることに驚いていらっしゃるのは解りました。
ということは・・・この方も少なくとも建築業界の方なのでしょう。
「知り合いにご招待いただきましたの。長谷川さんは、今夜はお1人?」
「いや・・・」
そうおっしゃって振り向かれた先には、以前ジャズライブの会場にもご一緒にいらしていた3人の男の方達がいらっしゃいました。
「祥子さんは、どなたと?」
「ふふふ、わたくしは1人なんです。」
サービスの男性が差し出してくださる少し冷えた赤ワインを受け取りました。
お友達とご一緒なら、わたくしが長谷川さんを独り占めするわけにはいかないでしょう。
それでも、どなたも知り合いの方がいらっしゃらないという状況よりは、ほんの少しだけ気持ちが浮き立つのを否定することはできませんでした。
「そう。どの席にいるんだい。ちょっと待っていてくれないか、一緒に飲もう。」
「ご一緒にいらした方達は、よろしいの?」
「ああ、同じ事務所の部下達だからね。久しぶりなんだ、いいだろう。付き合ってほしいな。」
「ええ、長谷川さんがよろしいのでしたら。」
あちらよ・・・。
わたくしは長谷川さんに先ほどまで1人で座っていたテーブルを指差しました。幸い、少し死角になる小さなテーブルは、まだどなたも座ってらっしゃいませんでした。
わたくしは、立ち話を始めた上司を気にしてこちらをご覧になっている長谷川さんのお連れの方達に会釈をすると、夏らしく少し冷やされた赤ワインを手に一足先にテーブルに戻ったのです。

「おまたせ。」
長谷川さんがいらしたのは、本当にまもなく・・・でした。わたくしはほんの一口二口・・・ワインを楽しんだばかりだったのですから。
お酒だけを前にしているわたくしのために、彼の手にはいくつかのお料理を盛りつけた2つのお皿がありました。
「ふふふ、これくらいの時間なんて、待つうちになんて入りませんわ。」
「ああ、彼らも祥子さんのことを憶えていたからね。こちらに行くといったらすぐに解放してくれたんですよ。」
スタイリッシュな3人の部下の方達が、こちらのテーブルをごらんになっておりました。
「僕が誘ったんじゃないかとからかわれた。」
少しだけシニカルに見える微かな笑みも、記憶のままでした。

閑話休題(インターミッション) 10-1

誠に、申し訳ございませんでした。

「美貴さんのどこがお好き?」投票で、その他の方にコメントをお願いしておきながら設定を間違えてコメントが書き込めなくなっていました。
お願いをしておきながらこの無作法・・・どうかお許しくださいませ。
誠にお手数をお掛けしてしまいますが、あらためて投票していただくか、この記事にコメント(管理人のみでも結構です)していただければ幸いです。
この場を借りてお詫びとお願いをさせていただきます。

Fireworks 3

映画タイタニックのオープニングの乗船シーンを思い出したと言ったら言い過ぎかもしれません。
それでも、接岸した船と桟橋をつなぐブリッジには日よけが付けられ、数時間のクルージングとはいえ優雅な<客船>の風格を醸し出しておりました。
ゲストハウスからブリッジまでの間を、それぞれに装った方達が三々五々歩いてゆかれます。
少し和らいだとはいえまだまだ強い夏の日差しの中、ブリッジの下には3人の男性が立ってらっしゃいました。
本日のパーティの主催者のようでした。
先ほどわたくしの前に受付をされていた4人の他にも、数人の方達と挨拶を交わしていらっしゃいます。お客様を迎えるがっしりとした壮年の二人の男性と、そして少し年配の男性。3人共に個性的なのですが、お客様に向ける笑顔がとても似てらっしゃいます。
その・・・年配の男性の顔にわたくしは見覚えがございました。以前見たことのある経済誌でしたでしょうか。竹上建設の会長をなさっている方のはずです。
TAKEGAMIとは<竹上建設>のことのようでした。
並んでお客様を迎えている3人のなかのお1人が、わたくしに向かって軽く手を上げたのです。
満面の笑みを浮かべた石塚さんでした。

お仕事の関係のお付き合いの邪魔をしてはいけないと、わたくしは少しだけ歩調を緩めました。石塚さんにご挨拶をするにしても、前の方達が船に向かわれてから、と思ったからです。
「祥子さん、良くきてくれたね。」
5・6人のお客様が誘い合う様にブリッジに上がられたところで、石塚さんが駆け寄ってらっしゃいました。
「お招きありがとうございます。東京湾クルーズなんて、すてきだわ。」
「いやぁ、そう言ってくれるとうれしいよ。紹介します、父と兄です。こちらは加納祥子さん。グラフィックデザイナーをされている方なんですよ。」
「ようこそ。いらっしゃいませ。」
年嵩の白髪ながら鋭い眼光の男性が軽く会釈を返してくださいます。
「はじめまして。楽しんでいってください。」
「ありがとうございます。」
石塚さんよりもほんの少し優しい風貌の男性は、握手を求めて下さいました。
すっと伸びた優しげだけど力強い手を握り返して、わたくしは石塚さんを見つめたのです。
「詳しい話は後でゆっくり。もう中のパーティルームではお料理を振る舞っているから、涼しい船内で出航までの時間を寛いでいてください。」
「はい。それでは、お先に失礼します。」
もう、次のお客様がいらしていたようです。
石塚さんとは視線と言葉を交わしただけでした。それでもにこにこと見送って下さる彼をもう一度見やると、わたくしはブリッジをゆっくりと上がってゆきました。

「ようこそ、シンフォニーへ。どうぞ右手のパーティルームへいらしてください。」
船内に入ると、制服を着たクルーが案内をしてくださいました。
クイーンエリザベス号で過ごしたときも感じたのですが、客船という空間は・・・たとえこのクラスのものでも<船>のもつ狭苦しさを感じさせない工夫がされているようです。
通路やドアはさすがにホテルのものとは比べ物になりませんが、それでもエンペラーと書かれたお部屋には広々とした空間が確保されていました。
パーティールームは立食形式のようにお料理が配されていますが、それとは別にいくつもの小さなテーブルと椅子の用意されている居心地のよいレイアウトに整えられておりました。
すでに50人以上のお客様でにぎわっておりました。
ほとんどが、背広の男性。そして、同じく仕事帰りのようなスーツ姿の女性が1/5ほどいらっしゃいました。そして、この船でのクルージングに相応しいパーティウェアの女性がちらほら。
どの方も数人の知り合いの方がいらっしゃるようで、お酒のグラスを手に、小皿にとったお料理を前にすでに話に花を咲かせている方がほとんどでした。
パーティ・ルームの正面奥にはステージが設けられ、管弦楽のカルテットが心地良い音色を奏でています。
一人きりのわたくしは、クルーが運ぶトレイからシャンパンをいただいて、東京湾を眺めることができる窓際の小さなハイ・テーブルへと向かいました。

Fireworks 2

お盆時期の東京です。
人はいつもよりも少ない筈なのに、その日はなぜか新橋から浜松町にかけての駅は沢山の人で賑わっておりました。
羽田に向かうとは思えない、カジュアルな装いの方達ばかりです。
余裕を持って出て来たつもりでしたのに、17時30分と書かれていた集合時間まであと少ししかありません。
わたくしはその場には不似合いなスタイルで、人ごみを避ける様に駅の北口からタクシー乗り場を目指しました。

「日の出桟橋をお願いします。」
「かしこまりました。」
とても感じのいい運転手さんでした。ほんの僅かな距離ですのに、朗らかにお返事してくださったのです。
「凄い人ですのね。今日はなにかあるんですか?」
「ああ、花火があるんですよ。」
「えっ、花火ですか?」
「昨夜の雨のせいで順延したんですよ。お台場の方が綺麗なんですがここいらでも結構見でがありますからね。あの、お停めするのは桟橋の入り口でいいですか。」
人は沢山歩いていましたが、車はさすがに少なかったのです。
詳しい話を聞かせていただく前に、タクシーは目的地に着いてしまいました。
「ええそうしてください。ありがとうございます。」
ありがとうございました バフッ・・・ 運転手さんの声とリアドアを閉める音を残して、タクシーは走り去ってゆきました。
クルージングと花火。
本来なら別の日に行なわれる筈だった二つの出来事が、天候のせいで偶然に重なってしまったようでした。

日の出桟橋のゲートを潜ると、通りの喧噪はわずかに遠のいてゆきました。
ゲストハウスにはテーブルが2つ並べられ、スーツで正装した女性が受付をしてらっしゃるようです。
わたくしの前には4人の男性が受付をなさっていました。皆さん、会社の役職につかれているくらいの年頃の男性で、顔見知り同士のようです。
にこやかに談笑しながら、慣れた手つきで受付に名刺を差し出していらっしゃいました。
受付の女性はその名刺を受け取り、名簿のチェックをしています。
今日はプライベートでの外出でしたから、わたくしは名刺を持って来てはいませんでした。まさか受付に必要だとは・・・。
でも、たしか・・とパーティバッグの中を確認してみたのです。以前にこのバッグを持ってお仕事関係の方の慶び事にお邪魔した時に入れておいた名刺のうち2枚だけが内ポケットに残っていました。
「いらっしゃいませ。」
「おねがいします。」
上品な微笑みと明るい声で迎えて下さった受付の女性に、わたくしは、招待状に名刺を添えて差し出したのです。
その女性は招待状の差出人の名前を確かめるとリストにチェックをし、わたくしの名刺とともに返してくださいました。
他の方の名刺は、受け取ってらっしゃるのに・・・です。
「いらっしゃいませ、加納様。石塚専務よりうかがっております。どうぞ、船へいらしてください。18時の出航ですが、もうご乗船いただけます。」
「ありがとう。」
狐につままれたようでした。
それでも、なにか訳があるのでしょう。
今日のこのご招待いただいたパーティの内容すら、その実、わたくしにはわかっていないのですから。
いってらっしゃいませ、二人の女性の声に送られてわたくしは桟橋に向かいました。

Fireworks 1

山崎さんと地下のバーで再会し、結城さんのお話を聞かせていただいた3週間後。
わたくしの手元に一通の封書が届きました。
宛名はありません。
差出人の所には<石塚 胤人>とだけ書かれていました。
あの・・・年末に届いたカードと同じです。きっと望月さんが直接こちらにお持ちになったものでしょう。

封筒を開けると、そこには・・・
 『TAKEGAMI DREAM NIGHT in Symphony』
という文字だけを中央にくっきりと印刷したカードが1枚入っていました。
そしてその下にはかっちりと力強い文字で手書された次のようなメッセージが、メールアドレスと共に記されていたのです。

 祥子さん、お待ちしています。
 都合がよければ手続きの関係上
 フルネームをメールで教えてください。 石塚

石塚さんからのお誘いのようでした。
カードの裏面もシンプルなデザイン処理がされていました。日時と日の出桟橋の文字だけが右下に小さく書かれていました。
Symphonyとは、たぶん東京湾クルーズのための観光船のことでしょう。
でも・・・TAKEGAMIっていったいなんのことなのでしょうか。
様々な疑問はありましたが、お誘いいただいた日曜日。
たまたまわたくしのスケジュールも空いておりました。流石に、お盆休みの中の日曜日だったからです。
以前に東京湾クルーズでのパーティは経験がございました。
優雅な一時を半年ぶりに石塚さんとご一緒するのも一興かと、手書きされていたメールのアドレスにお返事をする気になりました。


お約束の日は二日続いた通り雨のせいでしょうか。
出掛けるころには夏らしい熱気のなかにも微かに風がそよぐ過ごしやすい天候になっていました。
雲の流れが速いのは・・・台風が近づいているせいかもしれません。
日の出桟橋が集合場所なら、多分間違いなく客船でのクルージング・パーティなのでしょう。
同じ東京湾でも屋形船なら和服のほうがしっくりいたします。
でも、シンフォニーでのパーティならドレスに近い装いのほうが引き立つはずです。
その夜は、黒の総レースのワンピースを選びました。
素材は上質だけれど、デザイン的には華美になりすぎないシンプルなものです。お正月に山崎さんがプレゼントしてくださったマリエのように、肩で留める黒のインナードレスがセットになっていました。
どんなパーティなのか、どなたがいらっしゃるのかさえ解りませんでした。二人きりのお食事会ではないことだけは・・・あのインビテーション・カードで想像できたのです。
わたくしに出来ることは、お誘いしてくださった石塚さんに恥をかかせないことだけでした。

髪型は、一瞬アップにしようかと迷いました。
でも、このワンピースには決め過ぎで嫌味かもしれません。さらりと光沢のあるストレート・ロングの髪を背中に流しました。
ランジェリーは、黒のレースの繊細なものにいたしました。レースのスカラップに少しだけ金糸が使われた贅沢な素材は、まるで夏の夜空にきらめく星のように美しく見えました。インナードレスがありましたからスリップは付けずに、ハーフカップのブラとハイレグのパンティ、そして極薄の黒のストッキングを選んで脚を通しガーターベルトのストラップに留め付けたのです。
足元は、ドレスの雰囲気に合ったエナメルのバックストラップパンプス。アクセサリーは付けずに、バッグはゴールドに鞣された革のパーティバッグを選びました。

閑話休題(インターミッション) 10

人気投票の結果をお届けしたばかりなのですが、皆様に・・・美貴さんファンの方にお願いがあります。
5日間限定のアンケートを実施します。
お題は・・・
美貴さんのどこがお好き?


人気投票で一躍単独2位に躍り出た美貴さんの魅力を教えてください。
なお、項目に無い方はその他をチェックしてコメントに理由を書いてください。
コメントはわたくししか見ることができないので、何でもご自由にどうぞ♪

ぜひわたくしも気付かない、美貴さんの魅力を教えてください。

閑話休題(インターミッション) 9-2

涼しかった9月に思わぬ残暑がまいりましたね。
<銀幕の向こう側>可愛がってくださってありがとうございました。
予定よりも遅れてしまって申し訳ございませんでした。
次の物語に進む前に、閑話休題(インターミッション)をお届けいたします。
今回は男性人気キャラクターアンケート♪
総数101票を頂戴いたしました。前回4月の投票の時の倍以上の票数で・・・これも皆様のご協力の賜物でございます。ありがとうございました。
人気投票は、それぞれのキャラクターのプロフィールのご紹介をしてまいしましたが、既に第一回でご紹介済みのキャラもございます。
そこで、今回はプロフィールのご紹介は新キャラクターのみ。
第一回の投票から参加されている男性諸氏は、ふふふ・・・その方達の日常をちょっとだけ覗き見してみたいと思います。
わたくしに、男性の方達とお逢いしていない時間がある様に男性の方達にもわたくしとご一緒ではないお時間がございます。
そんな時間を少しだけでも、知っていただけたらと思いました。
それでは、続きを・・・どうぞ。

 

銀幕の向こう側 33

男性は肩に担ぎ上げるようにしていたわたくしの両脚を百合の花びらを開くように放すと、改めてキスをして下さったのです。
「ぁふぅ・・ん・・」
「よかったよ、祥子。逝く君も綺麗だった。」
「ありがとう・・ござい・ま・・した。感じてくださって・・うれしい。・・ぁっ」
わたくしの中に全てを吐出した男性が・・・ひくついておさまらない締め付けに・・抜けていったのです。
「恥ずかしいよ、こんなに出してしまった。」
男性は苦笑いをして、二人の蜜を拭うためのティッシュを探していらっしゃるようでした。
「わたくしが・・・」
まだ、気怠い余韻に浸ったままの腰を曲げて・・・唇を男性の塊へと近づけたのです。
そして・・・舌を・・唇を・・・全てを使って、わたくしの哀しみを慰めてくださった男性への感謝を込めて、塊を清めました。
「ほんとうに、祥子は極上のMだ。」
「あん・・だ・め・・」
芯に残る精液までを啜りとったわたくしの唇に・・・男性はもう一度キスをなさったのです。

「シャワーを浴びておいで。」
「いえ、あの・・・このまま、あなたから頂いたものを納めたままで、今夜は眠らせていただいてもいいですか?」
男性の耳元に唇を寄せて、小さな声で囁いたのです。
「いいよ。祥子は、可愛いね。」
ようやくサイドテーブルから見つけたティッシュを差し出して、男性はわたくしのわがままを許してくださったのです。
「もう、お眠り。朝も近い・・・。」
空はまだ暗かったのです。
でも、その暗さは奥に陽の明るさを秘めた色でした。 
男性の腕の中で、ゆっくりと落とされてゆく照明に・・・微睡みが訪れるのをわたくしは拒むことなどできはしませんでした。


祥子からの手紙ー14

『わたしを愛するなら、わたしの淫らさまでも愛しなさい。』
映画に出て来た主人公の母親は、息子にそう言っておりました。
愛すること・・・愛されること。
その難しさをわたくしは心から愛した男性に思い知らされ
いまもまだ次の愛する方を定めることができずに
彷徨い続けているのです。

わたくしを、わたくしのままにお伝えし解り合うために
もっと自分自身を知る必要があると
昨晩お逢いした男性は教えてくださったように思います。

男性は、仲畑です・・・と
翌朝、朝食のテーブルで自己紹介をしてくださいました。
声優さんをなさっていて
ご一緒に見たあの映画の父親の声の吹き替えを
DVD化に際して担当することになっているそうです。

また逢えるといいですね。
とても私好みの女性ですよ、祥子さんは・・・
仲畑さんはそうおっしゃいました。
それでも、わたくしたちは連絡先を交換することなく
朝のホテルでお別れしたのです。

二人の感性が一緒なら、またいつか映画館で逢えるからね。
そう笑った仲畑さんはやはり上品な紳士でした。

今日も暑い一日になりそうです。
一度着替えに戻って、午後には打ち合わせが待っています。
笑顔で今日を迎えられたことに感謝して・・・
それでは、いってまいります。

銀幕の向こう側 32

ギシっ・・・
「君は本当に従順な極上のMだよ。私のS性をこれでもかと刺激してくる。何も言わなくても白いヒップを高く突き出したこの姿が、その証拠だよ。」
「ああぁぅっ・・・」
男性は指を引き抜くと、一気に昂りを押し入れたのです。
ねじれた・・ごつごつとした形と大きく張り出した先端が・・・幾度もの快楽に晒されて絶頂を味わった胎内を遠慮なく押し広げてゆくのです。
「くっ・・・締まる。こんなに濡れているのに。」
視界を奪われるのは、これほどまでに他の感覚を研ぎすますものなのでしょうか。わたくしの身体は、男性の塊の感触を胎内で確かめようとでもするように・・・いつもより強く掴み・求めているようでした。
「ぃぃいい・・ぁはぁぁん・・・」
わたくしの中を、ごつごつした塊が不規則に抉り嬲ってゆきます。
その感覚はまるで幾人もの方に次々に犯されている時のようでした。
「祥子、いいよ。ああ、いい。」
男性の腰の動きは、お見かけした年齢からは想像もできないほどに激しく躍動的でした。突き上げる度に違うポイントを刺激し・・・掠れているわたくしの声を・・なお・・淫らに引き出してゆくのです。

「逝きそうだ・・・あぁ。」
突然、奥まで入っていた塊を引き抜くと・・・男性はわたくしを仰向けにしたのです。
「祥子の顔を見て逝きたい。」
目隠しのスカーフをむしり取ると、男性はわたくしの瞳を見つめながら一気に奥まで突かれたのです。
「あぁぁぁ・・・やぁぁぁ・・・」
突然に与えられた視界は、わたくしの想像よりもずっと明るかったのです。
男性の塊はわたくしの中に納められ・・・より奥へ・奥へと・・抽送を繰り返してゆくのです。
「ふふ こんなに揺らして私を誘惑するね。」
「ああぁぁん・・・」
男性の腰の動きにあわせて揺れる左の乳房を掴むと、堅く立ち上がった乳首をねぶり・・・甘噛みします。
「ほんとうに敏感な身体だ。こうするたびに・・」
舌が乳首の先端をねぶってゆきます。
「私のものをくいくい締め付ける。たまらないよ。」
「ぁぁぁああ・・・はぁう・・」
もう一方の乳首を甘噛みされて・・・わたくしはもうゆとりを無くしまっていました。
真っ白く意識を蕩けさせる絶頂はもうそこまで来ていました。

「あぁぁ・・ゆるしてぇぇ・・いきますぅ・・ぅぅ・」
「わかった。一緒に逝こう、祥子」
男性は上体を起こすと、わたくしの両脚を肩に担ぎ上げ、腰の動きを凶暴なまでに早めたのです。
わたくしの蜜壷の最奥までにある、全ての淫楽のポイントを刺激する塊に・・・簡単に追い詰められます。
「祥子いいよ ああいきそうだ」
「ああ・・いくぅぅ・・・いっちゃうぅぅ」
「逝くよ、祥子!!祥子!いけっ・・!!!」
うっ・・ 男性は激しく突くと、男性の茂みをわたくしの肌に擦り付けるほどにした腰の動きを止めて・・・熱い精を放ってくださったのです。
ひく・・ひくん・・脈打つ動きが・・・わたくしの身体なのか、男性の塊なのかすら・・・わからなくなるほどの快感が四肢の先まで駆け上っていったのです。

銀幕の向こう側 31

「避妊具がないな。君を抱きたいが・・・」
目隠ししたままのわたくしにはわかりませんが、この方はどんな表情でおっしゃっているのでしょうか。
「あの・・」
「なんだい。」
「ピルを飲んでいます。妊娠の可能性はありません。抱いて・・・ください。」
改めてこんなことを問われたことも、口にしたこともありませんでした。
暗黙の了解のようにわたくしを抱かれた方達とは、この方は何かが違いました。

男性の手がバスローブの紐にかかったのです。

「わかった。嬉しいよ。」
はら・・・重みのあるローブの前が開かれます。温もっていた乳房の熱がふっと甘い香りを伴って室内に広がってゆきました。
「君の好きなふうに抱いてあげるよ。どうされたい、言ってごらん。」
男性はまだわたくしに触れてはいらっしゃいません。
ただ、その視線がわたくしの身体の上を這っていることは・・・わかりました。
「おねがいです。逝く時にわたくしの名前を呼んでください。」
「わかった。なんて呼べばいい?」
「祥子です。」
「しょうこ・・・君にぴったりの名前だね。」
「ありがとうございます。」
「祥子、綺麗だよ。」
わたくしの肩を前に倒すと、両腕から一気にバスローブを抜いたのです。
そして、力任せに男性の方へと引き倒されました。

「あっ・・・」
腰を曲げ・・・横様にベッドへと転がされたわたくしの背中の窪みに男性の舌が這ったのです。
「ぁあぁぁ・・・っ・・・」
舌はわたくしの背中をゆっくりと・・・背骨を確かめるかのように這い上がって来ます。
肩甲骨の端を右・左とまぁるくたどって・・・今度は首筋へ・・・。
くちゅぷ・・・ 男性の指がわたくしの花びらを包む丘を開いたのです。
「はぁぁっ・・・」
「さっき綺麗にしてあげたのに、もうこんなに濡れているね。」
男性の声が耳元でします。
「やぁぁ・・」
「祥子はフェラチオをするだけで、こんなに濡れるのかい?」
「ちがぁい・・ま・ぁ・・すぅぅぅ・・」
否定の言葉がなんの説得力も持たないことは、わたくしが一番解っていました。
言葉通り、いまの男性の舌戯だけで、こんなにも溢れさせたわけではなかったからです。男性に拭われた時も・・イラマチオでも・・・わたくしの身体は男性の声と言葉に犯され続けて・・・反応し続けていたのです。
「ああ、もうこんなだよ。」
「ああぁぁ・・・だめぇぇ・・」
男性の左手の指は小指と薬指が真珠を・・・中指と人差し指が花びらと蜜壷を・・・親指が・・・姫菊を・・・同時に触れてゆきます。
そして、その全てが既に蜜に塗れていることを思い知らせるのです。
「また、溢れてくる。祥子は欲しくて我慢ができないのかな。こんなによだれをたらして、だらしないね。」
「ごめんな・・さぁぃぃぃ・・」
男性の言葉は、先ほどまで口にふくませられていたあの塊の感覚を思い出させたのです。はしたなく・・・幾度でも・・・新たな蜜が湧き出してしまうのを、止めることはできませんでした。
「仕方ないね。四つん這いになりなさい。」
男性は指を秘所から抜くことなく・・そう命じるのです。
「・・はぁぁ・・ぃ」
わたくしは、上体を俯せ・・・腰を・・・男性の手に繋がれたままに・・後向きに高く掲げたのです。

銀幕の向こう側 30

「ぁぁ・・ん・ん・」
ちゅぱ・・・ 引き離される唇からも水音がするほど、淫らなキスでした。
「本当に、君は従順だね。私がいない間いくらでもその目隠しを外すことができたはずなのに、そんなことを考えもしなかったようだ。命じたらそのままで待っている。きっと私が1時間戻らなければ、1時間そのままで待っているんだろう。」
わたくしに被いかぶさっている男性の身体からは湯で暖められた熱が立ち上り、その上・・・いまは何も身につけられていないようでした。
「こんな愛奴を持ってみたいものだ。」
男性がバッグの中にお持ちになっていたものは、Sの世界をご存知の方のものでした。でもご自身の口からはっきりと<愛奴>という言葉を出されたのは、はじめてのことだったのです。

ぎしっ・・・
男性が立ち上がりベッドの上に乗られたのが、マットレスの軋みでわかりました。
そして、わたくしの口元に男性の昂った熱い塊が触れたのです。
ぺちゅ・・・ 男性の言葉を待たずに、わたくしはその先端に舌を這わせました。
男性の求めている行為はこれしか考えられなかったからです。
ぺろぉ・・ぺちょ・・・ 舌先にたっぷりと唾液を乗せて、先端からくびれの裏側へ・・・そして脈打つ胴を順に茂みに向かって舐めてゆきます。
ぺちゃ・・・ 顔をあおのけて・・・塊を頬に・鼻筋に乗せるようにして男性の皺袋にも・・舌を這わせます。
ちゅぅく・・・ やさしく中のまぁるい珠ごと吸い上げて・・・右・左と・・舌でころがします。
ぺろ・ぺろぉん・・・ もう一度・・今度は皺袋の付け根から先端に向けて昂りの裏側を舌を左右にそよがせながら戻ってゆきます。
くちゅぅ・・・ そうしてからはじめて先端を含んだのです。くびれのすぐ下を唇の内側で締め付けて刺激してから・・・ずぅっと喉奥まで一気に含んだのです。
くぽぉ・・くちょ・・・ 男性の塊は、その細身の身体に似つかわしくないほどに猛々しいものでした。長さがあるというよりも・・・ごつごつと血管が浮き出しねじくれた・・・イメージだったのです。

「上手いね。いいよ。気持ちがいい。」
それまで黙ったまま、わたくしのなすがままにさせていた男性がはじめて言葉を発しました。
と、同時にわたくしの頭を両手でがっしりと掴んで、今度は男性が腰を動かしはじめたのです。
「男の身体を良く理解しているね。フェラチオが一般的になって、単に舌を這わせたり・口に含めばそれでいいと思っているだけの女も少なくない。が、君は違う。こんなフェラチオは久しぶりだよ。」
わたくしの頭をベッドヘッドに押しつけ、上顎を喉奥を遠慮なく突く男性の塊は・・・男の快感の証を滲ませはじめていたのです。
わたくしは、口内では舌をぬめり出した塊に絡め続け・・・そしてはじめて左右の手を・・・男性の柔らかな袋とその奥のすぼまりへと這わせたのです。
「ああ いいよ。その指も いい。このまま、君の口に逝きたくなってしまう。」
左の中指をすぼまりと皺袋の間を優しく押しつつ往復させてゆきます。右の手のひらは片方の袋を指先はもう一方の袋を同時にやさしく包んでおりました。
唇も舌も左右の手も、まったく別の意志を持っている様に・・・無心に動かしたのです。
「ここまでだ。」
塊が口内でひくひくと脈打ったと思った途端・・・わたくしの頭は引きはがされました。
「君はなんて女なんだ。あんなに綺麗に泣くのに、途轍もなく感じやすくて・・・こんなに性戯にも長けている。昼は淑女で、夜は娼婦・・・か。」
「いや・・・そんな風におっしゃらないで。」
ギシ・ギ・シ・・・ 男性がベッドを降り・・わたくしを覆っていた羽布団を剥いだのです。

銀幕の向こう側 29

「わたくしが、自分で・・・」
「いいんだ。」
肩先から両腕をそれぞれに拭き下ろします。
目隠しをされたままでも、自分の身体を拭うくらいのことはできます。なのに、男性はそのことすら許してはくれませんでした。

「ぁっ・・」
映画館からここまでの緊張感で強ばっていた首筋を、揉み込むように軽くタオル越しに圧迫してから、2つの貝殻骨を愛おしむように拭って・・・背筋を真っすぐに腰の頂きまで・・・。そのタオルは太ももの付け根までの淫らな曲面へも触れてゆきました。
「少し腕を広げてごらん」
「ん・ん・・」
男性の手が支えるタオルは、前にまわって同時にたわわな二つの乳房に触れてきたのです。
体側からふるぅんとした乳房の外側を頂きに向かって・・・でも頂きには到達せず。次には両手でたゆんと震える乳房を持ち上げる様にして下辺をやはり頂きの寸前まで。
デコルテから乳房の谷間に入り込んだタオルは、内側から押し広げるように・・・。はじめて頂きに達したパイル地の感触は、はしたなく立ち上がっていた先端を包み込むと、男性の指がタオル越しに揉み込むのです。
「ぁあっ・・・」
焦らされタオル特有の感触に高まっていた乳房の感覚は、一瞬の性的な刺激にもはしたない声を上げさせるのです。

そして太ももの狭間の茂みへ。
「おねがい・・・」
わたくしは、もうお湯ではないぬめりが溢れ出していることに気付いておりました。それを見られてしまう恥ずかしさに、一度拒否されていたにもかかわらずあらためて自分で・・・と懇願したのです。
「これも、お仕置きなんだよ。君が勝手に潮を吹いた後を私に始末をさせたんだからね。さぁもっと脚を開きなさい。」
男性の手がタオルを繰って、太ももの内側へ触れたのです。
「ふっ・・」「あぁ・・・」
ふと漏らされた男性の声が、わたくしの身体の変化に気付かれてしまったことのように思えました。
それでも、男性は何もおっしゃらず、手はことさらに事務的にタオルを動かしてゆくのです。
太ももの外側から膝裏を通ってふくらはぎへ・・・。足首を掴まれて足裏まで・・。
目隠しをされたままでも、していなくても、男性の手で拭われるという行為そのものの羞恥には変わりはなかったでしょう。
ただ1つ違うのは、目隠しされたわたくしには男性の視線がどこを彷徨っているかがわからなくて、一層の不安と羞恥を煽り立てたのです。
それでも、男性の手は乳房の後は、極めて事務的にてきぱきとわたくしの身体を拭って行ったのです。
髪を覆ったタオルを外し、わたくしの肩に備え付けのバスローブを掛けると、両手を通して前を重ねウエストで紐を縛ってくださったのです。
「さぁ、部屋で待っていてくれないか。」
わたくしの手を取って、部屋へと戻るのです。5歩・6歩・・・。
「ここだよ。」
腰を下ろす様に言われたのは、ベッドカバーを外したベッドの上でした。
「寒くはないかい。」
「はい。」
わたくしの上体をベッドヘッドに持たせかけて、足元には羽布団を掛けてくださいます。
「すぐに戻ってくるからね。」
「はい。」
男性の手がわたくしの肩を叩くと、すっと気配が離れていったのです。

シャァァァ・・・ 浴室で水音がします。きっと、男性がシャワーブースでシャワーを浴びてらっしゃるのでしょう。
室内には、まだシャンソンが低く流れていました。
どれほどの時間が経っているのか・・・目隠しをされたままのわたくしには、見当もつきません。
でもこの長い・・いいえ短い・・・時間の内に、今夜はじめてお逢いして哀しい恋心を慰めてくださった紳士のことをわたくしは信頼しはじめていたのです。

水音が止まりました。

パタ・・ン・・・ 浴室の扉が開いて。
「待たせたね。」
男性の声と体重が同時にわたくしの左側にやってきました。
「いいえ、そんなこと。」
ん・・・ 男性の唇が重ねられたのです。それは・・淫らなほどのディープキスでした。視界を奪われた上に、男性の両手で耳を塞がれたわたくしには、甘噛みされすすり上げられる唇の音も、絡め合わせれる舌の音も、注ぎ込まれ吸い上げられる唾液の音も・・・エコーを掛けた様に・・・脳内に響いたのです。

銀幕の向こう側 28

男性の気配が動き、後から声が聞こえました。
「外すよ。」
キャミソールの裾を上げて、ガーターベルトのウエストのスナップが外されました。はら・・りと、藤色のサテンと黒のレースの布片はわたくしの足元へ落ちてゆきます。
男性の手は、今度はキャミソールの背中をくいと下げたのです。後ろ手に括られ高くなった肩甲骨の間のブラのスナップを外す為でした。
そして・・・・ようやく手首のスカーフが解かれたのです。
「手を上げてごらん。」
男性の声が再び前からすると・・・ばんざいをするように上げた腕から、捲り上げられたキャミソールが抜き取られます。
「これで最後だね。」
自然に下ろした両腕から、ブラのストラップが抜かれました。

ざぁぁ・・。パチャ・・パチャ。
バスタブに注がれていた湯が止められたようです。
「これなら熱過ぎることはないだろう。こっちだよ。」
隠し切ることなど出来ないとはわかっていても、左腕で胸元を右腕で茂みを覆うわたくしの身体を男性の腕が誘導します。
「おねがい、目隠しを取って。」
わたくしの声は、掠れはじめていました。
何度となく上げさせられた喘ぎのせいなのは解っています。
「だめだよ。ちゃんと上がる時も私が手助けしてあげる。大人しく湯に浸かっているんだ。さぁ、右脚からだ。」
手を取って、バスタブへとわたくしを導くのです。
ホテルのバスなのです。この部屋に来て最初にバスルームを使わせていただいたときに目にした様に、決して深さがあるわけではありません。それでも、視界を奪われてお湯に身を浸すことにはかすかな恐怖心がありました。
「ちょっと待ちなさい。」
バスタブの中に膝下までの湯につかって立ってたわたくしに、男性が声を掛けたのです。
足音が離れて、次に戻ってらしたときに男性の腕にはタオルがありました。
「ここに腰掛けるんだ。」
わたくしを後ろ向きにバスタブの縁に腰掛けさせると、長い髪をタオルで器用に包んでくださるのです。失念しておりました。背中の中程まである長い髪がこのままでは酷く濡れてしまいかねなかったのです。
でも、女性の髪をタオルで・・・この方はなんでこんなことを上手になさることが出来るのでしょう。
「ありがとうございます。」 
「これでいい。ゆっくり、腰を下ろしなさい。」
もう一度90度身体を回転させられると、男性の手にすがる様にしてわたくしはバスタブにゆったりと身を長らえたのです。
「なにかあれば呼びなさい。」
「はい。」
もう30分以上も縛られていた両手首を、わたくしは湯の中で揉みほぐしておりました。程よい温度の湯は、幾度もの羞恥と淫楽に疲れた身体を優しく癒してくれました。

男性は、バスルームの戸を開けたままで無言で幾度も出入りをされていたようです。
ホテルの部屋に入ってすぐのカーペットは・・・わたくしのはしたない体液で濡れそぼっている筈です。それをきっと綺麗にしてくださっているのでしょう。
じゃぁぁ・・・ しばらくしてから今度は洗面台に水音がいたします。
ぱちゃぱちゃと・・タオルを洗われているのでしょうか?

そんな音が止まって数分。

「待たせたね。」
男性の声がいたしました。
「申し訳ありません。全部していただいてしまって・・・。」
わたくしは、湯に浸かり暖まることでぼぉっとして忘れかけていた羞恥が蘇って・・・身内から暖まったせいだけじゃなく頬を赤らめてしまいました。
「いいんだよ。私が命じてさせたことだからね。さ、湯が冷めてしまう前にでよう。」
男性が浴槽に入ってこられたのです。
わたくしの揃えて伸ばした脚を跨ぐ様に立つと・・・バスタブの縁に乗せられたわたくしの手を掴まれたのです。
「ゆっくり立ってごらん。」
男性の腕に引き上げられる様にゆっくりと、浴槽の中でわたくしは立ち上がりました。
男性が何を身に着けてらっしゃるのか、何も身に付けてらっしゃらないのか・・・わたくしにはわかりません。
濡れたからだを、彼に触れさせない様に、細心の注意を払うことしかわたくしにはできませんでした。
「こっちだよ。」
男性に導かれて足を下ろしたバスタブの外には、バスマットが敷かれていました。
「そのまま。」
ふぁさ・・・。大判のバスタオルがわたくしの肩に掛けられ・・男性の手で全ての水滴が拭われてゆきます。

銀幕の向こう側 27

「そこで待ってなさい。」
男性の声の向こうに柔らかなシャンソンが流れています。
ざぁぁぁぁ・・・・ バスタブにお湯が溜められる音がしました。
柔らかな湿度がエアコンで冷やされた身体に心地良く感じます。

男性の声が正面からいたしました。
「脚を開いて。」
「自分でいたします。おねがいです、スカーフを解いてください。」
こんな恥ずかしいことの後始末に男性の手を借りるなんて・・・とても考えられません。
「脚を開きなさい。」
後ろ手に縛られた手首を解くためには、男性がわたくしの後にまわるしかないのです。
なのに、彼の声は正面から動く気配さえ感じさせないのです。
「もう一度言うよ、」
わたくしは、同じ言葉が男性の口から繰り返される前に、脚を肩幅の半分ほど開いたのです。

「そう、いいこだ。」
男性の手が、Tバックのウエストに挟み込まれたままのコントローラーを外しました。
「ぁ・っ・・・」
小さな卵のようなプラスティックの塊は、入れた時と逆の手順でパンティの脇から引き出されます。
滑らかな曲面が逝ったばかりの敏感な真珠の表面を撫でる感触に、わたくしははしたない声を漏らしてしまったのです。浴室の構造が・・・その声をエコーを掛けた様に微かに重複させてゆきます。
カタっ・・・。きっと洗面台の上に置かれたのでしょう。
「・・っ・ゃぁ」
男性の手がガーターの留め具に伸びました。
「任せなさい。そのままでいるんだ。」
ぴちゃ・・ 左のストッキングが足元に水音を立てて落ちてゆきます。次いで右も・・・

潮を吹いたというはしたない姿のままでいる羞恥と、その後始末を全て初対面の男性にしていただかなくてはならないという恥辱にわたくしは、身を捩らずにいることが精一杯でした。
この方のことです。ガーターストッキングをこうして脱ぐものではないということくらい充分にご存知だったことでしょう。本来なら、最初に脱がなくてはならないのは・・・Tバックなのですから。
でも、きっとわたくしの羞辱を思ってくださったのでしょう。あえて、ストッキングから先に外してくださいました。
男性にとってはただの疎ましい後始末だったかもしれません。
なぜなら、彼の手はとても事務的にわたくしの肌に戯れに触れることも無く・・・この作業を進めていったからです。
そのことが、まるでわたくしがすごく汚れていることの証のように思われてしかたありませんでした。
それでも、男性の手は優しかったのです。

「ごめん・な・・さい。」
前にいる男性にひと言だけ声を掛けたのです。
「何で謝るんだい?」
わたくしの腰のあたりから、優しい声が聞こえます。
「だって・・・汚いのに」
「何を言ってるんだい。潮を吹いただけだよ、汚い訳ないだろう。この潮を飲みたがる男もいるくらいなんだよ。」
「いゃぁ・・」 
「目隠しをして自由を奪われ、ランジェリーを乱した君がフェロモンをまき散らしているんだ。鏡にいろいろな角度で映し出されている君に囲まれて、この場で押し倒さないでいるためにどれだけ私が努力しているか、わからないんだろうね。」
「ぁあっ・・みちゃ・・やぁ・・・」
そうでした。広いバスルームは至る所が鏡張りだったのです。
開きかけたままのドア、壁面、シャワーブース・・・そこにこの姿が映し出されているのです。
「でも、君は気持ち悪いだろう。だから私に任せなさい、いいね。」
Tバックのウエストに男性の指が掛かりました。
あれだけ感じ・達した後なのです。
愛液と潮でクロッチの周囲だけ濃く色の変わった藤色のサテンを、男性はご覧になっているはずでした。
ぴちゅ・ぅ・・・ 淫らな水音を立てながらランジェリーが肌から引きはがされ、ゆっくりと引き下ろされてゆきます。
「脚を上げてごらん。」
足首より下に男性の指を感じたわたくしは、小さく左足を、次いで右足をあげました。男性が見上げているとは思えませんでしたが・・・その仕草の淫らさは充分に解っておりましたから。

銀幕の向こう側 26

コツ・カツ・・コツ・カツ・・・コツ・カツ・・・
「ドアの開いている部屋があるみたいだね。」
「そうですね。お客様をご案内したあとで、確認をしてみます。」 
もう廊下を来る方の声が聞こえます。
この部屋に向かって真っすぐに伸びる廊下のはずれまで、お客様とホテルのスタッフが来ているのです。

「この扉が開いているのに気付かれたようだね。君のこの破廉恥な姿を見てもらうまで、もう少しだよ。」
「だ・めぇぇぇ・・・」
だ・め・・
この言葉は、扉を開け続ける男性に向けられたものなのか、蕩けてゆくわたくしの理性に向けたものなのか、もう解らなくなっていました。
コツ・カツ・・コツ・カツ・・ 足音がもうすぐ近くまで・・・
「ぁはぁぁぁ・・・・」
「逝きたまえ!」
くっ・・男性の指がローターのコードを引いたのです。
「ああっ・・・」
ビィィィ・・・ 敏感な真珠の表面へ直接強く押し当てられたローターに・・・わたくしは腰を振り立てて、極めてしまったのです。
脚元に・・・暖かな液体を大量に吹き出して・・・

パタッ 扉が閉められました。
コツ・カツ・・コツ・カツ・・・コツ・カツ・・・
ほんの少し遅れて、扉の前を通り過ぎる二人の男性の足音がしました。

わたくしはきつく唇を噛み・・声を押し殺して・・・立ったままで逝き続けておりました。
何が起こったのか、わたくしには解っておりませんでした。
一瞬にして生暖かい液体が絶頂とともに吹き出し、ガーターで吊られたストッキングに包まれた太ももを・・ふくらはぎを・・足首までをぐっしょりと濡らしていったのです。
「おねがい・・みない・でぇぇ・・・」
男性の手が玩具の振動を止めてはじめて、わたくしは我に帰りました。
所謂・・・排泄の感覚は全くなかったのに・・・おもらしをしてしまったように濡れそぼった下半身という事実がとても恥ずかしかったのです。
ちゅ・・ 男性の唇が、震えるわたくしの唇に重ねられました。
「潮を吹いたんだね。」
「し・お・・?」
「恥ずかしがらなくてもいい。漏らした訳じゃないからね。アンモニア臭など全くしないだろう。はじめてなのかい?」
こくん・・・ わたくしは声も出せずに頷きました。
いままで、何人もの方に濡れやすい身体だといわれ続けてまいりました。
それでも<潮を吹く>ということをしたことはなかったのです。
「君のはじめてを見せてくれたんだね、嬉しいよ。いいこだ。」
本当に、嬉しそうな声をなさるのです。

わたくしの体芯を揺さぶる官能は、驚きと共にようやくおさまりはじめていました。
それと同時に、このままの姿でいることに耐えられなくなっていたのです。
「おねがいです。解いてください。」
「手が痛くなってきたかな?」
「いいえ、でもあの・・・始末をしないと」
「そうだね。こちらにおいで。」
壁に持たせかけられていたわたくしの肩を、男性の手が前に引いて真っすぐに経たせてくださいました。でも、手首のスカーフを解いてはくださいません。
「こっちだよ。さぁ」
男性がわたくしの背に腕を回して歩いて行った先は・・・バスルームのタイルが足先にひんやりとした感触を伝えてきたのです。

銀幕の向こう側 25

「こんなに全身が敏感なら、この身体に溜め込まれる疼きも相当なものだろうね。」
「いやぁっ」
そんなこと・・そんなはしたない身体じゃ・・な・い・
「いけないと解っていながら、このまま溺れてしまいたくなる。罪作りな女性だね、君は。」
きゅっ・・男性の指が、まだランジェリーに包まれたままの左の乳首をひねり上げます。
「ああっ・・ゆるし・・て・・」
痛みに震え、一層きつく縒り合わせた太ももが、強い振動を与える玩具をもう一度強く花びらと真珠に押し当ててしまうのです。
「ぃやぁぁぁぁ・・・はぁぁ・・いぃぃ・・」
わたくしの身体は絶頂を堪えようとカタカタと震え出していたのです。

「そんなに大きな喘ぎ声を上げて私以外の人間に見られたいのかい。仕方ないね。」
「ちがう・・ぁ・ぁぁいやあっ」
次の瞬間、わたくしの右側の空気が大きく動いたのです。部屋の扉が・・・開け放たれたようです。
「・・んん・・んぁ・・しめてぇぇ・・」
喘ぎを漏らさないように噛み締めた唇の下で、わたくしはこのとんでもない行為を止めようとしたのです。
わたくしの右の乳房や腕には、室内のものとは違う温度の空気の流れが触れていました。
「見られたいんだろう。君がこのまま逝ったら閉めてあげよう。」
「お・ねがぁぁいぃぃ・・ゆる・してぇぇ・・・」
「そんな声を上げたら聞かれてしまうよ。」
どんなに堪えようとしても、発する言葉に艶めいた響きを抑えるなんてもう出来なくなっていました。

チン・・ 先ほどわたくしたちが降りたホールの方角から、エレベーターが到着した音が聞こえてきました。
「逝きなさい。逝ったら閉めてあげるよ。逝かなければ、誰が通ってもこのままだ。君の綺麗で淫らなこの姿をラッキーな果報者に見せてあげようじゃないか。」
「ゆるし・・て・・ぇぇ・・」
コツ・カツ・・コツ・カツ・・・コツ・カツ・・・ 2つの重い足音がこちらに近づいてくるようです。あれは・・男性でしょうか。
「大丈夫だよ。ここのホテルの従業員はよく躾けられている。見て見ぬ振りくらいしてくれる。お客は、こんな時間だ。君に興味を示すだろうが、ホテルの従業員と一緒なら不埒な真似はしないだろうさ。」
ビィィィ・・・・ モーター音が開いた扉からも漏れてしまいそうで・・す。
音を響かせたくなくて一層強く脚を閉じまると・・また。
「ぁぅうん・・・」
腰をくぃっと淫らに振ってしまいます。
熱を持ったTバックの下の真珠は・・一層大きくなって玩具の振動をより敏感により確実に受け止めてしまっていました。
「はっ・・ぁぁぅ・・ん・・ゆるして・・ぇ・・」
コツ・カツ・・コツ・カツ・・・ 長い廊下を足音が近づいてきます。
「ほら君が望んだ観客がそろそろこの開け放った扉に気付くころだ。」

カチ・・・ わたくしの耳元でスイッチ音がしました。
「明かりの下だと君の乳房は一層引き立つね。」
「ゃあぁぁぁ・・・」
男性は、薄暗く落としていた室内の照明のうち、扉の所に付いているスポットのような照明を点けたのでした。
「もう随分濡らしているようだね。君のフェロモンで目眩がしそうだよ。」
「ぃゃぁ・・・」
吐く息にも吸う息にも、もう喘ぎを混ぜ込まずにはいられなくなっていました。

銀幕の向こう側 24

ウエストに何かが・・・ローターのコントローラーらしきものが・・・挟み込まれました。
「脚を閉じるんだ。」
先ほどと・・・逆の命令です。が、男性の目の前で脚を開いたままで立っているという姿に抵抗があったわたくしは、さっ・・ときつく脚を閉じたのです。
「ああっ・・・やぁ・・・」
寄せ合わせられた太ももは・・・振動するプラスティックの塊をより強く真珠に押し付ける役割を果たしておりました。突然の快楽にわたくしは淫らに腰を突き出し・・揺らしてしまったのです。
あまりの刺激から少しでも楽になりたくて、そっとほんのすこし、脚を開こうとしたのです。
「膝を緩めるんじゃない。」
微かな脚の筋肉の震えに気がつかれたのでしょうか、男性の声が飛んだのです。
「君はそんな女じゃないだろう。初めて逢う男の前で、秘めておくべき場所をいつまでも平気で晒せるような、そんな女じゃないね。」
「・・・は・い」
「私に証明してごらん。どんなに堕とされても淫らな仕草など決してしないプライドの高い女だと。」
「ぁぁぁぁ・・・っく」
「そう、もっときつく脚を閉じるんだ。さっきベッドの上で私の手を拒否したときのように、ね。」
「・・はぁぁん・・あぁぁ・・」
わたくしは自らの貞操観と男性の仕掛けた玩具の快楽の両方から責め立てられておりました。
いままで、淫らな姿を晒せと命じた方は数多くいらっしゃいました。
でも・・・こんな風に、わたくしの想いを逆手に取って責められた方ははじめてだったのです。

「私からのご褒美を拒否しようとした罰を与えないといけないね。」
男性の左手がわたくしの右肩に掛かる2本のストラップを同時に引き下ろしたのです。
「やぁっ・・・」
「ほぉっ、見事な大きさだね。最近はランジェリーにパッドを入れて胸を底上げしてみせる女性も多いが、君の場合はこの大きさのカップにさえ窮屈そうに押し込んでいるようだね。」
男性の濡れた・・・先ほどわたくしの茂みの中にまで差し入れられた・・・指が、立ち上がったはしたない乳首をなぞります。
「あぁぁ・・・ん・・」
玩具の振動で与えられた快楽は、わたくしのランジェリーに押し込められた乳房へも間違いなく這い登っておりました。
「サイズを教えてほしいね。何カップなんだい?」
今度は男性の指がその淫楽を迎えより大きな快楽へと変える為に、新たな刺激を・・強弱を付けて送り込むのです。
「はぁぁ・・ぉ・おねがい・・です。ゆるして・・・」
目隠しをしたままでも・・・いまのわたくしの姿がどれほどにはしたないものなのかは想像がつきました。
藤色に黒のレースがトリミングされたキャミソールも・ブラのカップも右側だけが乱暴に引き下ろされているのです。
そこからまろび出ている薄明かりに浮び上がる白い乳房・・・。
「GかなF以上なのは間違いなさそうだが。いいね、東洋人ならではのつつましい乳暈ときっかりとした乳首。この大きさの乳房をみたら、西洋人のようなもっと大きなものを想像させられるが、幸せな裏切りだね。」
くちゅ・・男性の舌が乳首の上を這ってゆきます。
「あぁぁっ・・・」
「ふふ、敏感だね。より好ましい。ここはどうかな。」
ちゅぅぅ・ぅ
「やぁ・・ぁぁぁ」
男性の唇が、乳房の谷の乱されたランジェリーに埋もれる際の肌に吸い付き・・・ねぶるのです
「色白だから、くっきりと紅い印が付くね。きれいだよ。」
ビィィィ・・・ 言葉を終える前に・・わたくしの喘ぎを絞り出させる様に・・・プラスティックの玩具の振動を強めるのです。
「はあぁあっ・・やぁぁあ・・・」
男性の右手は、わたくしの肩を押さえつけたままでした。
左手だけが露にされた乳房から首筋・・・そして喘ぎの止まらない唇へと気まぐれに動き回り、身動きの出来ないわたくしを玩具と共に責め続けたのです。

銀幕の向こう側 23

「立てるかな?」
わたくしは、びくっと身をふるわせてしまいました。男性の声がしたのは、わたくしの正面・・・それもすぐ近くからだったのです。
「はい、大丈夫です。・・あ・ぁっ・・・」
目隠しをされたまま、自らの感覚にしたがって真っすぐに立ち上がろうといたしました。
でも・・・痺れていた脚が、縛められた腕が、奪われた視界が・・・わたくしのバランスを微妙に崩したのです。
よろめいた肩を、男性の腕がしっかりと支えてくれました。
「大丈夫だよ。私が側に居る。落ち着いて立つんだ、いいね。」
「・・・はい」
肩を抱き・寄り添った男性が、既にボクサーパンツだけの姿であることにその時はじめて気付いたのです。

お見かけした穏やかでジェントルな外見に相応しい、しなやかな肌と柔らかな体毛をされていることもこうして身体を密着させて少しだけ感じ取ることができました。
男性の体臭は・・・まだシャワーを浴びてらっしゃるわけでもないのに・・・ほとんどせず、そのせいでしょう、男性化粧品の類いの香りもいたしません。
体温は、エアコンの効いた部屋で少し冷たくなった私の肌に、暖かいと感じさせるほどの熱を備えていらっしゃいました。
そして、わたくしの腰に触れたボクサーパンツの中の男性は・・・まだかすかとはいえ確実に昂りを示していたのです。

「こっちだよ。おいで。」
肩と腰に手を添えて、男性はわたくしを少しずつ歩かせていったのです。
1人掛けのソファーを窓の方へ2歩。ソファーの背の方へ3歩、そしてまっすぐ。
「ここに脚を広げて立つんだ。」
途中ベッドに触れることも、備え付けのキャビネットにもクローゼットにも触れること無く、わたくしは真っすぐに歩いた右側の壁に・・・背を持たせかけさせられました。
「もっと脚を開くんだ。」
「・・はい」
男性の再度の声に、わたくしは脚を肩幅ほどに開いたのです。
「そう、いいこだ」
ビィィィ・・ん・・・ 先ほどのあの玩具のモーター音が再び響いたのです。
「やぁぁっ・・・」
逃れようとした肩を男性の右手が抑えます。
「ご褒美を上げようというのに、暴れるなんていけないこだね。」 ビィィィ・・・ 耳元近くにあった機械音が次第に下がってゆきます。
「ぁぁあっ・・・・」
今度は男性はなんのためらいもなく、振動するプラスティックの球体をランジェリーごしにわたくしの真珠へと当てたのです。
あまりに・・・淫らすぎる快感でした。
立ったままで・・・両脚の内ももと・・・背筋を這ってゆく痺れるような淫楽。
わたくしは突然の強制的な快感誘導に、声を抑えることすらできなくなっておりました。

「そんな声を出したら、廊下を通る人に気付かれてしまうよ。ここは、ドアのすぐ側なんだからね。」
コン・コン・・ わたくしの右耳の近くで・・・男性がわたくしたちの部屋のドアをノックする音が聞こえました。こんなに、扉の近くに・・・だなんて。
「ゃぁぁ・やめてぇぇ・・あっ・・ぁぁんん・・」
声を殺せとおっしゃりながら、男性はTバックの描く綺麗な二等辺三角形の一辺のラインを指で持ち上げます。そして、漆黒の茂みを越え女性の大切な部分を守る丘の奥へと・・・男性の右手の指は容赦なく振動する球体を押し込んでいったのです。
「はしたないね。そんなに、大きな声を出して。」
「はぁっ・・・あああぁぁ・・ゆるしてぇぇ」
直接に真珠に触れた途端、プラスティックの淫具はわたくしを快感で打ちのめしたのです。
「こんなに濡らしているのに、ゆるして・・だと?」
男性の指は入ってきた時と同じにTバックから抜き出されました。

銀幕の向こう側 22

「自分でも解るんだね、こんなに蜜を溢れさせて。恥ずかしい身体だね。」
男性はわたくしが顔を伏せた右側に立っていらっしゃるようでした。
「君の白くて滑らかなその顔中に蜜を塗り付けて、玩具を綺麗に拭ってくれてもいいんだよ。でも、それはあまりに屈辱的だと思ったから、君の口で綺麗にさせてあげようと思っただけなんだがね。気に入らなかったらしい。」
ビィィィ・・・ 一番弱い振動なのかもしれませんが、わたくしの頬の上で、球体がまた動き出したのです。
「自分で汚したものは自分で綺麗にしなさいと、君なら躾けられているだろう。君の顔を自分の愛液まみれにして拭うか、君の唇と舌で綺麗に舐めとるか。どちらにする?」
またモーターが止められました。
男性はわたくしの答えを待ってらっしゃるのです。
わたくしは、ゆっくりと顔を正面へと戻しました。
今度は先ほどと違って玩具は軽くわたくしの頬から離れてゆきました。そして、正面を向いたわたくしの唇が丁度キスを受け入れる時のように開くと、そこにすっと・・・硬質な球体を戻されたのです。

「いいこだ。綺麗にするんだよ。」 
ちゅぽ・・くちゅ・・ 男性はわたくしの唇が球体をすっぽりと含んだのを確認すると、鎖骨の下あたりにコントローラーを置きました。
口の中に広がる淫媚な香りと味は・・・わたくしを一層辱めてゆくのです。
ビィィィ・・・ 舌の上でまた振動が始まったのです。
わたくしは振動を感じた途端、あまりにも淫媚すぎる男性の悪戯に一瞬舌の動きを止めてしまいました。まさか、細かく的確な震えが蜜を拭うわたくしの口の中でまでも犯してゆくとは思ってもおりませんでした。
まだ、ランジェリーを身に着けたまま・・ほんの少しも乱されてさえいないのです。
なのに・・・あぁぁ。
わたくしの身体は、男性に口戯を差し上げている時と同じ様に、脚を広げられた姿勢のままで新たな蜜を流しはじめてしまったのです。こんなになってしまうなんて、なんてはした・な・・い。

唐突に鎖骨の上のコントローラーが取り上げられると、モーターが止められました。
「綺麗になったみたいだね。」
プラスチックの塊がゆっくりと引き出されてゆきました。
「ご褒美を上げよう。」
男性の手がわたくしの・・・1人掛けソファーの肘掛けに上げられた脚に触れました。
「私が離れても、このままの姿勢を続けていたね。君は本当に従順ないいこだ。痺れてはいないかい?」
ふるふる・・とわたくしは首を横に振りました。
膝の上の男性の手は膝裏にまわり、わたくしの脚を右・左の順に下ろして下さったのです。脚には、そう・・・正座をした時と同じような痺れがありました。でもこの程度ならほんの数分、いまのような姿勢をしていれば元に戻るでしょう。
「そうか、よかった。」
ソファーの背にもたれかかるようにしていたわたくしの上体を首筋に手を添えて真っすぐにしてくださいました。
「ありがとうございます。」
浅く、背筋を伸ばして腰掛けた姿勢に・・・ようやく戻れたのです。
わたくしの姿勢が安定したところで、男性の腕はわたくしから離れてゆきました。
正面に感じていた男性の身体の熱も遠のいていったのです。

「手はどうかな。」
次の声はわたくしの背中で聞こえ、後頭部で一つに括られた手首のいましめが、ふっと緩んだのです。シュル・・・シルクのスカーフが手首を滑り落ちてゆきます。
「大丈夫です。痺れてもないですし、痛くもありません。」
「そうだね。大丈夫のようだ。」
そう仰りながらも、男性はわたくしの手首を片手でがっしりと掴んで離してはくださいませんでした。
ソファーの背もたれに、手首を縛めていたスカーフが掛けられる気配がします。
「あっ・・」
すると、わたくしの手首を掴む男性の手が二つになり、頭の後にあった手首を左右に割ると改めて背後に組み直させたのです。
「もうしばらく、手首は括ったままだよ。ご褒美はあげるが、私にオナニーを見せなかったお仕置きはまだ続いているんだからね。」
まだ・・・あんなに屈辱的で羞恥に満ちたはしたないことをさせても、まだ終わりにはしていただけないのです。

椅子に座ったままの姿勢で、男性は改めてわたくしの両手の自由を奪ってゆきました。
先ほどとは違い手のひらを外に向けた形で重ねた手首だけを・・・シルクのスカーフが括ってゆきます。柔らかく・食い込んだりするわけではないのに、ほんの少しのゆるみもなくきっちりと括られてしまいました。
「したがって、目隠しもそのままだ。いいね。」
嫌でも・・・反論して何かが変わる訳ではないのです。
一度、この男性に委ねてしまった以上、わたくしに拒否権はないのですから。

ソファーの後にあった男性の気配がまた、ふっ・・・と消えました。

銀幕の向こう側 21

「君は、どこが一番感じるのかな?」
「あぁん・・・ぁっ・・・」
あまりの繊細な振動は、指先で持っているのではなく・・・コードを持って垂らしているかのようでした。その震える塊を、男性はわたくしの真珠のあたりに・・・ランジェリー越しに残酷な小さな卵を触れさせるのです。
「言ってごらん」
「はぁぁ・・・ん・っ・・」
太ももの内側をつつっっっ・・・と・・・触れるか触れないかの距離で玩具が這ってゆきます。
「言いなさい。」
先ほどの刺激でくっきりと立ち上がってしまったに違いない真珠に・・・今度はしっかりと・・玩具を当て続けます。
「あぁぁぁぁ・・ん・・言えませぇぇ・・んん・・・・」
淫らなビブラートがかかったわたくしの喘ぎ声のような答えを聞いて、玩具はようやく真珠から離れていったのです。
「ふふ、クリトリスは敏感みたいだね。他はどうかな?」
「ひゃぁ・・っ・・・」
ビィィ・・ 遠ざかったと思った音が近づいた時には、わたくしのむき出しになった二の腕の内側に振動が触れたのです。
性感帯ではないはずの場所なのに、乳房と同じ柔らかで白い皮膚は機械的な振動にビクッ・・と反応してしまったのです。
わたくしは、恥ずかしくてまるで逝き切ってしまったみたいに激しく上半身を震わせてしまいました。
「ここは、どうかな?」
「ぁぁ・ぁぁぁぁ・・はぁうぅ・・・・」
ビィィィ・・ィィ・・ 振動は二の腕から腋の下を通って・・・仰向けに近い体勢で晒された・・・ランジェリーごしに乳房の下辺の丸みを内側に辿り・・・隆起を駆け上がって・・・乳首の上に留まったのです。
「あぁぁあぅん・・・だ・めぇぇぇ・・」
「こっちは?」
「やあぁ・・・」
ビィィ・・・ 今度は直接、左の乳首へと。ランジェリーの上からなのに、見えているかのように的確に触れるのです。きっとわたくしの身体は・・・はしたない反応を示しているのでしょう。
「ランジェリーの上からでこんなに感じるのかい。困ったほどに淫乱な身体だね。この分だと、全身が性感帯らしい。」 
ビィィ・・・・ 
「はぁうっ・・・」
そして素早い動きで・・・男性の目の前に開かれたTバックにぎりぎり覆われている花びらの部分へと、振動が触れたのです。
なのに・・・。
「あはぁん」
ビクン・・ と身体を震わせ恥ずかしい声を出した途端に、男性は玩具の振動を止めたのです。ゆっくりわたくしから離れてゆく玩具は、モーターの振動が止まると視界を奪われたわたくしにはどこにあるのかさえ解りません。
それに、ようやく気付いたのですが、男性はいまはもう・・・スラックスすら身に着けていなようです。どれほど動かれても衣擦れの音さえしないのです。

「っ・・・」
あおのけられているわたくしの閉じた唇の上に・・・濡れた感触のプラスティックの球体が乗せられたのです。
「もう少し口を開きなさい。」
わたくしは・・拒否の言葉さえ出せませんでした。
なぜなら玩具は唇を滑つかせるほどに濡れておりましたし・・・漂う香りが・・そのぬめりの正体をわたくしに教えていたからです。
「もう一度言うよ。口を開きなさい!」 
「ゃ・・・」
そろそろとわたくしは否定の言葉の形に少しだけ唇を開いたのです。
「そうだ。舌を出して!」
「・・・っゃぁ・・」
舌先に触れた液体の香りと味が・・・わたくしの予想を証明したのです。あまりの恥ずかしさにわたくしは、右へと顔を背けてしまいました。
濡れた球体はわたくしの唇から頬に・・・愛液のぬめ光る筋道を付け・・・そのまま頬の上に留め置れたのです。